新車試乗記

スズキ スプラッシュ

【スペック】

全長×全幅×全高=3715×1680×1590mm▽ホイールベース=2360mm▽車重=1050kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1242cc水冷4気筒DOHC、65Kw(88馬力)/5600回転、117Nm(11.9kg)/4400回転▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=123万9000円

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2009年09月10日 UP]

 スプラッシュは、スズキがハンガリーの子会社で生産し、日本に輸入・販売している自社ブランドの輸入車。欧州育ちのきびきびした走りが持ち味だ。デビューは2008年10月。同じく欧州で人気のスイフトがスポーティーな仕様であるのに対して、室内を広くして、ファミリー向けに仕上げている。

背を高くして室内に余裕


 スプラッシュの車種構成は、車両本体価格123万9000円の1グレードだけとシンプルだ。エンジンはスイフトと同じ1.2リットルで、最高出力は88馬力。低速の力強さを出すため、スイフトよりもやや低回転型としている。トランスミッションはCVT(自動無段変速機)のみだ。
 車体の大きさをスイフトと比べると、幅が10mm狭く、全長は40mm短いが、車高は80mm高い。ワゴンRやMRワゴンといった軽ワゴン車と乗用車の中間といったイメージだ。車高を高くすることで広い室内空間を確保しており、身長174cmのリポーターが運転席に座ると、頭上に握りこぶし2つ分の空間ができる。スイフトは、リポーターが運転ポジションを合わせると後部座席の足元がかなりきゅうくつだったが、スプラッシュは余裕がある。
 背は高めであるものの、車輪を四隅に配置しているので、外観は安定感がある。特にリアエンドのスパッと切り落としたようなデザインと、リアフェンダーの力強い張り出しは印象的。車体の色は6色で、内装色は3種類。試乗車はコスミックブラックパールという黒い塗装色で、シートとドアの一部には青緑色のアクセントが付いていた。
 メーター周りはシンプルだ。正面に白地の大きなスピードメーターがあり、その下部のディスプレーに時刻や外気温、平均燃費といった走行情報が表示される。エンジン回転数の表示(タコメーター)はない。

スポーツモードで活発な走り


 試乗車に乗って最初にするのは、シートの位置合わせとルームミラーの調節。スプラッシュのシートは国産車に比べるとかなり堅めで、体の沈み込みが少ない。ヨーロッパではこういったタイプが多いらしい。車高が高いのでシート位置も高めになり、運転席からの視界は広々としている。シートをあまり寝かせない、体を起こし気味の運転姿勢になる。
 走りだして車が左右に揺れた時に「おやっ」と思った。車格が違いすぎるので比べるのはどうかとも思うが、一度だけ運転したことがあるベンツEクラスが頭に浮かんだ。「ベンツの足回りも、左右にこんな揺れ方をしたな」。欧州からの輸入車というイメージがあったからなのか、ほんの一瞬の出来事である。
 CVTは変速ショックがないので、滑らかに加速していく。ギアが切り替わる一般的なAT(自動変速機)の小気味よさも捨て難いが、燃費性能や上り坂での快適性を考えると、小排気量の車はCVTの方が相性がいいと思う。
 スズキが「欧州で徹底した走り込みを行い、エンジン、車体、足回り、シートなどを開発した」と説明しているだけあって、走りは軽快だ。全長が4mを切るサイズの車は、狭い街中でも扱いやすい。スプラッシュは、小さな車体にもかかわらず径の大きな15インチタイヤをはいているので、乗り心地もいい。このタイヤは、欧州の乗用車用タイヤでトップシェアのコンチネンタル社がスプラッシュ専用に開発したものだという。
 CVTのD(ドライブ)レンジは燃費重視のようで、普段は滑らかで落ち着いた走りを提供してくれるが、活発に走りたい時には、シフトレバーを横に倒してS(スポーツ)レンジに入れよう。エンジン回転が高く保たれ、Dレンジとはまったく別の力強い走りが楽しめる。着座位置が高いにもかかわらず、急カーブでも不安定になることもない。

安全装備が充実


 スプラッシュが国産のコンパクトカーとひと味違うのは安全装備。正面衝突に備えた運転席・助手席のSRSエアバッグはもちろん、横方向から衝突されたときに乗員を守るフロントシートSRSサイドエアバッグ(左右)とSRSカーテンエアバッグ(左右)を標準装備している。国産コンパクトカーのほとんどはサイドエアバッグ、カーテンエアバッグは注文装備になる。
 また、後部座席には、3人分の3点式シートベルトとヘッドレストを装備している。これも国産車だと、後席中央の座席は2点式シートベルトしかない車が多い。このあたりは「欧州からの輸入車ならでは」と言えそうだ。
 使い勝手も面では、荷室スペースの下にあるラゲッジアンダーボックスが便利。容量が36㍑あり、深さも十分なので、洗車道具などを上手に収納できる。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴34年。紀伊民報制作部長