新車試乗記

トヨタ ラクティス レピス

【スペック】

全長×全幅×全高=3995×1695×1585mm▽ホイールベース=2550mm▽車重=1090kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1329cc水冷4気筒DOHC、最高出力70Kw(95馬力)/6000回転、最大トルク121Nm(12.3kg)/4000回転▽燃料消費率=20.0km(10・15モード)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=149万5000円

【試乗車提供】

和歌山トヨペット田辺店
(田辺市稲成町234、0739・22・8085)

[2010年12月09日 UP]

 トヨタ自動車は、コンパクトカー「ラクティス」を全面改良して、11月22日に発売した。全長が4mを切る小柄な車体ながら、広い室内と使い勝手のいい荷室スペースを実現している。

後部座席も高さに余裕


 ラクティスは2005年9月に登場したファミリーカー。「コンパクトなボディーにゆとりの空間」をコンセプトにしている。ワゴンタイプと乗用車の中間のような、ちょっと背の高いスタイルが特徴だ。
 フルモデルチェンジで登場した2代目は、全高を55mm低くし、すっきりスマートな外観に生まれ変わった。それでも1310mmというクラストップレベルの室内高を確保しているので、後部座席の頭上も広々としている。また、先代と同じ全幅1695mmの5ナンバーサイズを保ちながら、室内幅を40mm広げている。
 エンジンは1.3リットル(95馬力)と1.5リットル(109馬力)の2種類。1.3リットルエンジンは、吸排気バルブの開閉タイミングを最適にコントロールする仕組みを備えた新型エンジンになった。10・15モード燃費は1.3リットル、1.5リットルともガソリン1リットル当たり20km(前輪駆動車)で、エコカー減税(取得税・重量税75%減税)、グリーン税制(翌年度の自動車税50%減税)の対象になっている。
 グレードとしては、専用のフロントバンパーやライトブルーのシートカラーを採用した女性好みの「レピス」、ヨーロッパ仕様の足回りを採用し、マニュアル感覚でシフト操作ができるパドルシフトを備えた「S」(1.5リットル、2WD)を設定した。Sのサスペンションは、ドイツの速度無制限の高速道路「アウトバーン」や欧州の田舎道を走ってチューニングしたという。
 また、今回のモデルチェンジで、後席に車いすのまま乗降できる「車いす仕様車」(ウェルキャブ)が、国内で初めて型式指定された。従来の車いす仕様車は登録のさい、陸運事務所に車両を持ち込んで手続きする必要があったが、型式指定自動車は書類手続きだけでナンバーが取れる。これにより、購入者の負担が1万円程度軽減される。
 車いす仕様車は標準仕様のラクティスより車高が120mm高くなっており、車いすのまま乗車しても頭上に余裕があるように設計されている。トヨタのディーラーは「福祉関係の事業所や車いすの家族を介護している個人などに積極的に販売していきたい」と話している。

片手で倒せるシート


 ラクティスの売り物の一つが、一工夫加えたシート機能と広い荷室スペース。特に、リアシートをワンタッチで倒すことができる仕組みは秀逸だ。荷室の側面にある大きめのレバーを片手で軽く引くと、リアシートの座面が沈み込みながら背もたれが前向きに倒れ、フラットな荷室スペースが現れる。シートの背もたれ上部には従来タイプのレバーも付いているが、指先に力を入れて引く必要があり、新機構との使い勝手の差は歴然だった。
 リアシートを倒さない状態でも、ラクティスの荷室はかなり広い。5人乗車時の荷室容量は429リットルあり、スペース効率でトップクラスのホンダ・フィットを上回っている。ラクティスの荷室は通常、重い荷物を出し入れしやすいように開口部と床面が同じ高さになっているが、アジャスタブルデッキボード採用車は簡単な調節で床面を120mm下げることが可能。さらに、デッキボードを取り外すと、もう170mm深い空間が現れ、床面から天井まで1200mmの高さを確保できる。
 収納も豊富で、助手席の前にはアッパーボックス、トレイ、グローブボックスの3つの収納スペースを備えているほか、センターコンソールと前後のドアで合計8個分のカップホルダーがある。

試乗でゆとり実感


 試乗車は、1.3リットルのレピス。黒とライトブルーに色分けされたシートがおしゃれだ。ライトブルーの内装色を採用しているのはレピスだけで、ほかのグレードは黒一色になる。
 着座位置は一般の乗用車よりやや高めだが、ワゴンタイプほど高くなく、ちょうど中間といった感じ。運転席からの見晴らしはいい。また、ドアミラーの取り付け位置をドアパネルに変更したことや、大きなガラス面積のおかげで死角が少なく、運転しやすい。
 室内高が十分にあるので、頭上にもかなり余裕がある。内装は直線を基調にしていて、これも視覚的に広さを感じさせるポイントになっているようだ。
 身長174cmのリポーターが運転席のシートポジションを合わせて、そのまま後部座席に座ると、ひざの前にこぶし1個半分の余裕ができた。大人4人が乗車して長距離ドライブをしても、きゅうくつな思いをしなくて済みそうだ。
 トランスミッションは全車CVT(自動無段変速)。新しい1.3リットルエンジンは、街中でアクセルを踏む分には何の変哲もないが、アクセルを意識的に強く踏み込んだら、中回転域からかなり元気な走りをみせた。試乗車で思いっきりアクセルを踏むわけにはいかないが、日常の使用では十分な性能といえそうだ。
 車高がやや高い車だが腰高感はほとんどなく、急なカーブでも安心して走ることができた。
 ラクティスは、トヨペット店とカローラ店で販売。また、富士重工からこのほど発売されたトレジアは、ラクティスをベースにトヨタがOEM(相手先ブランドによる生産)供給している。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴35年。紀伊民報制作部長