新車試乗記

日産自動車 リーフ

【スペック】

リーフG 全長×全幅×全高=4445×1770×1545mm▽ホイールベース=2700mm▽車重=1520kg▽駆動方式=FF▽モーター=80Kw(109PS)/2730~9800回転、280Nm(28.6km)/0~2730回転▽充電走行距離=200km(JC08モード)▽車両本体価格=406万350円

【試乗車提供】

日産プリンス和歌山販売田辺支店
(田辺市上の山1丁目8の16、0739・22・8132)

[2011年4月14日 UP]

 日産自動車のリーフは、電気の力だけで走る電気自動車(EV)。フル充電で200kmの航続距離を達成している。EVの市販は遠い先のことと思っていたが、実際に試乗してみて、完成度が高いことに驚いた。電池の高性能化と充電施設の整備が進めば、ガソリン車に取って代わるのではないかと予感させるのに十分な性能だった。

フル充電で200km走行


 軽自動車をベースにしたEVでは三菱自動車のi-MiEV(アイ・ミーブ)があるが、リーフは大人5人が乗れる普通乗用車。車体の大きさは、トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」とほぼ同じだ。
 電気で走る自動車なので、まずは電池とモーターの話から。リーフは、大容量のリチウムイオン電池を車体中央の床下に積んでいる。リチウムイオン電池は、携帯電話やデジタルカメラなど、身近な電子機器にも使われている高性能電池。リーフの電池は、従来のリチウムイオン電池に比べて軽量でコンパクトながら、約2倍のエネルギー密度を実現したという。これにより、フル充電で200kmの走行を可能にした。
 気になる充電時間は、200V(ボルト)の普通充電の場合、残量警告灯点灯からフル充電(容量100%)まで約8時間、急速充電で容量80%まで約30分となっている。また、約10分の急速充電で航続距離を50km伸ばすことが可能だという。
 事業所や一般家庭で普通充電するためには専用の配線工事が必要で、費用は約10万円。また、全国約2200店の日産自動車販売店のすべてに普通充電器が設置されていて、そのうち約200店には急速充電器が設備されている。
 日産プリンス田辺支店は急速充電器設置店。来客用駐車場にある大きなボックスが充電器だ。試乗前に、充電を実演してもらった。充電のポート(差し込み口)はボンネットにある。ふたを開けてコネクターを差し込むと充電が始まる。急速充電のサービス代金は1回当たり525円。メンテナンスをはじめとしたサポートプログラム(月々1500円)を申し込むと、日産販売会社での充電サービスが無料で受けられる。
 電気料金の計算は複雑なのでガソリン車との燃費の比較は単純にはできないが、30分の急速充電(525円)で160km(フル充電の8割の距離)走れるとすれば、1リットル当たり16km走るガソリン車(ガソリン10リットル消費=約1500円)と比べて3分の1の費用。これが、価格の安い深夜電力を自宅で利用すると、ガソリン車の8分の1程度で済むという試算もある。
 リーフはもちろん、エコカー減税の対象車。EVに支給されていた政府のEV補助金(1台当たり最大78万円)は2011年3月末でいったん終了しているが、これが12年度も継続されれば、維持費も含めたガソリン車との価格差はずいぶん縮まる。

音もなく3リットル並みの加速


 さて、走りだしてみよう。運転席に座ってパワースイッチを入れると、リーフはメーターと音で走行可能な状態になったことを知らせてくれるが、それ以外の音はしない。アクセルを踏み込むと、ほんのかすかなモーター音とともに加速を始める。ハイブリッド車だと、ここでさりげなくエンジンがかかり、動力源がモーターからエンジンに切り替わるのだが、リーフは時速20km、30kmと速度を上げていっても、相変わらずかすかなモーター音が聞こえるだけ。その加速感は極めて滑らかで、静かで、力強い。アクセルを踏み込んだ分だけぐいぐい加速していく。
 自動車のエンジンは、低回転では力(回転トルク)が弱く、回転数が上がるにつれてトルクを増していくが、EVのモーターは回りだした時点から最大トルクを発生する。ゴー・ストップは電気自動車の得意とするところで、リーフの発進加速は、3リットルクラスのガソリン車と同等だった。
 EVは騒音の発生源であるエンジンがないので、走行中の車内が静かだが、リーフはさらに、タイヤと路面との間で発生するロードノイズや、車体の風切り音の侵入も徹底して抑えている。防音対策や内装の仕上げに相当な大きなコストをかけているという印象だ。
 また、ステアリングの動きは滑らかで、サスペンションの動きもスムーズ。全長4.4mという小柄な車体にもかかわらず車重が1520kgもあるが、乗り心地の面では、車体が重いことがプラスに作用し、どっしりとした乗り心地である。重い電池を床下に収納しているので重心が低く、走行安定性にも優れている。

気になる電池残量


 リーフのメーターで一番重要なのは、右下の航続可能距離。ガソリンのように「減ったらすぐ給油」というわけにはいかないので、常にバッテリーの残量と走行可能距離を気にしながら運転しなければならない。
 しかし、それだけで「EVはやっぱりだめだよね」ということにはならない。電池やモーターの高性能化、低価格化は日進月歩だし、車輪にモーターを組み込むといった新しい構造のEVも考案されている。コードなしでEVに充電する非接触給電という技術の研究も進んでいる。EVの利用は国内ではまず、宅配便の配達や都市部の営業など、限られた区域を走る用途から広がっていくのだろうが、リーフに試乗して「そう遠くない将来、EVの時代がやってくる」という思いを強くした。ガソリン車がすぐになくなるということではないが、EVの未来を感じさせるのに十分な車だった。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴36年。紀伊民報制作部長