スカイアクティブの第二弾
マツダはエンジンの燃焼効率を上げたり、車体の隅々を見直したりすることで燃費の改善に取り組んでいる。スカイアクティブテクノロジーは(1)一般的に3割程度しか使われていないエンジンのエネルギーを極限まで引き出す(2)車両重量を軽くする(3)エネルギーを無駄なくタイヤに伝える-という3点が柱になっている。
第一弾として発売されたのが、1.3リットルエンジンでリッター30.0km(10・15モード)の低燃費を実現したデミオ13スカイアクティブ。デミオのエンジンは、量産タイプではこれまで不可能だった14.0という高い圧縮比を採用したり、アイドリングストップ機能を改良したりして燃費を改善した。
アクセラは、スカイアクティブを採用した第二弾。新開発の2リットルエンジンは、燃料噴射装置の改良やバルブの開閉タイミングの最適化、ピストンの形状改良などにより燃焼効率を改善した。最高出力は154馬力、最大トルクは19.8kg。従来のエンジンに比べて出力で4馬力、トルクで0.8kg上回っている。最高出力と最大トルクの発生回転も下がっており、低回転から大きな力を出すタイプのエンジンになった。
エンジンの力を効率よく駆動系に伝える6速AT(自動変速機)の搭載と合わせて、2リットルクラスでトップの20.0km(10・15モード、15インチタイヤ装着車)を実現した。
マツダは2012年春には、スカイアクティブの第三弾として、新型SUV(スポーツタイプ多目的車)に排気量2.2リットルのクリーンディーゼルを搭載して発売する。4リットルガソリンエンジンよりも大きなトルクと、SUVでトップの低燃費(JC08モードで軽油1リットル当たり18.0km)を達成するという。
アイドリング停止も進化
アクセラの低燃費に貢献しているのが、同社独自のアイドリングストップ機能i-stop(アイストップ)。一般的なアイドリングストップ機能は再始動にセルモーターを利用するが、アイストップはエンジン内にガソリンを直接噴射して燃焼させ、エンジンをかける。セルモーターの「キュルキュル」という音がしないので、素早く、静かに再始動する。スカイアクティブのアイストップは進化し、ギアがドライブレンジに入っているときだけでなく、ニュートラルやマニュアルモードでも動作するようになった。
燃費性能と走りの楽しさを両立させているのがアクセラの持ち味だ。燃費の向上だけを追及するのならミッションは6速ATではなく、CVT(自動無段変速機)にしておいた方が効率がいい。あえてATを採用し、しかも手動ミッションに近い味付けをしたところがマツダのこだわりだろう。また、マイナーチェンジに伴い、車体の補強やサスペンションのチューニングなど、走りの質を一段と高める改良が施されている。
「走る楽しさ」向上
アクセラは、「走る楽しさ」を前面に打ち出したスポーツ性の高い車。試乗車は、5ドアハッチバックの車体に2リットルのエンジンを搭載したアクセラスポーツ20S-スカイアクティブ。オプションで17インチの幅広・扁平(へんぺい)タイヤを装着していた。
シートは、両サイドの支えがしっかりしたバケットタイプで、座面も堅めになっている。内装色は黒で統一されていて、「これから走るぞ」という気分になる。
新開発の6速ATは、最近主流になっているCVTとはまったく違う感覚が味わえる。CVTは、アクセルを踏むと先にエンジン回転が上昇し、やや遅れて速度が上がってくる。これに対してATは、エンジン回転と速度の上昇が同期する。アクセラのミッションは、従来の5速ATに比べてギアを1段増やすとともに、エンジンの回転数を効率良くタイヤに伝えるロックアップ領域(クラッチを接続した状態)をこれまでの49%から82%に拡大した。
通常のATは、ギアチェンジのさいにトルコンの滑りを活用してつながりをスムーズにしているが、アクセラのATはすぐにロックアップされるので、ギアが一段一段切り替わっていくのが分かる。といって、不快なショックが伝わってくるのではなく、手動変速機のようなダイレクトなシフト感覚だ。スポーツ走行を指向するドライバーには好まれるだろう。
ステアリングのシフトスイッチは、前面のスイッチを親指で押すとシフトダウン、裏側のパドルを指で手前に引くとシフトアップする。シフトレバーをマニュアルモードにしておけば、ステアリングを握ったまま、指先だけで自由にギアチェンジができる。Dレンジで走行していても、スイッチを操作すると一時的にギアが変わるので便利だ。
足回りは引き締められていて、コーナーでのロール(横傾き)は少ない。路面が荒れている場所では、少しゴツゴツした感じが伝わってくる。ステアリングに敏感に反応する操縦性は気持ち良く、カーブが続く道を走るのが楽しくなる車だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴36年。紀伊民報制作部長