新車試乗記

トヨタ オーリス180G・Sパッケージ

【スペック】

全長×全幅×全高=4275×1760×1460mm▽ホイールベース=2600mm▽車重=1280kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1797cc水冷4気筒DOHC、最高出力105Kw(143馬力)/6200回転、最大トルク173Nm(17.6kg)/4000回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=16.0km(JC08モード)▽車両本体価格=221万円

【試乗車提供】

ネッツトヨタ和歌山田辺店
(田辺市新庄町1895、0739・22・4979)

[2012年12月13日 UP]

 欧州市場をメーンに開発されたトヨタのスポーツハッチバック「オーリス」がフルモデルチェンジを受け、2代目に生まれ変わった。車高を低くして重心を下げたりサスペンションを改良したりして、操縦性を大きく向上させた。

足回りを改良


 1.4~2リットルクラスのハッチバックは、欧州ではフォルクスワーゲンのゴルフやアウディA3、BMW1シリーズなど名車がずらりと並ぶ。初代オーリスは2006年、この激戦区にデビューした。国内モデルにも、欧州仕様に近い硬めの足回りを採用した。
 国内のハッチバック市場はトヨタ・アクア、ホンダ・フィット、日産・ノートなど一回り小さい車種が主流で、このクラスのマーケットはあまり大きくない。街中で使いやすい大きさで、しかも高速道路の長距離ドライブが快適にこなせるサイズなので、もっと注目されてもいいと思う。
 初代オーリスは、車高が高めで、ヴィッツを大きくしたような丸みのあるデザインを採用していた。新しいオーリスは一転して車高が低くなり、トヨタが「キーンルック」と名付けた鋭い顔つきになった。数字で見ると、車高は初代より55mm低くなり、着座位置も40mm下がっている。
 エンジンの排気量は1.5リットルと1.8リットル。1.5リットルは最高出力108馬力で、燃費はガソリン1リットル当たり18.2km(JC08モード)。オプションでアイドリングストップ機能を付けると19.2kmに向上する。
 1.8リットルは最高出力143馬力。スポーツタイプのRS用には無鉛プレミアム仕様のエンジン(144馬力)も用意されている。ただしRSは手動6速ミッションのみの設定で、CVT(自動無段変速機)は選択できない。
 1.5リットルと1.8リットルでは排気量だけでなく、リア・サスペンションの形式も違う。1.5リットルのリア・サスペンションは一般的なトーションビーム式だが、1.8リットルはぜいたくなダブルウィッシュボーン式を採用している。ダブルウィッシュボーン式は、コストが高い代わりにセッティングの自由度が高く、乗り心地と走りの性能を両立させることができるという。欧州向けのオーリスは、初代からダブルウイッシュボーン式を採用していたが、国内向けは1.8リットルもトーションビーム式だった。
 安全性の面では、急なステアリング操作や滑りやすい路面で横滑りを防止するVSCや、発進・加速時に駆動輪の空転を防ぐTRC、急ブレーキを踏んだときに大きな制動力を発揮するブレーキアシスト、急ブレーキの際にハザードランプが自動的に点滅する緊急ブレーキシグナルなどを標準装備している。
 TRCとVSCは雪道で特に効果が大きく、アクセルの踏み具合やステアリング操作に余分な神経を使うことなく、車任せで走ることができる。横滑り防止装置は、今後国内で発売される新型車に順次標準装備される。

着座位置も低く


 新型オーリスを初代と比較しながら試乗してみた。試乗車は1.8リットルのCVTモデルにアルミホイールや革巻きステアリング、パドルシフトなどを追加した180G・Sパッケージ。色はメーカーオプションのホワイトパールクリスタルシャイン(白)だった。
 外観のイメージは、07年に生産を終了したワゴン車「カルディナ」に似ている。着座位置が40mm下げられているので、運転席に座るとずいぶん目線が低くなり、それだけでスポーティーに感じる。初代は、ダッシュボードがフロントガラスの接続部で高くなっているデザインだったので、車両の先端がどこにあるか分かりにくかったり、車幅がつかみにくかったりした。新型のダッシュボードはフラットなので、車幅の感覚がつかみやすい。
 フロントシートは、縁が高く盛り上がったスポーティーな仕様。初代よりも縁が硬いものなり、急カーブで体をしっかり支えてくれる。
 後部座席は、天井が少し低くなった感じだが、それでも頭上に握りこぶし一つ半分の空間があった。ひざの前にはこぶし一つ分の余裕があった。車高は低くなったものの、大人4人がゆったり乗れるスペースは確保されている。
 インテリアは黒で統一されている。初代はプラスチックだったダッシュボードは、上級車並みにソフトな素材に変更された。ただ、メーターも含めてデザインが簡素なので、200万円を超える車としては地味な印象を受ける。先代の特徴だった盛り上がったセンターコンソールは一般的な高さに変更され、圧迫感がなくなった。

走りが楽しめる


 肝心の走りは大きく進化した。販売店を出てすぐにバイパス道路に乗り入れたが、車線は緩やかな上り坂。初代オーリスはこんな場面でアクセルを強く踏み込むと、エンジンが一気に4000回転ぐらいまで上昇し、遅れて車速がじわじわ上がっていく設定になっている。新型オーリスは、車速の伸びとエンジン回転の上昇が同期するような設定になっており、特に、スポーツモードを使用すると、シフトアップ感がより強調される。また、1.8リットルはCVTでありながら7速の手動変速が可能になっているので、走りを楽しみたい場面では積極的に変速操作ができる。
 バイパス道路を下りてから、急カーブが続く山道に進路を取った。ここでオーリスは本領を発揮した。サスペンションはトヨタ86のようにガチガチに引き締められてはいないが、車高が低くなり重心が下がった分、ロール(横傾き)が少なくなった。初代オーリスはステアリングを切り込んだときにじわっと粘りながらカーブを回っていくが、新型オーリスはステアリングへの反応が敏感で、小気味よく向きを変えていく。足回りがしなやかに動くので、段差を乗り越えたときなどの不快感も少ない。車体が一回り小さいスズキ・スイフトほどの軽快感はないが、トヨタ車では数少ない、運転を楽しめる車に仕上がっている。
 快適性も向上している。初代オーリスも1.5~1.8リットルクラスのハッチバック車としては車内が静かだったが、新型はさらに静粛性が高まった。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴37年。紀伊民報制作部長。