「着せ替え」が可能に
新型コペンには、ロードモデルのコペン・ローブと、アウトドアの雰囲気を盛り込んだコペン・クロスがある。今回市販されたのはこのうちのローブ。クロスは今秋の発売。さらに2015年半ばには、ローブをベースにした別デザインのバージョンが発売される。
先代のコペンは、丸いヘッドライトの愛らしいスタイルをしていたが、新型は、ずいぶん男前の顔つきになった。全長3395mm、全幅1475mmという軽自動車の制約を全く感じさせない伸びやかなデザインだ。
その車体構造はユニーク。一般の車は、外板をフレームの一部に含めて車体の強度を確保しているが、コペンのDフレームという新しい骨格構造は、骨の部分だけで十分な強度を確保している。これにより外板を樹脂で作り、着脱することが可能になった。
左右のドアだけは金属でできているので交換はできないが、それ以外の前後バンパーやボンネット、トランクフード、左右のフェンダーといった11点のパーツを着せ替えることができる。今後、ダイハツの純正部品だけでなく、部品専門メーカーやデザイン会社などサードパーティーからも外板が市販されるというから楽しみだ。ただし、全て着せ替えるとなれば、それなりに高価な買い物になりそうだ。
新型コペンの発売に当たってダイハツでは、全国の認定ショップにコペンの楽しみ方を提案できる「コペンスタイリスト」を配置した。試乗車を提供してもらった田辺ダイハツでは、スタッフ2人がスタイリストに認定されている。
ルーフの開閉は電動
オープンカーで一番気になるのがルーフの開閉。コペンのルーフはもちろん、電動で開閉する。ルーフの格納は、フロントピラーの左右にあるルーフロックの固定金具を起こして、センターコンソールのスイッチを操作するだけ。座席後部のトランクが自動的に開き、ルーフをするすると収納してくれる。所要時間は20秒ほどである。
これならば、その時の天候や気分に応じて、ルーフをまめに開閉できる。センターコンソールやグローブボックスには盗難防止のキーロックも付いているが、短時間の駐車でもルーフを閉められるので安心だ。
トランクは、ルーフを格納していないときには、ゴルフバッグや小ぶりの手荷物を収納するぐらいのスペースがある。しかし、ルーフを格納するとほとんどふさがってしまい、わずかに残った空間に積めるのはハンドバッグ程度。2人乗車での旅行など、荷物の多い利用には向かない。
抜群の開放感
試乗車は、真っ赤なボディーカラーのオートマ車。CVT(自動無段変速機)は、シフトレバーを右に倒すことで7速の手動変速ができる。着座位置は低く、足をやや前に伸ばしたような運転姿勢になる。初代コペンは、シートの横幅が狭く、しかも両端が高く盛り上がったバケットタイプだったので、脇腹が痛くなるほどきゅうくつだった。新型コペンはシートが一回り大きくなり、ゆったり座ることができた。
エンジンは、ムーヴやタントで定評のあるターボエンジン。最高出力64馬力、最大トルク9.4kgと、1~1.2リットルクラスのパワーを得ている。販売店の駐車場から、オープンカーの状態で走りだすと、後方からは低音で大きめの排気音が響いてきた。積極的に音を聞かせるよう、独自のチューニングをしているのだという。
試乗の日は天気が良く、天井がないことによる開放感は格別だった。車載の温度計は27度を表示していたが、頭上を通り抜ける風は爽やか。左右の窓ガラスを下げるとさらに風を感じることができ、エアコンを使う必要もなかった。これならば、真冬はともかくとして、雨の日以外はオープンエアで乗っていたくなる。
これだけの開放感を味わってしまうと逆に、ルーフをかぶせたときの室内がとても狭く感じる。頭と天井までの間には握りこぶしが横一つ分入ったが、フロントガラスの上端が視界に入ってしまうことがマイナスになる。
話を走りに戻すと、これは「楽しい」の一言。足回りはかなり引き締まっているが、柔軟性も兼ね備えており、不快なゴツゴツ感や、路面の小さなギャップで車体が小刻みに揺すられるような感じもなかった。急カーブでねじれたり、振られたりするようなこともなく、車の骨格ががっちりしていることがドライバーに伝わってくる。車体が小さいので小回りが利く上に重心も低いので、急カーブが続く山道をリズミカルに走ることができた。
ターボエンジンとはいえ絶対的な出力は小さいので、カーブの出口で強めにアクセルを踏んでも、パワーを持て余すことがない。法定速度の範囲内で力を出し切り、加減速やコーナリングを楽しむことができるのがコペンの魅力といえそうだ。オートマでも手動でギアチェンジできるが、マニュアルミッション(5速)で乗りたい車である。
試乗車中、真っ赤なコペンの注目度は抜群だった。特に関心を示したのは、中高年の男性。写真撮影中に話し掛けてくる人もあった。セカンドカー、サードカーとしてスポーツカーを所有できるのは、例えば、子どもが独立した夫婦や、趣味で車を楽しむ人たちなど。経済的な余裕さえあれば、天気のいい日にドライブするのに最高の車と思う。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴39年。紀伊民報制作部長。