FRスポーツに熱い視線
オレンジ色のトヨタ86は、床よりも一段高い回転台の上で、多くの来場者に囲まれていた。「立ち止まらないでください」というアナウンスにせかされながら、カメラのシャッターを切った。
「86」の名称は、1983年に発売され、スポーツ指向のドライバーに人気だったFRの小型車「カローラ・レビン」「スプリンター・トレノ」(いずれも1.6リットル)の型式(86)にちなんでいる。現在、小型車の駆動方式は前輪駆動(FF)が主流になり、FRはトヨタのマークXやクラウン、日産のスカイラインなど、上級車種に限られている。FFは、室内を広くできることやドライブシャフトがないことによる車体の軽量化、横風に強いといった優れた面がある。一方で、運転していて楽しいのはFR。ドイツのBMWがFRにこだわっているのはそのためだ。
「86」と「BRZ」のエンジンは、富士重工がこだわってきた水平対向4気筒エンジン。シリンダーを2気筒ずつ向かい合わせに配置するという独特の形式より、車体の重心を下げることができる。自然吸気ながら最高出力は200馬力、レッドゾーンは7500回転からという高回転・高出力型のエンジンだ。
このほど正式発表があり、BRZは3月28日、86は4月6日の発売と決まった。価格は、レース用のベース車両を除くと、241万~305万円となっている。
近距離移動は電気の時代に
小型電気自動車は将来、都市での近距離移動用だけでなく、田舎で高齢者が外出するときにも便利に使えそうだ。
スズキのキュー・コンセプトは全長2・5メートル、全幅1・3メートルのコンパクトな車体で、乗車定員は2人。1回の充電で50km走ることができる。
ダイハツのピコも同じく2人乗りで、全長は2・4メートルとキュー・コンセプトとほぼ同じだが、車幅は1メートルと一回り小さい。こちらも航続距離は50kmという。
ホンダのマイクロ・コミューターは、全長2・5メートル、全幅1・25メートル。大人1人と子ども2人の3人乗りを想定している。タイヤが四隅に張り出した安定感のあるデザインが特徴だ。
これらの電気自動車は普通免許が必要だが、もう一つ会場で目に留まったのが、原付き免許で運転できる四輪電動バイク。1回の充電で走れる距離は30km、最高速度23kmと性能は控えめだが、フロントのシールドや屋根まであって、多少の風雨はしのげそうだ。
いずれはこういった電気自動車や電動バイクが街中の主役になる時代が来ることを感じさせたショーだった。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴36年。紀伊民報制作部長