新車試乗記

マツダ アクセラスポーツ20S

【スペック】

全長×全幅×全高=4490×1755×1465mm▽ホイールベース=2640mm▽車重=1340kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1998cc水冷4気筒DOHC、110Kw(150馬力)/6200回転、186Nm(19.0kg)/4500回転▽トランスミッション=5AT▽車両本体価格=222万9250円

【試乗車提供】

アンフィニ和歌山田辺営業所
(田辺市新庄町2157、0739・22・8535)

[2009年07月09日 UP]

 6月にフルモデルチェンジした、マツダのアクセラに試乗した。アクセラは2003年の発売以来全世界で200万台を販売。同社の全販売台数の3分の1を占めるという世界戦略車種だ。新型アクセラの特徴は、信号待ちのときにエンジンを止めるアイドリング停止機構を採用したこと。また、ヨーロッパ市場などで高く評価されている走りにも一段と磨きがかかった。

ボディーは2種類


 アクセラのボディータイプは5ドアハッチバック(ステーションワゴン)の「アクセラスポーツ」と、4ドアの「アクセラセダン」の二つ。エンジンは自然吸気エンジンが1.5リットルと2リットルの2種類。スポーツ走行を望むユーザーのために2.3リットルターボエンジン(最高出力264馬力、最大トルク38.7km)と6速手動ミッションを組み合わせた「マツダスピードアクセラ」も用意されている。
 ハッチバックは全長4490mm、全幅1755mm、全高1465mmで、トヨタのハイブリッド車プリウス(4460×1745×1490mm)とほぼ同じサイズ。セダンは全長がハッチバックより90mm長い。
 省エネ時代に合わせて、環境性能を大幅に向上させた。1.5リットルエンジン(最高出力111馬力)は、CVT(自動無段変速機)と組み合わせることで、ガソリン1リットル当たり18.4km(10・15モード)と、クラストップレベルの燃費を実現した。また、2リットルエンジン(150馬力)には同社独自のアイドリング停止機構「i-stop」を採用し、従来車に比べて15%も燃費を改善。ガソリン1リットル当たり16.4kmの低燃費を実現した。
 外観は、フランスのプジョーなど、ヨーロッパ車に通じる立体的なデザイン。特に、フロントのデザインは個性的だ。

静粛性も向上


 アクセラが売り物にしているのは「走りの楽しさ」。特にアクセラスポーツは、排気量が大きい5ドアハッチバックであることから、フォルクスワーゲンの「ゴルフ」やトヨタの「オーリス」と比較されることが多い。車体の全長はアクセラが200mm余り長い。
 試乗車は「アクセラスポーツ」のうち、「i-stop」を備えた2リットルの20S。オプションの17インチアルミホイールをはいていた。
 乗り込んで最初に気が付くのは、運転席の着座位置が低めで、スポーティーな運転ポジションがとれるということ。シートは座面と背もたれの左右が盛り上がっているスポーツタイプで、カーブで体をしっかり支えてくれる。ステアリングには、オーディオを操作するつまみやマルチインフォメーションディスプレーの切り替えスイッチ、ギアを切り替えるパドルシフトなどが装備されている。インテリアは黒を基調にしたシンプルなデザインだ。
 走りだしてまず実感するのが静粛性の高さ。5ドアハッチバックはセダンに比べて車内に騒音が入りやすいが、アクセラは静かな車だ。マツダによると、サスペンションやボディーの剛性を高めて路面から伝わる振動や騒音を抑制したり、車体の要所要所に制振材や遮音・吸音材を使ったりしているという。また、エンジンから伝わる不快なこもり音や風切り音も低減している。その効果は、一般道を40~50kmで走っていても実感できる。
 足回りは堅めで、よく引き締められている。リポーターは堅めのサスペンションが好みなので、気持ちよく運転できた。試乗車は17インチのアルミホイールに205/50という扁平(へんぺい)タイヤをはいていたが、路面の小さな振動を拾うこともなく、滑らかな走りを提供してくれた。
 ステアリングは低速では重めだが、走りだしてしまえば気にならないレベル。バイパス道路を法定速度で走っていてもどっしりとした安定感があるので、高速道路での直進性も良さそうだ。
 普段は試乗でカーブが続く道路はあまり通らないのだが、せっかくのスポーティー車なので、ちょっとだけ活発に走ってみた。
 このサイズの車体に150馬力のエンジンは、十分にパワフル。ステアリングから手を放さずに、自在に変速できるパドルシフトは便利だ。足回りが堅いので、カーブでのロール(車体の傾き)は少なく、急カーブでも素直に回り込んでいく。

瞬時に再始動


 マツダ独自のアイドリング停止機構「i-stop」は、ブレーキを踏んで停車するとエンジンが自動的に停止し、ブレーキを放すと瞬時に再始動する。再始動にはセルモーターを使うのではなく、エンジン内にガソリンを直接噴射して燃焼させる仕組みという。
 アイドリング停止にはいろいろな条件がある。例えば、交差点で右折するためにステアリングを切った状態で一時停止しているときには、素早く走りださなければいけないのでエンジンは停止しない。混雑した道でのろのろ運転が続くときも、コンピューターが「エンジンを止めるべきではない」と判断するので、ぎくしゃくした動きにならずに済む。
 試乗車は、信号待ちで停止状態になると、1、2秒でエンジンが止まり、ブレーキから足を放した瞬間にプルッとわずかにエンジンが震えて再始動する。この間、わずか0.35秒という。エンジンが止まっている間もエアコンは作動していた。コンピューターが、エンジンの暖まり具合やバッテリーの状態、室内温度、ステアリングの切り角、坂道の傾斜などによってエンジンを停止させるか、動いたままにするかを制御する。これがどうしてもいやな人は、ボタン一つでアイドリング停止機構を解除することもできる。
 マツダのCMでは、市街地では走行時間の半分近くがアイドリング状態になっているというが、実際にどれぐらい停止しているのかを表示してくれるのがマルチインフォメーションディスプレー。上段には、走行時間内にどれぐらいエンジンが停止しているかを表示。下段には、メーカー出荷から現在までの「i-stop」の動作時間を表示する。ちなみに、今回の試乗では、実質35分ほどの走行時間のうち、7分あまりが信号待ちの停止時間だった。渋滞がなく、信号が少ない田舎でこうだから、都市部では「i-stop」が燃料節約にかなり貢献するだろう。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴34年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。