新車試乗記

トヨタ パッソ 1・0プラスハナ

【スペック】

全長×全幅×全高=3650×1665×1535mm▽ホイールベース=2440mm▽車重=910kg▽駆動方式=FF▽エンジン=996cc水冷3気筒DOHC、51Kw(69馬力)/6000回転、92Nm(9.4kg)/3600回転▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=118万5000円(Cパッケージ)

【試乗車提供】

トヨタカローラ和歌山シーズ田辺店
(田辺市上の山1丁目12、0739・24・1190)

[2010年04月08日 UP]

 「プチトヨタ」の愛称で親しまれているトヨタのパッソは、小さい車体とゆとりの室内空間で人気のコンパクトカー。
この2月のフルモデルチェンジでは、商品企画の段階から女性スタッフの視点を取り入れたという。その結果誕生したのが、+Hana(プラスハナ)という新しいシリーズ。さて、どんな仕上がりなのだろうか。

控えめだけど人気車


 パッソは、トヨタとダイハツ工業の共同開発で、生産はダイハツが担当している。ダイハツの新型ブーンとは姉妹車に当たる。
 車体は、トヨタの主力車種であるヴイッツより一回り小さく、排気量は1リットルと1・3リットル。特に印象深い車ではないのだが、実はかなり売れている。昨年12月から今年1月にかけての新車販売ランキングではモデル末期にかかわらず上位に食い込み、モデルチェンジ後の売れ行きも好調だ。街中で扱いやすい大きさの車体と燃費の良さ、そして手ごろな価格が評価されているようだ。同様にモデル末期でも人気が衰えなかった車として、ホンダのフィットが挙げられる。ハイブリッド車ブームで販売トップの座をプリウスに譲っているものの、一般的なガソリン車でフィットは最も人気がある。
 パッソの商品企画に当たってトヨタは、女性スタッフを中心に「女性目線での車造りに取り組んだ」という。シリーズは二つに分かれていて、標準仕様のパッソは、気取らないシンプルなデザインの中に安心感と親しみやすさを併せ持つ車、プラスハナは、それにさりげない華やかさを加えている。

おしゃれなプラスハナ


 パッソを正面から見ると、丸目のヘッドランプやバンパー下の大きな開口部(ロアグリル)から親しみやすい印象を受ける。先代に引き続いて、タイヤを四隅に配置した安定感のあるスタイルが特徴だ。
 パッソとパッソ・プラスハナの一番大きな違いは内装。パッソの前席シートは、運転席と助手席が独立したセパレートタイプだが、プラスハナは一体感のあるベンチシート。内装の色づかいは、パッソがベージュ系の明るい色をベースにしているのに対して、プラスハナはチョコレート(濃い茶色)を基調にしている。
 エンジンは、1リットルモデルが3気筒DOHCで最高出力69馬力、1・3リットルは4気筒DOHCで95馬力を発生する。トランスミッションはCVT(無段自動変速)のみ。燃費は1リットルモデルがガソリン1リットル当たり22.5km(10・15モード)、1・3リットルモデルが21.0kmといずれも経済的。ベーシックグレードは車両本体価格100万円と、お値段も経済的だ。カラーバリエーションは全11色と、豊富に設定している。

小さくても滑らかな走り


 1~1・3リットルのコンパクトカーは、実用燃費と走りのバランスがいいことや、エコカー減税・補助金によるお買い得感が大きいこともあって、ハイブリッド車と並んで人気が高い。
 今回試乗したのは、新しく設定されたプラスハナの1リットル車。Cパッケージというベースグレードで、オプションのカーナビゲーションと布製のインテリアグッズを装着していた。塗装色はプラスハナだけに設定されているアズキマイカという濃い紫色だ。
 まず、運転席に座っての印象。ベンチシートは、狭い室内を最大限に生かすことができるので、スペース効率が重要な軽自動車に積極的に採用されているが、体重80㌔を超すリポーターにとっても、座面に余裕があってありがたい。ベンチシート採用の効果で、全幅1665mmというコンパクトな車体とは思えないほど車室の横幅が広く感じられる。助手席側への移動も楽なので、運転席側を壁に寄せて駐車したような場面でも、助手席から乗り降りできるので便利だ。
 内装の色やデザインは、落ち着いた中にも個性を主張している。スズキの軽自動車ラパンをはじめとして、女性好みの内装を採用する車が増えているが、プラスハナもその一つ。チョコレートカラーをベースにベージュを組み合わせており、とてもおしゃれだ。
 走りだしてまず感心したのは、路面のざらつきをよく吸収してくれるサスペンションの動き。最近、旧型ヴイッツ(1リットル)に何度か乗ったが、パッソのサスペンションはこれに比べて格段に滑らかである。パッソより格上の1・3~1・5リットルクラスでも、荒れた路面を走ると不快な感触が伝わってくる車があるが、パッソは快適だ。標準装着のタイヤは155/80/13のベーシックなタイプ。決して乗り心地に優れたタイヤではないだけに、このサスペンションは余計に価値がある。
 サスペンションの設定そのものが柔らかいので、急カーブを曲がるときの車体の傾きは大きめだが、山道をガンガン飛ばすような乗り方をする車ではないので不満はないだろう。その分、街中での快適な乗り心地を約束してくれる。ステアリングも軽く切れるので、腕力の弱い女性でも駐車場での切り返しや狭い路地を走るのが楽だと思う。
 パッソのもう一つの美点は、視界の良さ。ガラス面積が広く、フロントピラーの形状も視界をできるだけ妨げないよう工夫されているので、安心して運転できる。
 排気量が小さいのでエンジンに余裕はないが、街中を走るには十分の加速性能があり、燃費もかなり良さそうだ。試乗を開始した時に車載コンピューターの燃費計は1リットル当たり16・5kmを表示していたが、リポーターが国道42号やバイパス道路、市街地をしばらく走ったら16・9kmまで上がっていた。省エネ運転を心掛ければ、買い物や通勤など日常の使用でもさらにいい数値が期待できるだろう。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴35年。紀伊民報制作部長