買い物もドライブも
三菱自動車のデリカシリーズには、本格的な悪路走行に対応したD:5(排気量2リットル、2.4リットル)がある。D:2は、シリーズの入門車という位置付けだが、悪路走行ではなく、街中でのファミリーユースを想定している。スズキ自動車のソリオと兄弟になる。
5ナンバーサイズのミニバンでは、ホンダのフリードや日産のセレナ、トヨタのヴォクシーなどが売れ筋だが、いずれも車体は大きめ。狭い路地を走ったり、スーパーの駐車場に止めたりしやすいコンパクトな車体で、休日には家族でのドライブに使えるという、手ごろなサイズの車は意外に少ない。
D:2の車体寸法は、全長3710mm、全幅1620mm、全高1765mm。全長と全幅は日産のコンパクトカー、マーチより一回り小さい。それなのに室内は広く、室内長は2100mm、室内高は1345mmもある。いずれも排気量1.5リットルクラスのコンパクトワゴンではトップクラスという。
エンジンは最高出力91馬力の1.2リットル1種類で、ミッションはハイ・ロー2段階の副変速機構付きCVT(自動無段変速機)。装備によってG、X、Sの3グレードがあり、XとSには四輪駆動車も設定されている。
両側スライドドアを採用
デリカD:2は、スズキの軽ワゴン「パレット」を一回り大きくしたような車だ。使い勝手のいい両側スライドドア、広い室内と高い天井など、小さい車体を最大限に利用する軽自動車のノウハウがふんだんに盛り込まれている。
まず、シートアレンジから見ていこう。リアシートは、左右が独立して前後に165mmスライドし、背もたれの角度を調節するリクライニング機構を備えている。シートを一番後ろに下げると、身長174cmのリポーターでもひざの前にこぶし3つ分以上の空間ができ、楽々と足を組むことができる。一番前にスライドさせても、ひざの前にこぶし1つ分の余裕があった。軽ワゴンで同様の広さを実現している車種も多いが、シートを最後部まで下げたときの荷室スペースは、さすがに車体が一回り大きいD:2の方が広い。
リアシートを前に倒すと、平らで大きな荷室空間ができ、26型と20型の自転車2台を立てたまま載せることが可能。子どもがいる家庭では、雨の日の送り迎えで自転車を載せる機会が多いから、この荷室スペースはとても助かる。また、後席に加えて前席も倒すと、大人2人が寝られるだけのフラットなスペースを作ることができる。
後部座席のスライドドアは、助手席側は3グレードとも電動で、運転席のスイッチやキーレスオペレーションキーで自動開閉できる。上級グレードのSは、運転席側のスライドドアも電動になっている。
バランスのいいスタイル
これまで「軽ワゴンを一回り大きくした車があったら便利なのに」という思いがあったものの、単純に軽ワゴンを大型化した車はどうもスタイルがアンバランスに見えた。とてもあいまいな表現だが、何となくかわいらしくなかったのである。しかし、デリカD:2は見た目のバランスがいい。
最近のコンパクトカーの車幅はほとんどが、5ナンバー枠いっぱいの1695mmになっているが、D:2は欲張らずに1620mmに抑えている。これはトヨタの最小モデル、パッソ(1リットル)や日産マーチ(1.2リットル)の1665mmより45mm狭い。この車幅がバランスのいいスタイルにつながっているようだ。
ドアを開けて乗り込んでみると、5ナンバー枠より75mmも狭いハンディはまったくない。内装のデザインがシンプルなこともあって、むしろ横幅がたっぷりあるように感じる。運転席と助手席の間に通路があるので、前席から後席に移動するウオークスルーが可能。駐車スペースの狭い場所で、ドライバーが後部のスライドドアから乗車して、運転席に移動するといった乗り込み方もできる。
車重が1030kgと、ワゴンタイプとしては軽いので、1.2リットルでも動力性能に大きな不満はない。一定の速度で走っているときに走行音が意外に静かなのでチェックしてみたら、ボンネットの裏やエンジンルームにきちっと吸音材が使われていた。
直線を基調にしたデザインは窓ガラスの面積が大きく取ってあり、運転席からの視界は良好。コンパクトな車体は街中の狭い道でも扱いやすかった。乗り心地はソフトだ。
試乗車は、中間グレードのXで、メーカーオプションのディスチャージヘッドライト・オートライトコントロール(6万3千円)を装備していた。ディスチャージヘッドライトは標準のハロゲンヘッドライトよりも明るく、路面がぬれていても見やすいので、予算に余裕があればお薦めだ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴36年。紀伊民報制作部長