新車試乗記

ホンダ ステップワゴン・スパーダ

【スペック】

全長×全幅×全高=4735×1695×1840mm▽ホイールベース=2890mm▽車重=1700kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1496cc水冷4気筒DOHCターボ、最高出力110kW(150馬力)/5500回転、最大トルク203Nm(20.7kg)/1600~5000回転▽燃料消費率=15.4km(JC08モード)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=288万7000円(クールスピリット)

【試乗車提供】

ホンダカーズ田辺・稲成店
(田辺市稲成町46、0739・24・4500)

[2015年6月11日 UP]

 ホンダのミニバン、新型ステップワゴンは、新開発の1.5リットルターボエンジンを搭載し、小さな排気量で1700kgもある重量級の車体をスムーズに走らせる。テールゲートに採用した横開きのドアは、荷物の積み降ろしはもちろん、後方からの乗り降りにも便利だ。

低速から力強いエンジン


 ヨーロッパでは車体が大きめの車に1.0~1.6リットルの小排気量ターボエンジンを積む「ダウンサイジング・ターボ」がガソリン車の主流になりつつある。国内でも富士重工が2リットルクラスのワゴン車「レヴォーグ」に1.6リットルターボエンジンを、トヨタは1.5~1.8リットルクラスのコンパクトカー「オーリス」に1.2リットルターボエンジンを搭載するなど、ターボエンジン採用車が増えている。
 ステップワゴンのターボエンジンは最高出力150馬力、最大トルク20.7キロと2リットルクラスの動力性能を発揮する。注目すべきは最大トルクの発生回転で、1600~5000回転までの幅広い回転域で最大トルクを維持する。ホンダは「常用域では2.4リットルエンジン並みのトルクを発生する」と説明している。
 実際に運転してみると、このエンジンはスタートからスムーズで力強く、事前の知識がなければ排気量がわずか1.5リットルと気付く人はいないだろう。ターボエンジンは低速では力が弱く、エンジン回転が高まると過給が始まり、ぐっと力が増すという特徴がある。最新のターボエンジンはこういった欠点がずいぶん解消されているが、レヴォーグやデミオのターボでもごく低速ではこういったくせが残っている。
 ステップワゴンのターボエンジンは、スタートの瞬間から大排気量エンジンのような力強さが伝わってくる。タコメーターの動きを見ていると、アクセルを踏んだ瞬間にエンジン回転が最大トルクを発生する1600回転まで上がるようにCVT(自動無段変速機)が設定されている。アクセルを踏み続ければ、そのままリニアに車速が伸びていく。
 バイパス道路入り口の勾配がきつい上り坂でも力不足を感じることはなく、追い越しもスムーズだった。定員乗車プラス荷物満載といった場面での動力性能が興味深い。
排気量が小さいのは、燃費に有利だ。ガソリン1リットル当たりの燃費はベースグレードで17.0kmと、クラストップレベルを実現している。また、排気量が1.5リットルなので、自動車税が年間3万4500円に収まることもうれしい。
 ボンネットを開けてみると、小さなスペースに小ぶりのエンジンが収まっていることが確認できる。車重が1700kgを超えるミニバンを軽々と走らせるこのエンジンを軽量な乗用車に載せたらさぞや楽しくて経済的な車ができるだろうと考えた。

静かな室内


 いきなりエンジンの話から始まってしまったが、乗り込んでみると、5ナンバーサイズ(全長4700mm、全幅1700mm)を基本にしている車体は運転しやすい。前回試乗したミニバンがトヨタの高級ミニバン「ヴェルファイア」(全長4930mm、全幅1850mm)だったので余計にそう感じるのかもしれない。
 乗り心地は、このサイズのミニバンとしては上質で、室内も静かだ。スパーダは専用サスペンションが与えられており、足回りがやや引き締まった印象を受けるが、それでも路面の凹凸を良く吸収してくれる。車体の重心は見た目よりも低いようで、乗用車から乗り換えても違和感なくステアリングを切ることができる。エンジン音もよく遮断されているので、快適なドライブが楽しめる。
 最新モデルだけに、オプションの安全装備も充実している。センサーにミリ波レーダーと単眼カメラを搭載しており、衝突軽減ブレーキは歩行者も感知する。先行車と一定の車間を保って追随走行するアダプティブ・クルーズ・コントロールや、車線からのはみ出しを防ぐ路外逸脱抑制機能、停止時や低速でアクセルとブレーキを踏み間違えた際の追突を防止する誤発進抑制機能などがセットになっている。インパネのディスプレーには、カメラで読み取った情報を基にして、走行している道路の制限速度や一時停止標識などが表示される。
 ミニバンを乗り慣れていないリポーターにとって便利だったのは、こちらもオプションの駐車支援システム。四つのカメラの映像を合成して車を上空から見下ろしたように映し出してくれる。日産自動車の車には早くから搭載されていたが、左右や後方が確認しづらいミニバンにこそ強い味方になる。

便利な横開きドア


 ミニバンのシートアレンジは車種ごとに特徴があり、購入を左右する大きな要素になる。ステップワゴンの一番の売り物は、テールゲートの左半分を横に開けることができる「わくわくゲート」と、3列目のシートを2分割して床下に格納できるシートアレンジ。
 ミニバンは大きなテールゲートを上方に跳ね上げるため、荷物を積み降ろしする際には、車の後ろに大きなスペースが必要になる。わくわくゲートは少ないスペースで開けることができるので、小さめの荷物の出し入れには便利だ。また、左側の3列目シートを格納すれば、ウオークスルーを利用して運転席や助手席、2列目、3列目シートへの乗り降りが可能になる。テールゲートの開口部は地上から445mmと低く、シートバックには、土足で踏んでも大丈夫なようにゴムが貼ってあるなど芸も細かい。
 2列目、3列目シートとも、膝の前には十分な余裕があるが、3列目シートに大人が3人座るのはきゅうくつ。定員が7人でも、実質は6人乗りと割り切った方がよさそうだ。仮に6人が乗っても、荷室の床はシートを収納するスペースがへこんでいるので、意外に多くの荷物を積むことができそうだ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。