HVはリッター19.4km
新型ヴェルファイアのエンジンはガソリンが直列4気筒2.5リットル(182馬力)とV型6気筒3.5リットル(280馬力)の2種類。これに新たに、クラウンやレクサスに採用されている2.5リットルアトキンソンサイクルエンジン(152馬力)とモーターを組み合わせたハイブリッド車が設定された。
2.5リットルガソリンエンジンは、従来の2.4リットルエンジン(170馬力)をスケールアップしたもので、出力が12馬力アップした。7速スポーツシーケンシャルシフトマチックを備えたスーパーCVT-i(自動無段変速機)との組み合わせで、JC08モード燃費12.8km(アイドリングストップ車)を達成した。2.4リットルエンジンに比べて1.2kmの改善になる。
3.5リットルガソリンエンジンは6速AT(自動変速機)との組み合わせで、燃費は従来と同じ9.5kmとなっている。ハイブリッド車は19.4kmと、3.5リットルの2倍以上にもなり、コンパクトカー並みの燃費を実現している。
ヴェルファイアの外観を一口で表現すると「大きくて立派で迫力がある」となる。最近の新型車は押し出しが強いものが多く、ヴェルファイアのデザインもその流れに沿ったものだ。
車体の全高は従来モデルより10mm低い1880mmだが、床を低くすることで1400mmの室内高を確保している。乗り降りで足を掛けるステップも従来より50mm低い350mmまで下げている。全長はプラス80mm、全幅はプラス20mmとやや大きくなり、乗り心地に影響するホイールベースも50mm延長された。
電子機能を満載
最新の電子技術が盛り込まれているのもヴェルファイアの特徴だ。インテリジェントクリアランスソナーは、車体の四隅に設置した八つのセンサーで前後左右を監視、駐車場内での移動や車庫入れの際に他の車両や障害物に当たりそうになると自動的にブレーキを掛ける。最上級グレードに標準装備、他のグレードにオプション設定されている。
ミリ波レーダーが先行車を検出して衝突を防止するプリクラッシュセーフティーシステムや、停止状態から時速100kmまで先行車に追随して走行することができるレーダークルーズコントロールも設定されている。
世界初の運転支援機能は、ドライバーの視線で車を透かしたように周囲を確認できる「シースルービュー」(オプション価格70万2000円)や、狭い場所でも自動で切り返しをしながら車庫入れをしてくれる「インテリジェントパーキングアシスト」(同56万1600円)。
シースルービューは、車体に取り付けたカメラからの映像を合成して、車体やシートを透かしたような映像をナビの画面に映し出す。車の外側から見下ろしたような視線で周囲の状況を見られるムービングビューにも切り替えられる。
パーキングアシストは、超音波センサーとカメラを使って駐車できるスペースを判別し、自動でハンドルを操作して止めてくれる機能。狭い場所での切り返しも、ドライバーはモニターの指示に従ってギアの前進と後退を切り替えるだけでいいという。
ヴェルファイアは車体が大きく死角も広いので、操縦性と安全性の両面で威力を発揮するのだろう。高価な装備だが、いずれは価格が安くなるのだろう。
上質な乗り心地
試乗車は、3.5リットルエンジンを搭載したVLで、車両本体価格は484万円。わずか1時間の試乗とはいえ、高級車の運転は緊張する。
かつて2リットルクラスの乗用車はFR(後輪駆動)が主流で、6気筒エンジンを積むのが当たり前だった。いまのFF(前輪駆動)はエンジンを横置きにするため、ほとんどが4気筒になっている。スムーズな回転が味わえる6気筒エンジンの試乗は久しぶりである。
280馬力を発揮するエンジンはさすがに強力で、2トンを超える重量級の車体をスムーズに加速させていく。バイパス道路の合流でアクセルを深く踏み込んだ際には、スポーティーカー顔負けの俊足を披露してくれた。
乗り心地は「上質」の一言に尽きる。先代のヴェルファイアも路面をなめるような乗り心地が印象に残っているが、リアに新開発のダブルウィッシュボーンサスペンションを採用した新型はさらにスムーズで静かになった。並みの乗用車やミニバンと大きく違うのは、荒れた路面を走った際に車内に侵入してくる騒音や、車体に伝わる細かい振動。ヴェルファイアは、ざらついた路面に差し掛かっても不快な騒音や振動はほとんどなく、スポンジの上を走るようなソフトな乗り心地で通過していく。一方で、ステアリングには路面の変化が伝わってくるので、運転していても不安はない。
後部座席に移ると、豪華な2列目シートに驚く。ベージュの本革シートは一つ一つが独立していて、体を包み込むようにひじ掛けが設けられている。足元には、リラックスした姿勢で乗車できるようにふくらはぎを支えるオットマンがある。リクライニングやオットマンの角度調整は電動になっている。
シートアレンジは多彩だ。助手席に採用されたスーパーロングスライドシートは、助手席を2列目シートと同じレール上に設置することで最大1160mmの前後調節ができる機構。助手席の前を大きく空けてゆったりと乗車したり、運転席の後ろに座る同乗者の横までスライドさせて会話を楽しんだりといったことができる。また、助手席と2列目シートを一番前までスライドさせて3列目シートを跳ね上げると、最大で2150mmの積載スペースが生まれる。
かつてVIPの送迎車は、トヨタでいえばクラウンが定番だったが、今はゆったりと乗れる高級ミニバンに変わりつつあるという。ベースグレードでも320万円、最上級グレードになると700万円を超える高価格帯にもかかわらず、発売1カ月の受注はヴェルファイアが2万2千台、アルファードが2万台という。自分で運転するのではなく、セカンドシートに乗りたい車である。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴40年。紀伊民報制作部長。