3種類のエンジン
アクセラでまず目を引くのは、「魂動(こどう)」と名付けられたデザイン。先行したSUV(多目的車)CX-5やアテンザと共通の、肉食獣が低く構えたような躍動的なデザインを採用している。
全長は5ドアハッチバックのスポーツが4460mm、セダンが4580mmと5ナンバーサイズに収まるが、全幅は1795mmで、トヨタの高級車クラウンとほぼ同じ。最小回転半径は5.3mと小回りが利くので、街中での取り回しに不自由することはなかった。
エンジンは、ガソリンの1.5リットル(111馬力)と2リットル(155馬力)、2.2リットルのディーゼルターボ(175馬力)、ハイブリッドの4種類。同一車種でガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3タイプが選べるのは国内の乗用車で初めてである。
ボディーとの組み合わせには制限があり、セダンはガソリンの1.5リットルとハイブリッドの設定。スポーツは1.5リットル、2リットルのガソリンとディーゼルの3種類で、ハイブリッドは選べない。
CX-5に搭載されてデビューしたクリーンディーゼルは、4リットルガソリンエンジン並みのトルク(42.8kg)をわずか2000回転で発生する。しかも、JC08モード燃費は19.6kmと優秀。軽油はレギュラーガソリンに比べて1リットル当たり20円程度安いので、ハイパワーのエコカーと言えそうだ。
マツダ初のハイブリッドシステムはトヨタから供与されたもので、プリウスと同一。プリウスは1.8リットルのエンジンを搭載しているのに対して、アクセラは2リットルエンジン採用している。エンジンの最高出力と最大トルクは99馬力、14.5kgで、プリウスのエンジンと全く同じ。JC08モード燃費は30.8kmと、プリウスSの30.4kmをわずかに上回る。
活発に走る1.5リットル
最初に試乗したのは、1.5リットルのエンジンを搭載した5ドアハッチバックのスポーツ15S。シートの着座位置が低めなので、足を少し前に伸ばすような運転姿勢になり、乗り込むだけでスポーティーな雰囲気が伝わってくる。メーターの中央にはアナログ式の大きな速度計があり、その左側にデジタル式のタコメーターが収まっている。
全幅1795mmの3ナンバーサイズの車体に1.5リットル、111馬力のエンジンでは力不足かと思っていたが、これが予想に反してよく走る。
発進直後のトルクは少し小さく感じるもののエンジンは軽快に吹き上がり、2000回転を超えたあたりから力強さが増してくる。
アクセラは変速機にCVT(自動無段変速機)ではなく、6速ATを採用している。このATは変速が滑らかで素早い上にロックアップの領域が広く、エンジンの回転上昇をダイレクトに車輪に伝えてくれる。1.5リットルエンジンとの相性はとてもよく、アクセル操作とエンジン回転の上昇、加速が一致するのが気持ちいい。高回転まで引っ張ったときに車内に入ってくるやや甲高いエンジン音も心地よく感じる。燃費のことを忘れて、ついエンジンを回し過ぎてしまうほどだ。
先代アクセラの足回りは、スポーティーな走りの代償として路面のゴツゴツした感じを伝えてきたが、新型はしなやかで洗練された味付けになった。ステアリングの操作に車体の動きが素直についてきてくれるので、エンジン回転を高めに保ちながらのコーナリングが楽しい。このATは、下り坂では適度にエンジンブレーキが利くよう賢く設定されているようで、コーナーが連続する下り坂でも、手動でシフトダウンする必要をあまり感じなかった。
自然に乗れるHV
ハイブリッドの試乗車は、豪華装備のセダンS/Lパッケージ。シートは電動の本革シート、オーディオはメーカーオプションのボーズ・サウンドシステムを装備していた。
乗り込んでスターターボタンを押すと、メーターに明かりが点ってスタンバイ状態になる。ジョイスティックのようなシフトノブを右手前に動かすとギアがDレンジに入るのはプリウスと同じ。アクセルを踏むと、音もなくモーターで走りだすが、エンジンは意外に早めに始動した。プリウスやアクア、サイなどトヨタのハイブリッド車は、モーターだけで加速する領域が広いが、マツダのハイブリッドは同じシステムを使いながら、エンジンへの受け渡しが早いタイミングで行われる。
また、ハイブリッド車のブレーキは、減速時にエネルギーを回収するためにドライバーが意識した以上に強く効く傾向があるが、アクセラのブレーキには不自然さが全くなかった。ハイブリッド車と知らされずに乗ったら、エンジンの静かなガソリン車と間違えるほど自然に運転することができるだろう。
操縦性をスポーツと比べると、ハンドルは少し軽めで、足回りもいくぶんソフトに感じた。セダンということもあるが、省エネを意識してゆったりと走るのが似合っているようだ。
少しだけ気になったのは、空気圧が高い省燃費タイヤをはいているためか、別の銘柄をはくスポーツよりも路面のざらつき感や走行音が大きく感じられたこと。タイヤ交換の際には、乗り心地を重視した走行音の静かなタイプを選ぶと、より快適に乗ることができるだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。