ハイブリッドも設定
ハイブリッド・システムは、プリウスで実績がある1.8リットルエンジン(99馬力)とモーター(82馬力)の組み合わせ。システム全体で136馬力を発揮する。JC08モード燃費は23.8kmと、2リットルクラスのミニバンとしては圧倒的な低燃費を実現している。もう一つの2リットルガソリンエンジン(152馬力)も燃費は優秀。JC08モード燃費は16.0kmで、こちらもガソリン車としてはクラストップの低燃費になる。
トヨタが発表した受注状況によると、発売から1カ月間の販売比率は、ヴォクシーがガソリン車2万4千台、ハイブリッド車1万3千台、ノアがガソリン車1万4千台に対してハイブリッド車1万台。両車種を合わせると、3分の2がガソリン車になっている。
ハイブリッド車とガソリン車が併売されている車種では、ハイブリッド車の人気が高い傾向があるが、ヴォクシーとノアはそうはなっていない。ガソリン車の燃費が優秀なことと、ハイブリッド車との価格差が40万円前後あることが理由のようだ。
ヴォクシーは、ヘッドランプと連続する上下二段構成のフロントグリルを採用しており、いかつい顔つきになっている。特にエアロ仕様のZSは、専用フロントフェンダーパーツが加わり迫力満点だ。これに対して、カローラ店で扱うノアは端正な顔つき。購入を検討するなら、外観の違いで両車を比較するのもいいだろう。
シートが810mmもスライド
ヴォクシーには7人乗りと8人乗りがあるが、今回試乗したのは7人乗り。シートアレンジは多彩で使いやすく、床が低いので乗り降りがしやすかった。
3列目のシートは、ワンタッチで跳ね上げて格納することが可能。両サイドにすっきりと収まるのでじゃまにならず、平らで広い荷室スペースが生まれる。
ヴォクシーが本領を発揮するのはそれから。2列目シートは810mmものスライド幅があり、跳ね上げた3列目シートの真横まで後退させることができる。そこで生まれる足元の空間は広大。ロングドライブをゆったりと楽しむことができるだけでなく、足元に大きな荷物を載せたり、子どもの着替えのスペースに使ったりすることができる。
2列目シートは一つのレバーで横と前後にスライドできるので、座席位置の調整がワンタッチ。二つの座席の間を通路にして3列目シートに乗り込んだり、センターに寄せて両側のスライドドアから3列目に乗り込んだりすることが簡単にできる。ミニバンでは、2列目にチャイルドシートを装着したときの使い勝手も重要だが、ヴォクシーは、その場合のシートアレンジも自由度が大きい。
新開発の低床フロアは、地上からの高さがわずか360mm。ステップがないので、子どもやお年寄りでも楽に乗り降りができる。低床フロアの採用で、車の全高は従来モデルより25mm低いのに、室内高は60mm高い1400mmを確保している。
パワースライドドアは、ボタンを押すだけで開閉の操作ができ、動作中にもう一度ボタンを押すと途中で停止させることも可能。小さな子どもの乗り降りや、後席の手荷物を出し入れするといったときには便利だ。
広々とした視界
ステップがない低床フロアの恩恵により、運転席への乗り降りもスムーズだ。シートはベンチタイプではなく、両脇の支えがしっかりした独立タイプ。助手席との間に通路があり、後部座席と行き来できる。
運転席に座ってまず関心するのは視界の広さ。ダッシュボードを低くしてあるので、何しろ目の前が広々としている。交通の流れがいいバイパス道路では、大型バスに乗っているような、ゆったりした気分で運転することができる。ドアのウエストラインも低いので、左右の死角も少ない。
2リットルのガソリンエンジンは低速で力強く、扱いやすかった。発進と停止を繰り返す市街地での走行でも、加速に不満はなかった。ただし、車重が1600kgあるので、定員乗車した場合などには力不足を感じるかもしれない。
ハンドリングは乗用車の感覚に近く、背の高い車を運転しているという不安感はなかった。特に、交差点の右左折などで大きくハンドルを切り込んだときの動きは素直だった。乗り心地はソフトだが、車体のロール(横傾き)は割合に抑えられている。車内の静粛性も高い。
エアロ仕様のZSは、空力パーツの関係で全長4710mm、全幅1730mmと、5ナンバーサイズ(全長4700mm、全幅1700mm)を超えているが、ベースは5ナンバーサイズ。室内スペースは大きいが車体は小さめなので、街中でも使いやすいだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。