新車試乗記

スズキ ハスラーX

【スペック】

全長×全幅×全高=3395×1475×1665mm▽ホイールベース=2425mm▽車重=800kg▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHC、38Kw(52馬力)/6000回転、63Nm(6.4kg)/4000回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=29.2km(JC08モード)▽車両本体価格=141万1200円(2トーンルーフ仕様)

【試乗車提供】

スズキモーター和歌山・東山店
(田辺市東山2丁目31-20、0739・24・0195)

[2014年2月13日 UP]

「遊べる軽、出た」をキャッチコピーにしたスズキの新型軽乗用車「ハスラー」が発売された。室内が広いワゴンRの車台(プラットフォーム)をベースに、アウトドアスポーツやレジャーに使えるアイデアや悪路の走破性を盛り込んだ。いま、最も話題になっているモデルの一つである。

高い注目度


 ハスラーという愛称は、1960~90年代にスズキのオフロードバイクに使われており、中高年にとっては懐かしい響きがある。スズキには、四輪駆動(4WD)の本格的なオフロードモデルとして「ジムニー」があり、ハスラーはまったく新しいジャンルの軽乗用車として企画された。
 室内の写真を撮影するために会社の駐車場に止めたところ、注目度は抜群だった。普段は車に関心がない社員まで出てきて、「いろんな使い方ができそう」「天井の網棚に魚釣りの小物が置ける」などと、さまざま用途に思いを巡らせていた。1月上旬の発表試乗会はどの販売店にも多くの来客があり、若い女性から中高年の男性まで、幅広いユーザーが関心を示していたという。
 エンジンは、52馬力の自然吸気と、64馬力のターボ。駆動方式はFF(前2輪駆動)とフルタイム4WDが選べる。
 塗装色も個性的だ。オレンジ、ブルー、ピンクには、白いルーフの2トンカラーが設定されていて、街中でも注目度が高い。赤、白、シルバーの車体色には、ちょっとしぶい黒いルーフが設定されている。

本格的なオフロード性能


 実車を前にしてまず目を引くのが、角張ったデザインと丸いヘッドライト、それに15インチの大きめのタイヤ。ロードクリアランス(最低地上高)は180mmあり、ワゴンRより25mm大きくなっている。雪道やわだちで底をするかすらないかというときに、この25mmの差は大きい。
 カタログを読み進めていくと、スズキが本気でクロスオーバー車を開発したことが分かる。4WDのグレードには、滑りやすい急な下り坂をブレーキ操作なしに時速7kmで下ることができる「ヒルディセントコントロール」や、雪道など滑りやすい路面で発進するときに車輪の空転を制御する「グリップコントロール」など、軽自動車初の機能が採用されている。
 もちろん、時速30km以下で追突を防止する自動ブレーキや誤発進抑制機能、横滑り防止装置といった安全機能も備えている。
 ワゴンRやアルトエコなどに採用されている省燃費技術も抜かりなく盛り込まれている。減速中に時速13km以下になるとエンジンが停止する新アイドリングストップシステムや、減速時のエネルギーで発電するエネチャージ、アイドリングストップ中もエアコンから冷たい風が出るエコクールを採用している。
 車体は大柄に見えるが車重は軽く、軽ワゴンの中で最軽量のワゴンRに対して、わずか10kgの増加にとどめている。これにより、自然吸気エンジンのJC08モード燃費は、ワゴンRのリッター30.0kmに迫る29.2km、ターボエンジン搭載車も26.8kmという数値を達成している。

ソフトな乗り心地


 市街地やバイパス道路で、ハスラーと同じ15インチのタイヤを履くワゴンR20周年記念特別仕様車と乗り味を比べてみた。いずれもタイヤの幅は165mm。扁平(へんぺい)率はワゴンRが55%、ハスラーが60%と、ハスラーの方がやや厚みがある。足回りは、悪路の走行を前提にしたハスラーの方がソフトで、その分、乗り心地がいい。ワゴンRはややごつごつした印象を受ける。
 最低地上高が高いハスラーだが、車高はワゴンRとあまり変わらないので、カーブでぐらっと傾いて不安定になるということはなかった。フロントの傾きを抑えるスタビライザーが効いているのだろう。
 ただし、急カーブでハンドルを大きく切り込んだときの安定性や追従性は、ターボ車に準じた足回りを採用しているワゴンRの方が上手だった。

遊び心満載


 ハスラーには、遊びのシーンに合わせたオプションがたくさん用意されている。魚釣りのためには、釣り道具を重ねずに置けるラゲッジボードや、釣りざおが収納できるロッドホルダー、サーファー向けには、駐車場で着替えるときに目隠しになるカーテン&ターフキットといった具合だ。
 メーター表示など、ちょっとしたところにも遊び心が盛り込まれている。例えば、アイドリングストップでエンジンが停止している間はメーターに砂時計が表示され、信号待ちのイライラを和らげてくれる。
 使い勝手の面では、ワンタッチでリアシートを前方に倒すとフラットな荷室空間が作れるほか、助手席を前方に倒すと背もたれがテーブルとして使えるようになっている。助手席には、テーブル機能付きのインパネボックスもある。
 うらやましいと思ったのは、汚れを拭き取りやすい素材を用いた荷室の床板。後部座席の背面も同様に汚れにくい素材が使われている。軽ワゴンは灯油をはじめ、車内が汚れやすい荷物を載せる機会が多いので、ほかの車種にもぜひ採用してほしい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。