乗り慣れた車のよう
試乗車は、ワゴンタイプのフィールダー・ハイブリッドG。5ナンバーサイズの車体(全長4360mm、全幅1695mm)に、大きな荷室を備えている。セダンのアクシオが年齢層の高いユーザーを対象にしたおとなしい外観をしているのに対して、フィールダーはいくぶん若向きになっている。それでも、プリウスやアクアなどハイブリッド専用車が未来的なデザインを採用しているのに比べると地味な印象を受ける。
カローラの優れた点は、初めて運転しても、長年乗り慣れた車のような安心感が得られること。着座位置やステアリングの切れ方、視界、各部の操作がごく自然で、不安なく運転することができる。
プリウスはハイブリッド車の先進性を強調するため、メーター回りやギアシフトの操作をあえてガソリン車と大きく変えているが、今回発売されたカローラ・ハイブリッドは、違和感なく運転できるような工夫が盛り込まれている。
トヨタのハイブリッド車では初めて、タコメーター(エンジン回転計)が採用された。これまでクラウン・ハイブリッド、サイ、プリウス、アクアに試乗したが、エンジンの回転数を気にしたことはなかった。エンジンとモーターの切り替えを車が勝手に制御するので、タコメーターがなくても不自由しなかった。それでもカローラは、「エンジンの状態を知りたい」というベテランドライバーのために、あえてタコメーターを装備したのだろう。
信号待ちのときやモーターによるEV走行でエンジンが停止すればタコメーターは「ゼロ」を指すが、それが不自然かというと、そうでもない。むしろ、モーターだけで走行していることが一目で分かるので便利だった。
シフトレバーも、プリウスやサイがゲーム機のジョイスティックのような形式であるのに対して、一般的なフロア式になっている。サイドブレーキもレバー式なので、一般のガソリン車から乗り換えても違和感なく操作することができる。
時速50kmでEV走行
トヨタのハイブリッドシステムは完成の域に達している。アクセルを踏むとまずモーターで発進し、間もなくエンジンが始動するが、どこでエンジンがかかったのか分からないほどスムーズに動力を引き継ぐ。また、一定速度で走っていてモーターのみのEV走行になっても、意識していなければエンジンが止まったことに気付かない。バッテリーの残量が多いときにはできるだけEV走行するよう設定されている。フィールダーは、時速50~60kmでもEV走行をしてガソリンを節約していた。
エンジンは1.5リットルなので、プリウス(1.8リットル)ほどの力強さはない。通常の走行で不満はないが、同じシステムを搭載するアクアより車重が100kg重いので、上り坂では少しパワー不足を感じるかもしれない。
室内は、大人4人がゆったり乗れる広さがあり、後部座席はひざの前にこぶし二つ分の余裕があった。荷室の奥行きは970mmあり、後部座席の背もたれを前に倒すと2025mmのフラットなスペースが生まれる。背もたれを倒す操作もやりやすい。
ガソリン車と比べると…
ハイブリッド車の購入を検討しているドライバーの関心事の一つは、燃費性能と車両価格のバランス。国内新車販売で圧倒的な人気のアクア、プリウスとカローラハイブリッドを比べてみよう。
中間グレードで比較すると、アクアSは車両本体価格179万円、JC08モード燃費はガソリン1リットル当たり35.4km、フィールダーハイブリッドGは216万5000円で33.0km、プリウスSは232万円で30.4kmとなっている。「予算と車格に合わせて選んでください」というトヨタのラインアップに見事にはまっている。
それでは、ガソリン車との比較はどうだろうか。1.5リットルのフィールダーGは173万5000円で、燃費は19.6km。エコカー減税などを考慮すると、価格差はおよそ40万円になる。
実用燃費をガソリン車はリッター14km、ハイブリッド車は25km、レギュラーガソリンの価格を1リットル160円と仮定して計算してみた。車両の価格差40万円を償却するのに、年間1万kmを走行する人は8年かかり、1万5000km走る人なら5年で済む。
走行距離が長い人ほど償却期間は短いので、通勤や仕事で毎日長距離を走る人や、営業車としての利用はメリットがありそうだ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。