マイルドHVを採用
マイルドHVは、軽乗用車のワゴンRやスペーシアなどに採用しているS-エネチャージと同じ仕組み。車が減速する際にエネルギーを回収して専用リチウムイオンバッテリーを充電し、加速時にはモーター機能付き発電機(ISG)でエンジンを補助する。モーターの出力はわずか3.1馬力なので、トヨタやホンダの本格HVのようにモーターのみで走行することはできない。しかしS-エネチャージのモーター(2.2馬力)に比べるとだいぶ強化され、さらにアシスト時間も6秒間から最長30秒間と長くしている。
発進加速の際に、アクセルの踏み具合に神経を集中していると、モーターがアシストしている様子が分かる。その感触は力強さが増したというよりも、滑らかさが増したという表現が合っている。
新型ソリオのマイルドHV搭載グレードと搭載していないグレードを比べると、カタログ上の燃費の差はリッター3km。1割強の燃費改善効果ということになる。試乗では、発進と停止を繰り返す市街地で省燃費効果が大きいのではないかと感じた。
マイルドHVには燃費向上以外にも大きなメリットがある。ガソリン車はアイドリングストップからの再始動をセルモーターで行うので、どうしても「キュルキュル」という音と振動が発生する。これに対してマイルドHVは、ISGが音もなく滑らかにエンジンを始動させるので、運転していて気持ちがいい。
室内は広々
ソリオの車体サイズは独特だ。乗用車の全幅は年々拡大し、いまは1.5リットルの車でも1800mmという車種もある。これに対してソリオは、5ナンバーの規格(1700mm以下)を大きく下回る1625mmにとどめている。全長も3710mmと、4m以下に収めている。
その分ソリオは車高を高くすることでスペースをかせいでいる。身長174cmのリポーターが運転席のシートを合わせてから後部座席に乗り込むと、膝の前には握りこぶしが縦に三つ半入る余裕があった。頭上も広く、こぶし三つ分のスペースがあった。
リアシートは左右独立して前後にスライドするので、荷室と乗車スペースの調節ができて便利だ。荷室を最大にするためにシートを一番前に出しても、こぶし一つ分の余裕があった。
リアシートの背もたれはワンタッチで前方に倒すことが可能で、荷室の床は平らになるので使い勝手がいい。こういった軽自動車で培われたノウハウが生かされているのがソリオの長所である。
後席のドアは左右ともスライドドアを採用しているので、狭い場所での乗り降りに便利だ。子どもが勢いよくドアを開けて隣の車を傷つけるといった心配もいらない。スイッチを一度押すだけで解錠と自動開閉が可能なワンアクションパワースライドドアは、左側が全車標準装備、右側はMZに標準で装備している。前席と後席を行き来できるウオークスルーも便利だ。
安全装備も大きく進化した。上級グレードにメーカーオプションで設定されているデュアルカメラブレーキサポートは、フロントウインドーに設置した二つのカメラで人や先行車を検知して、衝突の危険があるときにはドライバーに警告。ドライバーがブレーキを踏まない場合には自動的にブレーキがかかる。今回装備された自動ブレーキは、時速5~100kmの幅広い速度域で動作するのが特徴。これに誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、クルーズコントロールも付いて、オプション価格は5万9400円。後付けはできないので、新車を注文した時に装備しておきたい。
また、ラパンで採用された全方位モニターもメーカーオプションで用意されている。駐車する際に上から見下ろしたような映像を映し出したり、死角になる左前輪付近の映像を映し出したりすることができる。
軽自動車並みの燃費
ソリオを運転しての第一印象は「広いね」と「静かだね」の2つ。静かと感じる一番の要因は、アイドリングストップからの再始動でセルモーターが回らないこと。小型モーターによるアシストが利いて、発進もスムーズだ。ステアリングは軽く回り、動きも滑らかだ。軽自動車よりも軽いほどだ。女性ドライバーを考慮した設定なのだろう。
足回りはソフトで良く動き、路面からの不快なショックを吸収してくれる。路面状態のいい場所では快適な走行が楽しめる。一方で、路面が荒れた場所ではタイヤ回りからやや大きめの音が入ってくる。静音タイプのタイヤをはくと随分印象が変わるかもしれない。
車体の軽量化は、燃料の節約に大きく貢献している。試乗前にリセットした平均燃費計は、試乗を終えたときには21.2kmを表示していた。最新の軽自動車並みである。モーターのアシストは市街地走行で効果を発揮するようで、発進と停止を繰り返すような場所で燃費計の落ち込みが少なかったことが印象的だった。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。