エンジンは4リットルと2.7リットル
プラドは、硬派の4WDというよりも、「いかにも高級車」という面構えをしている。車高が高いので大きく見えるが、意外なことに全長は高級セダン・クラウンよりも110mm短い。
エンジンは、最高出力276馬力のV型6気筒4リットルと、最高出力163馬力の直列4気筒2.7リットルの2種類。V6エンジンは、吸・排気連続可変バルブタイミング機構の採用や圧縮比を高めることにより、高出力化と省燃費化を図った。使用ガソリンがプレミアムからレギュラーに変わったのも大きな変更点だ。
4輪駆動のメカニズムは、路面状況や走行状況に反応して前後輪に最適な駆動力を配分するフルタイム4WD。旋回時には、後輪により多くの駆動力を配分してコーナーをスムーズに回れるようにしたり、4輪のうちいずれかが空転したときには瞬時に他の車輪に駆動力を配分したりするようになっている。4輪を直結にするセンターデフのロックも、スイッチを押すだけで行える。
電子制御で優れた走破性
カタログには「マルチテレインセレクト」「クロールコントロール」「キネティック・ダイナミック・サスペンション(KDSS)」「AVS」などという聞き慣れない片仮名や略語が並ぶ。これらは、悪路を走り慣れていないドライバーでもぬかるみや岩場、凹凸の激しい路面を難なく走り抜けられるという強力な助っ人だ。今回の試乗では悪路を走っていないが、カタログや資料を読む限り、最先端の電子制御やメカニズムはすごい。
上級グレードの車種にメーカーオプションで設定されているマルチテレインセレクトは、「ぬかるみ・砂地」「凹凸の激しい路面」など、4つのモードから路面状況に適したものを選択すると、初心者にも分かりやすい操作アドバイスをディスプレーに表示。同時に、駆動輪のスリップ制御を路面状況に合わせて変化させる。
クロールコントロールは、マルチテレインセレクトとセットになっている装備。滑りやすい路面や凹凸の多い場所を走行する際に、ステアリング操作のみで極低速走行を続けることができる。アクセルとブレーキの操作は車任せ。電子制御でホイールスピンや車輪のロックを防いでくれるので、ドライバーが運転操作するよりも難所からの脱出能力が高い、という優れものだ。
サスペンションにもさまざまな機能が付加されている。悪路の走破性と舗装路での安定性という相反する性能を両立させる仕組みがKDSS。油圧でスタビライザー(姿勢安定化装置)を制御することで、舗装路では車体の横傾きを抑える一方、悪路では大きなホイールストロークを確保する。最上級グレードには、車高調整機能を備えた電子制御エアサスペンションを採用している。
市街地はゆったり静かに
試乗車のグレードは、4リットルエンジンを搭載した黒のTX。オプションで電動ムーンルーフやルーフレールなどを装備していた。初対面のプラドは、やはり大きく見える。「背が高いから大きく見えますが、実際にはそんなに大きくないですよ」とセールス担当者。運転席の位置が高いので、乗車はステップに足を掛けて「よいしょ」と乗り込むような感じだ。
運転席に座ると、小型のバスに乗っているような気分だ。シートは高級感があるファブリック(織物)、インパネも直線基調だが武骨なイメージはなく、高級車の仕上がりだ。
4リットルエンジンは滑らかで力強い。最高出力が276馬力もあるので、力不足のはずがない。アクセルを軽く踏むだけで、2トンを超える車体を軽々と加速させていく。
未舗装路や河原、荒れ地などを走るのがプラドには似合っているのかもしれないが、試乗はほとんど市街地の舗装路を走った。そうお断りしてプラドの乗り心地を表現すると「4WDのクラウン」という言葉がぴったりだ。「これが本当にオフロードを走るための車か」と思うほど快適だった。
荒れ地の凹凸を吸収するためにサスペンションはソフトな設定になっていて、上下に動く幅(ホイールストローク)も大きい。重心が高いことも加わって、舗装路で急カーブを回るときの車体の傾きも大きめだ。加速中も含めてエンジンの音はとても静かだった。オフロード用のごつごつしたタイヤを履いているにもかかわらず、室内に入ってくる走行音(ロードノイズ)は驚くほど少ない。
プラドの上級グレードには舗装路で車体の傾きを抑え、悪路では大きなホイールストロークを確保するシステムが採用されている(試乗車は未設定)。舗装路を主体に乗る人は、試乗などで必要かどうかを判断してほしい。
試乗車は3列シートを備えていて、乗車定員は7人。2列目シートまでは、乗用車の感覚でゆったりと乗ることができるが、3列目は足元が狭く、大人が乗るのはさすがに厳しい。また、3列目シートを使うと、荷室スペースも最小になるので、緊急用と割り切ったほうが良さそうだ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴34年。紀伊民報制作部長