標準モデルとカスタム
スーパーハイトワゴンの先駆けはダイハツ・タント。圧倒的に広い室内は、特に子育て世代の女性に高い支持を得て、新しいジャンルを確立した。このクラスには現在、ホンダのエヌ・ボックス、スズキのスペーシアもあり、各社がしのぎを削っている。
eKシリーズは、日産自動車と共同で開発された軽乗用車。eKスペースは日産デイズルークスの兄弟車に当たる。共同開発の第一弾として発売されたハイトワゴンのeKワゴンとデイズの販売も好調だ。
eKスペースの車種構成は、車体が標準モデルとカスタムの2車種。エンジンは、自然吸気(49馬力)とターボ(64馬力)の2種類があり、ターボはカスタムのみの設定になっている。四輪駆動も設定されている。車両本体価格は、125万9280円(前輪駆動、Eグレード)から182万6280円(四輪駆動、カスタムT)。
先行モデルのeKワゴンは、燃費性能を重視して加速のさいにエンジン回転を低めに抑えていたため、動力性能にまったりした感じがあった。eKスペースでは、ユーザーの意見を反映させる形でエンジンやミッションの設定を見直し、「車体が重くなったにもかかわらず、活発に走るようになったという声をいただいています」(販売店)という。
優れた乗り心地
試乗車は、前輪駆動のカスタムT。最高出力64馬力、最大トルク10.0kgのインタークーラーターボエンジンを搭載している。
乗り込んでの第一印象は「広い、広い。何しろ広い」。室内長が軽乗用車最長の2235mmあるのはもちろん、室内高も1400mmとたっぷりしているので、頭上も広々としている。シートの着座位置は、軽ワゴンの中でもやや高めの設定。ガラスエリアが広いので、視界が開けていて気持ちいい。
ターボエンジンは、950kgの車体を引っ張るのに十分な性能を備えている。街中から高速道路まで、不満を感じることはまずないだろう。走りだして感心したのは、乗り心地がいいこと。背が高い車はカーブでのふらつきを抑えるために、どうしても足回りが堅めになる。eKスペースは割合ソフトな足回りで乗り心地がいい上に、荒れた路面のざらつきをよく吸収してくれる。静粛性も軽自動車としては高く、気持ち良く走ることができた。
後席は260mmスライド
スーパーハイトワゴンで気になるのは、やはり使い勝手。試乗車の後部ドアは左右とも電動スライド式で、子どもが乗り降りするときに隣の車を気にすることなく開閉できる。乗り込む際にスライドドアのスイッチを押すだけで解錠と自動開閉ができるワンタッチ機能は、GとカスタムGが助手席側に、カスタムTは左右両側に装備している。
後部座席のシートは、左右独立して、前後に260mmもスライドする。後席にチャイルドシートを設置した場合でも、一番前までスライドさせれば、子どもを手の届く範囲に引き寄せることができる。シートを最後部まで下げると、大人が乗っても膝の前には30㌢以上の空間ができるので、4人乗車でも窮屈な思いをすることはない。
さらにこのシートは、背もたれを前方に倒すと3ステップで足元に格納することが可能。これにより、広大な荷室スペースが生まれる。
うれしい装備満載
子育てママにうれしい、eKスペースの気配り装備をいくつか紹介しよう。まず、助手席の下に設置されているシートアンダートレイ。子育て用の小物や子どものおもちゃなどを入れておけるボックスで、前席側と後席側、両方から引き出せるのがポイント。助手席のシートバックには、折り畳み式のテーブルを装備している。テーブルのカップホルダーには切り込みが入れてあるので、取っ手のついたベビーマグも入れることができる。
後部座席の子どもを強い日差しから守るロールサンシェードも、子育てママには定番の装備。標準モデルのGと、カスタムのG、Tに標準装備している。G以上のグレードには快適装備として、エアコンの風を後部座席に送るリヤサーキュレーターが天井に取り付けてある。サンシェードと組み合わせると、夏場は最大で4度も温度を下げることができるという。
運転の補助では、メーカーオプションのマルチアラウンドビューモニターが便利だ。ギアをバックに入れると、ナビの画面には後方の映像とともに、車を上空から見下ろしたような前後左右の映像が映し出される。周囲の障害物が確認できるので、安心して運転することができる。
このほか、滑りやすい路面でスピンを防止する横滑り防止装置や、急ブレーキを踏んだときにハザードランプが自動的に高速点滅するエマージェンシーストップシグナル、側面衝突のさいに乗員を守るサイドエアバッグなどを備えている。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。