1.6リットルターボは170馬力
レヴォーグの車体サイズは全長4690mm、全幅1780mm、全高1490mm。生産が終了した現行のレガシー・ツーリングワゴンと全幅は変わらないものの、全長は100mm短く、全高は45mm低い。全長の短縮に伴って、ホイールベースも100mm短くなっている。最小回転半径は5.4~5.5mで、このサイズの車としてはやや大きめである。
外観でまず目を引くのが、ボンネットに大きく口を開けたエアインテーク。機能的には、熱を帯びやすいターボエンジンを空気で冷やす役割を担うが、デザイン面でも力強さを演出している。また、運転席からエアインテークの盛り上がりが見えるので、車幅をつかみやすいと感じた。
ワゴン車でありながら全高が低く、さらにルーフが後部にかけてなだらかに下がっているので、スポーティーな印象を受ける。後ろから見たデザインは、欧州車のような雰囲気を漂わせている。
エンジンは1.6リットル、2.0リットルとも、国内で唯一の水平対向4気筒エンジンを採用している。一般の並列4気筒エンジンは、4つのシリンダーが横一列に並んでいるが、水平対向4気筒エンジンは、地面と平行に寝かせたシリンダーが2つずつ向き合うようにレイアウトされている。
1.6リットルは、小排気量のエンジンとターボを組み合わせることにより、大排気量エンジン並みの出力と低燃費を両立させる「ダウンサイジング」の流れに沿ったエンジン。最高出力170馬力、最大トルク25.5kgと、2.5リットル自然吸気エンジン並みの出力と、ガソリン1リットル当たり16.0~17.4kmの優れた燃費性能を得ている。レギュラーガソリン仕様であることもうれしい。
2.0リットルエンジンは、スポーツツアラーならではの大出力ユニット。最高出力300馬力、最大トルク40.8kgを発揮する。ハイオク仕様になるものの、これだけの出力を絞り出しながら、リッター13.2km(JC08モード)の燃費性能を得ている。
引き締まった足回り
試乗車は、1.6リットルの最上級グレード1・6GT-S アイサイト。18インチアルミホイールやビルシュタイン製ダンパー、アルミ鍛造製フロントロアアームなどを採用して走りの質を高めている。
室内は黒が基調で、センターコンソールやインパネのデザインも落ち着いた雰囲気に仕上げられている。スピードメーターとタコメーターは、オーソドックスな丸形アナログメーターなので見やすい。2つのメーターの間にはクルーズコントロールの走行速度や車間距離の設定、車線逸脱抑制のオン・オフなど、アイサイトの各種情報が見やすく配置されている。
シートは、左右の支えがしっかりしたスポーツタイプ。1・6GT-S アイサイトには、電動のパワーシートが採用されている。前後スライドやリクライニング、座面の高さのほか、腰の支えまできめ細かく調節できる。
販売店を出てすぐに、バイパス道路に入った。1.6リットルのターボエンジンは、発進直後のごく低速ではトルクの細さを感じるが、それは一瞬のこと。エンジンが2000回転を超えると、車体がふわっと軽くなったように加速する。このエンジンは、1800~4800回転という広い範囲で25.5kgの最大トルクを発生する。1550kgの車重に対して十分なパワーを持ち合わせており、街中でも扱いやすい。
時速50~60kmで巡行していて追い越しをかけるようなときには、アクセルを踏み込むと同時にCVTがエンジン回転を千回転台から2000回転にまで上げ、すぐに過給が始まるように制御されている。そこからはリニアな加速が続く。
走りが楽しめるように、足回りはかなり引き締められている。販売店では「お客さんによっては、堅すぎると感じる方もいるようです」と話す。しかし、路面から伝わってくる振動は角が取れているし、舗装が荒れた区間でのざらつきも抑えられていた。エンジンの透過音が小さいことも含めて、静粛性は高いと感じた。
連続するコーナーでは、ステアリングの操作に対して車が素直に反応する。きびきびとした走りが楽しめるのだが、コンパクトカーの軽快感とはまた違う、しっとりとした感触が伝わってくるのがレヴォーグの持ち味である。
AWDは、前輪60%、後輪40%のトルク配分を基本に、路面や走行状況に応じて配分を変えて、安定した走行を実現する。雨天や降雪など、路面状況が悪くなればなるほど実力を発揮するだろう。
進化したアイサイト
スバルが国内メーカーに先駆けて採用した安全運転支援システム「アイサイト」は、第三世代になって一段と進化した。前方を監視するステレオカメラはカラー化され、先行車だけでなく、歩行者や自転車まで認識するようになった。
多くの軽自動車やコンパクトカーが採用している低価格のレーザーレーダー方式の衝突軽減ブレーキは、先行車両後部のリフレクター(反射板)から跳ね返ってくるレーザー光を検知してブレーキを作動させる。このため、レーザー光を反射しづらい歩行者やバイク、自転車などは原則として検知しない。
これに対してアイサイトのステレオカメラは、人間の目のように距離や形を認識することが可能なので、前方を横切る歩行者や自転車にも対応する。衝突の危険がある場合にはドライバーに注意を促し、回避の動作がない場合には自動的にブレーキを動作させる。また、レーザーレーダー方式の衝突軽減ブレーキが時速30kmまでしか動作しないのに対して、アイサイトは時速50kmまで動作する。
クルーズコントールは全速度対応型で、停止状態から時速百キロの範囲まで、先行車と安全な車間距離を保ちながら追従走行する。高速道路で渋滞に巻き込まれたときには、ブレーキを操作しなくても先行車に合わせて減速・停止し、先行車が発進したときにはスイッチかアクセルペダルで再び追従を開始する。
速度や車間距離を設定するスイッチはステアリング右側に集中していて、操作方法も分かりやすい。バイパス道路で使ってみたところ、勾配のある区間でも一定速度で走るし、先行車と安全な車間を保って追従走行してくれるので、わずかな時間だがリラックスして運転できた。長距離ドライブでは、疲労を大きく軽減してくれるだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴39年。紀伊民報制作部長。