新車試乗記

日産 エクストレイル 20X

【スペック】

全長×全幅×全高=4640×1820×1715mm▽ホイールベース=2705mm▽車重=1570kg▽駆動方式=4WD▽エンジン=1997cc水冷4気筒DOHC、108kW(147馬力)/6000回転、207Nm(21.1kg)/4400回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=15.6km(JC08モード)▽車両本体価格=267万1920円(エマージェンシーブレーキパッケージ装着車)

【試乗車提供】

日産プリンス和歌山販売田辺支店
(田辺市上の山1丁目8の16、0739・22・8132)

[2014年6月12日 UP]

 新型エクストレイルは、本格的な悪路走破性を備えながら、街中でも快適に使えるSUV(スポーツ用多目的車)。今回は、市街地を中心に試乗した。

丸みのあるデザインに


 先代のエクストレイルは、角張った車体から「いかにも四輪駆動車」といった雰囲気を醸し出していたが、2013年12月にフルモデルチェンジした3代目は、角が取れた丸みのあるデザインに生まれ変わった。
 エンジンは、2.5リットルガソリンエンジンがなくなり、最高出力147馬力の2リットルガソリンエンジン1種類。クリーンディーゼルエンジン搭載のグレードは、旧タイプの車体のまま併売されている。
 駆動方式は、四輪駆動(4WD)に加えて、前輪駆動(FF)が用意されている。さらに座席は、乗車定員5人の2列シートと、7人乗りの3列シートが選べる。ただし、3列目のシートは足元が狭い上にシートの座面も小さく、非常用と考えた方がいい。小さな子どもを乗せて短時間移動するような使い方に限られる。
 レジャーなどに多目的に使えるSUVは、年々人気が高まっている。軽自動車ではスズキのハスラー、小型車ではホンダのヴェゼル、日産のジューク、一回り大きいサイズでは、マツダのCX-5やトヨタのハリアーなど選択肢が広がっている。その中で、フルモデルチェンジしたエクストレイルも存在感を増している。

広い後部座席


 試乗車は、中間グレードである20Xの4WD、エマージェンシーブレーキパッケージ装着車。乗車定員7人の3列シートタイプだった。不整地の走破性は確かめられなかったが、舗装路中心の乗用車と割り切って使うのもいいと思った。
 内装は黒で統一されていて、ダッシュボードやドアトリム、センターコンソールにソフトパッド、シフトレバー周りには光沢のあるピアノブラックの素材が使われている。仕上げは丁寧で、なかなか高級感がある。SUVというと、つい武骨な内装をイメージするが、今はそうではないようだ。先日試乗したホンダのヴェゼルや日産のジュークもそうだが、オンロードの乗用車よりも内装に力を入れているとさえ感じる。
 エクストレイルに乗り込んで、他の車と違いを感じるのはシート。ソフトな革のような肌触りだが、実は防水・透湿素材で、ぬれたり汚れたりした衣服で座っても、水や汚れが簡単に拭き取れる優れもの。座面には細かい凹凸が付けられているので、走行中に腰がずれることもなかった。夏場に汗をかいたときの蒸れ具合が気になるが、試乗中は意識することはなかった。
 自然吸気の2㍑エンジンは、1570kgの車重に対してパワー不足かと思ったが、十分な力があり、バイパス道路に進入する長い上り坂でも軽々と加速した。エクストレイルのCVT(自動無段変速機)は、まるで多段ATのように、ギアを切り替えたことがはっきり分かるようにシフトアップしていく。こういった動きをステップ制御というのだそうだ。アクセルを踏んだとたんにエンジン回転だけが上昇して、後から速度がじわじわ上がってくるCVTよりも、個人的にはこちらの方が好きだ。
 足回りは、ヴェゼルほど硬くなく、乗り心地のいい乗用車といった感じ。室内に入り込んでくる騒音も少なく、街中を快適に走ることができた。
 リアシートは、着座位置が前席より少し高くなっているので圧迫感が少ない。後席のスペースは広く、膝の前にはこぶしが縦に二つ、頭上にも同じく二つ分の余裕があった。センターコンソールの後ろには、後席用のエアコンの吹き出し口があったり、センターアームレストに2人分のドリンクホルダーが用意されていたりするなど、後席の乗員のこともよく考えられている。レジャーの移動で長時間後席に座っていても、ストレスは最小限で済みそうだ。

先進装備を満載


 不整地や雪道を走るときの四駆への切り替えは、センターコンソールのダイヤルで行う。ポジションは、前輪駆動モード、四駆オートモード、四駆ロックモードの三つ。オートモードは、路面の状況に応じて前輪と後輪の駆動力の配分を100対0から50対50まで自動的に切り替える。ロックモードは、雪道の急坂を上ったり、ぬかるみから脱出するときなどに使う。
 エクストレイルは四駆に加えて、悪路の走破性を高める先進機能を装備している。アドバンスドヒルディセントコントロールは、滑りやすい急坂を下るときに、ペダル操作のみで時速4~15kmを保つことができる機能。ヒルスタートアシストは、急坂で発進するさいに、ブレーキからアクセルに足を踏みかえるまで、約2秒間ブレーキを利いた状態にして後ずさりを防いでくれる。さらに、滑りやすいカーブで、車両の旋回情報をコンピューターが計算して前後輪に最適なトルクを配分して車両を安定させるヨーモーメントコントロール機能も備えている。
 このほかにも、車体の上下の動きを予測して駆動力とブレーキを制御することで、凹凸の激しい場所で車体の揺れを低減するアクティブライドコントロール、コーナーやブレーキングのときにCVTのギア比を制御してエンジンブレーキを付加するアクティブエンジンブレーキ、カーブでドライバーのハンドル操作やアクセル、ブレーキ操作を解析して4輪それぞれのブレーキを制御して車両の動きを滑らかにするコーナリングスタビリティアシストを備える。
 試乗車は、安全装備をひとまとめにした「エマージェンシーブレーキパッケージ」を装備していた。わずか8万円で、追突防止の「エマージェンシーブレーキ」「踏み間違い衝突防止アシスト」「車線逸脱警報」「進入禁止標識検知」が装着できる。エマージェンシーブレーキは、フロントカメラで前方の車両や歩行者を検知し、時速10~80kmの範囲で作動する。追突が避けられないと判断した場合には自動緊急ブレーキが働く。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴39年。紀伊民報制作部長。