8年ぶりの復活
免許歴の長いドライバーは、RVRと聞くとちょっと懐かしさを覚えるだろう。1991年から2002年まで同名の車が販売されていたからで、当時は3文字目の「R」が反転文字になっていた。8年ぶりの復活である。
新型RVRの開発意図は「ジャストサイズのコンパクトSUV」。車体の大きさは全長4295mm、全幅1770mm。フォルクスワーゲンのゴルフやトヨタのオーリスとほぼ同じサイズだ。この大きさの車は、街中でも扱いやすい。SUVとしては、ホンダのクロスロードや日産のデュアリスなどがライバルになりそうだ。
エンジンは、1.8リットルのみで、最高出力139馬力、最大トルク17.5kg。6速スポーツモード付きCVT(自動無段変速)との組み合わせで、1360kgという重めの車体を引っ張る。手動ミッションの設定はない。燃費はFFで1リットル当たり15.2km、4WDで15.0km(いずれも10・15モード)。燃費性能は優秀だ。
4WDシステムは、回転式のセレクタースイッチを操作するだけで2WD、4WDオート、4WDロックの3つのモードを切り替えることができる電子制御4WD。このうち4WDオートは、路面状況に応じて前後輪の駆動力を適切に配分する仕組みになっている。
4WD車には、車両の状態や運転操作を検知して車両が不安定な状態にならないよう補助するアクティブスタビリティコントロール(ASC)を標準装備している。
三菱自動車は2010年6月5日から「より長く三菱車に乗ってほしい」と、これまで「5年、10万km」としていた特別保証を「10年、10万km」まで延長した。対象は新車購入者。エンジン機構、動力伝達機構、ブレーキ機構、サスペンション機構など、車の走行や安全にかかわる基本的な部品が保証の対象になる。
鮮やかなカワセミカラー
試乗車のグレードは、2WDモデルの中で最も装備が充実した「G」。メーカーオプションのHDDナビゲーション、ETC、パノラマガラスルーフ、ルーフレールを装備している。車体の色はRVRのテーマカラーであるカワセミブルーメタリック。明るく鮮やかな青が印象的だ。清流をすみかにしているカワセミの羽の色をイメージした色だという。車体色はこのほかに、メタリック、パール、マイカ系の7色。室内の色はスポーティーなイメージの黒で統一されている。
車体はコンパクトだが、大人4人が乗る室内スペースをきっちり確保した上に、広い荷室スペースを設けている。全長が短いのに荷室の奥行きがたっぷりあり、さらに折り畳み式のカーゴボードの下に、深さ135mmの床下収納スペースが用意されている。
オプションのパノラマガラスルーフは、スイッチ一つでカバーの開け閉めが可能。ドライバーの頭上が大きなガラス張りになるので、運転していて開放感たっぷりだ。夜間は室内を琥珀(こはく)色の間接照明で照らすようになっている。
がっしりしたボディー
スポーツタイプのシートに腰を沈めてドライビングポジションを調節し、シートベルトを締める。着座位置が高めなので、運転席からの視界はいい。エンジンの始動は、最近主流になりつつあるプッシュボタン式だ。
走りだして最初に感じるのは車体のしっかり感。サイドウインドーのラインが高めなこともあって、硬い殻に包まれたような感覚だ。試乗車は舗装路用のタイヤをはいていたが、足回りは比較的堅めで、路面のごつごつした感じを伝えてくる。ただし、ざらつきは少ないので、不快ではない。乗り心地は、未舗装路を走るハードな車というよりも、限りなく乗用車に近い。重心がやや高いので、急カーブでの車体の傾きは乗用車よりも大きめだ。一見大柄に見えるが、最小回転半径は5.3㍍と小さいので、街中でも小回りが利く。
1.8リットルのエンジンは最高出力139馬力を発揮するが、車重がやや重いので「軽快な加速」というほどの余裕はない。しかし、手動でギアを選べるパドルシフトを利用すれば、思いのほか活発な走りが楽しめる。パドルシフトは、指先の操作だけでギアチェンジができるレバー。最上級のGタイプに標準装備されている。レバーはメーカーによって、ステアリングコラムに固定されていて、常に水平の位置で操作するタイプと、ステアリングといっしょに回転するタイプがある。どちらが使いやすいかは慣れの問題なのだろうが、わたしは固定されているタイプが好きだ。RVRもこのタイプである。
価格が安い2WDを選ぶか、機動力に勝る4WDを選ぶかは悩ましいところだが、このタイプの車は最低地上高が高いので、2WDでも未舗装路や荒れ地で底を擦りにくく、意外に走破性が高い。日常走るのは舗装路だが、たまに林道に乗り入れるといった使い方なら、2WDでも十分だと思う。グレードが同じGタイプで比較すると、2WDと4WDの価格差は26万円である。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴35年。紀伊民報制作部長