新車試乗記

スズキ エスクード

【スペック[カッコ内は2WDモデル]】

全長×全幅×全高=4175×1775×1610mm▽ホイールベース=2500mm▽車重=1210kg[1140kg]▽駆動方式=フルタイム4WD[FF]▽エンジン=1586cc水冷4気筒DOHC、86kW(117馬力)/6000回転、151Nm(15.4kg)/4400回転▽トランスミッション=6速AT▽燃料消費率=17.4km[18.2km]JC08モード▽車両本体価格=234万3600円[212万7600円]

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2015年12月10日 UP]

 スズキは、排気量1.6リットルのスポーツタイプ多目的車(SUV)、新型エスクードを発売した。取り回しのいいコンパクトな車体に、さまざまな路面に対応する四輪制御システムを搭載している。

直線基調のデザイン


 新型エスクードは、スズキがハンガリーで製造する自社ブランドの輸入車。新型と並行して、2005年に登場した現行モデル(2.4リットル)も継続販売される。
 新型の車種構成はシンプルだ。1.6リットルのエンジンは最高出力117馬力、トランスミッションは6速AT(自動変速機)のみ。装備も単一で、駆動方式だけ二輪駆動(FF)か四輪駆動(4WD)かを選べる。FFは212万7600円、4WDは234万3600円となっている。
 車体サイズは全長4175mm、全幅1775mm、全高1610mm。車体の幅は広めだが全長が短いので扱いやすい。最小回転半径も5.2mと小回りが利く。最低地上高は185mmを確保している。
 デザインは直線を基調にしており、同じクラスのホンダ・ヴェゼルやマツダCX-3が曲線を基調にしているのとは対照的。ライバルが都会的なSUVの雰囲気を漂わせているのに対して、エスクードはややアウトドア寄りのイメージに仕上がっている。

4種の走行モード


 エスクードの4WDには「オールグリップ」と名付けられたスズキ独自の四輪制御システムが採用されている。「電子制御4WDシステム」「4つの走行モード切替機能」「車両運動協調制御システム」という3つの技術を組み合わせている。
 走行モードは、センターコンソールにあるドライビングモード設定スイッチで「オート」「スポーツ」「スノー」「ロック」の4つから選ぶことができる。
 「オート」は燃費を重視した走行モード。通常はFFで走り、タイヤのスリップを検知すると自動的に4WDに切り替わる。
 「スポーツ」は直線での加速やコーナリングの旋回性を高めるモードで、積極的に4WDを使う。車輪の駆動を制御するだけでなく、エンジン回転数を高めに保つなど出力側も制御する。
 「スノー」は、雪道やアイスバーンを走るためにグリップを重視。「ロック」は、ぬかるみなどから緊急脱出する際に使う。
 また4WDモデルは、滑りやすい急な下り坂でブレーキを使わなくても時速10km以下の速度を保つヒルディセントコントロール機能も備える。
 安全装備では、ミリ波レーダー方式による衝突軽減システム「レーダーブレーキサポートⅡ」が搭載されている。先行車に急接近した時にブザー音や軽いブレーキで注意を促し、衝突が避けられないと判断した場合には自動ブレーキが掛かる。自動ブレーキは前方の車両が静止している場合は時速5~30km、走行している場合には5~100kmで動作する。
 また、アクセルやブレーキの操作なしに先行車と一定の車間を保って走るアダプティブクルーズコントロールを標準装備している。速度は時速40~100kmの間で設定できる。

軽快なハンドリング


 試乗車は4WDモデル。新型エスクードの直線的なスタイルは、何となくイギリスの高級4WDレンジローバーを連想させる。座席の位置が高めなので、運転席からの視界はいい。ボンネットが見えるので車幅の感覚もつかみやすく、運転していると車体が実際よりも小さく感じられる。
 シートは左右の支えがしっかりしたスポーツタイプで、サイドには本革が使われている。メーターは黒地に白い文字が刻まれたシンプルなデザイン。インパネの中央には、最近では珍しい大きめのアナログ時計が据えられている。デザイン上、あえてアナログにしたのだろう。
 走りだしてまず「車体がしっかりしている」と感じた。6速ATは変速ショックが少なく、スムーズにギアを切り替えていく。4WDに117馬力のエンジンでは力不足かと思ったが、急な坂道も元気に上ってくれた。上り坂でアクセルを踏み増した時にギアが一段下に切り替わって急にエンジン回転が上昇するというあわただしい症状もなかった。スズキは車体の軽量化に力を入れており、エスクードもダイエットの恩恵を受けているのだろう。
 ハンドリングは軽快で、SUVとしてはかなり素直な動きをする。カーブでステアリングを切ると鼻先がすっと内側に入っていく。走りで定評のあるスズキのコンパクトカー、スイフトを思い浮かべたほどだ。
 サスペンションは、うねりがある場所では左右に揺すられるような動き方をする。以前試乗したスズキの輸入車スプラッシュ(1.2リットル)もそんな味付けだった。
 17インチの大きめのホイールに扁平(へんぺい)率55%の薄いタイヤを履いているにもかかわらず、荒れた舗装路での当たりは柔らかくて乗り心地はいい。標準装備されているコンチネンタル社のタイヤが柔らかいのかもしれない。エスクードが本領を発揮するであろう悪路での走破性は、短時間の試乗だったので試していない。
 SUVは、機能や走行性能だけではなくファッションの一部として選ばれることも多い。新型エスクードはライバルたちに比べると地味だが、堅実で手ごろな価格の4WDを求めている人にはお薦めである。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。