新車試乗記

三菱自動車 ミラージュM

【スペック】

全長×全幅×全高=3710×1665×1490mm▽ホイールベース=2450mm▽車重=870kg▽駆動方式=FF▽エンジン=999cc水冷3気筒DOHC、51Kw(69馬力)/6000回転、86Nm(8.8kg)/5000回転▽トランスミッション=CVT▽JC08モード燃費=27.2km/リットル▽車両本体価格=118万8千円(カーナビはオプション)

【試乗車提供】

和歌山三菱自動車販売田辺店
(田辺市新庄町1934、0739・22・5019)

[2012年10月11日 UP]

 三菱自動車の新型ミラージュは、タイで生産して日本や海外で販売している世界戦略車。軽自動車並みの軽い車体に1リットルのエンジンを積み、ガソリン登録車(普通車)でトップとなる27.2km/リットル(JC08モード)の低燃費を実現している。

ライバルは軽自動車?


 ミラージュのライバルは、日産自動車のマーチやトヨタのパッソ。マーチは、ミラージュと同様にタイで生産する「輸入車」で、世界戦略の小型車という点で同じ土俵に乗っている。排気量は1.2リットルと一回り大きいが、車体の大きさはほぼ同じだ。パッソは1リットルエンジンを積んでいて、全長はミラージュより6cm短い。しかし、ミラージュの本当のライバルは、年々存在感を増している軽自動車かもしれない。
 スペックを見てみよう。エンジンは、最高出力69馬力の1リットルエンジンのみで、装備によって3グレードに分かれる。中間グレードの「M」と上級グレードの「G」にはアイドリングストップ機能が付いている。アイドリングストップ機能がない基本グレード「E」の燃費はガソリン1リットル当たり23.2kmになるが、車両本体価格は100万円を切る設定になっている。
 ミラージュの27.2kmという燃費性能は、マツダのデミオ・スカイアクティブ(25.0km)や日産ノート(25.2km)を上回ってガソリン車(軽自動車を除く)でトップ。省エネ性能では、モーターを積むハイブリッド車が優位だが、ガソリン車の性能向上も著しい。ハイブリッド車に比べて車両価格が安いのが一番のメリットだ。
ミラージュの燃費向上に大きく貢献しているのは、車体の軽量化。870kgという車重は、ホンダの人気軽自動車エヌボックス(960kg)やダイハツ・タント(930kg)よりも軽い。

親しみやすい外観


 ミラージュを前にして最初に思い浮かべたのはトヨタの初代ヴィッツ。コンパクトな車体に1リットルの小さなエンジンを積み、多少のきゅうくつを我慢すれば大人5人がちゃんと乗れた。移動の道具と割り切った潔さが印象的だった。ミラージュにも同様の割り切りが感じられ、「軽自動車でもいいのだけれど、少しだけ余裕が欲しい」という層にアピールしそうだ。
 今回試乗したMは、フルオートエアコンやパワーウインドー、電動格納ミラーなど、主な快適装備は標準で設定されている。安全装備である横滑り防止装置やサイド&カーテンエアバッグはオプションとなっている。
 外観は、親しみやすさと精かんさを併せ持つような、微妙なバランスに収まっている。個性を主張していないので、男女いずれにも好まれそうだ。
 内装はプラスチックを多用しているものの、曲線を基調にした落ち着いたデザインで、安っぽい感じはしない。メーター類もシンプルで見やすい。
 運転席のシートは、このクラスの中では座面が大きめで座りやすい。後部座席も、背もたれの高さが十分にあり、しっかり体をあずけられる。後部座席に座ったときの頭上の空間はこぶし一つ分、ひざの前はこぶし半個分と余裕はあまりないが、特別狭いという感じはしなかった。

力強い出足


 ミラージュに乗って最初に感心したのは出足の良さ。停止状態からアクセルを踏み込むと、思った以上に力強く加速する。低速トルクが豊かな3気筒エンジンと軽い車体が利いているようで、同じ価格帯で買える軽自動車より明らかに力強い。
 ステアリングはしっかり手応えがある設定になっていて、バイパス道路での直進安定性もいい。ただ、カーブや曲がり角でステアリングを切り込んだときの反応が少しあいまいな感じがした。
 最小回転半径は4.4mと軽自動車並み。これだけ小回りが利くと、狭い道での運転や駐車場での切り返しがとても楽だ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴37年。紀伊民報制作部長。