高級感あるスタイル
大きい車から小さい車に乗り換える「ダウンサイジング」の動きが一段と強まり、維持費が安くて燃費もいい軽自動車の人気が高まっている。軽自動車のマーケットは2011年まで、スズキとダイハツの2強がトップ争いをしていたが、12年にはホンダが「Nシリーズ」を発売して存在感を増した。
日産はこれまで、三菱とスズキから相手先ブランドによる生産(OEM)を受けて軽自動車を販売してきた。拡大する軽自動車マーケットに対応するため今回、三菱との合弁会社NMKVを設立して新型車を企画した。
日産はデイズとデイズ・ハイウェイスター、三菱はeKワゴンとeKカスタムを発売した。フロントグリルにはそれぞれ個性を出しているが、車体やエンジンは共通の兄弟車種。今回はその中から、デイズ・ハイウェイスターGに試乗した。
実車は、高級感のある立体的な造形が印象的だ。特にハイウェイスターは、日産の人気ミニバン、セレナやエルグランドと共通した雰囲気を醸し出している。内装も彫りの深いデザインを採用しており、コストの制約がきつい軽自動車としてはかなり頑張っている。
内装でユニークなのは、タッチパネル式のエアコン操作パネル。表示がシンプルで見やすく、オン・オフの操作や温度設定が迷わずにできた。
エンジンは、最高出力49馬力。アイドリングストップ機能付きのグレードは、ガソリン1リットル当たり29.2km(JC08モード)と、背が高い軽ワゴンではトップの燃費性能を実現している。アイドリングストップなしのモデルは25.8km。8月に発売予定のターボエンジンは、最高出力64馬力、燃費はリッター23.4kmとなる。
燃費重視の設定
試乗車は、シートの着座位置が高めなので、立った姿勢から自然に体を滑り込ませることができる。ハイウェイスターの室内は黒が基調で、シートの座面と背もたれには肌触りが柔らかい布地が使われている。
副変速機付きのCVT(自動無段変速機)の効果で、発進加速はスムーズだ。燃費重視のセッティングなので、低いエンジン回転を保ちながら速度を上げていく。このエンジンは燃費性能を重視したようで、ライバル車に比べて出力は控えめ。発進加速で不自由を感じることはないが、上り坂や追い越しのさいには、もう少しパワーが欲しくなる。軽快な走りを手に入れたい人は、8月に発売予定のターボを待つのがいいかもしれない。
燃料の節約に貢献するアイドリングストップは、積極的に働く。赤信号で減速していくと、車速が13km以下になるとエンジンが停止する。再始動もスムーズだ。エアコンを使用していると、信号待ちの停止中でも再始動するようになっている。
足回りは柔らかめで、しっとりした味付け。路面から伝わってくる騒音の遮断もまずまずのレベルと感じた。
室内の広さは、軽ワゴンとしては標準的だ。後部座席は前後に170mmスライドするので、利用状況に合わせて座席部分を広くしたり、荷室を広くしたりできる。最後部まで下げると、成人男性でもゆったりくつろげる空間ができる。ただし、この場合、荷室スペースは最小になる。背もたれは、左右の座席ごとにワンタッチで前方に倒して、大きな荷室スペースを作ることができる。
周囲をモニターで確認
ハイウェイスターGに標準装備されているアラウンドビューモニターは、車庫入れなどでバックをするさいに、車を上空から見下ろしたような画像を映し出す。これまで、一部の上級車種だけに採用されてきたもので、軽自動車への装着は初めて。
ギアをバックに入れるとルームミラー左側に、車を上から見下ろした画像が映し出される。車体の前後左右4カ所に装着されたカメラからの画像を合成しているのだという。何とも不思議な感じがするが、運転席から直接見えない周囲の障害物や、障害物との距離が確認できるので、とても便利だ。
女性に喜ばれる装備が、紫外線を99%カットするスーパーUVカット断熱グリーンガラス。フロントドアのガラスに採用されている。紫外線が強い初夏から秋にかけての運転は、一般的なUVカットガラスでは車内にいても日焼けを防ぐのが難しい。UVを99%カットすれば安心という。
急ブレーキを踏んだときにハザードランプが自動的に高速点滅するエマージェンシーストップシグナルや、ドアロックに連動してドアミラーが自動開閉する機能などを全車に標準装備した。また、キーをポケットに入れておくだけでドアの施錠・解錠やエンジンの始動ができるインテリジェントキーは、中間グレード以上の車種に装備している。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴38年。紀伊民報制作部長。