新車試乗記

トヨタ ウィッシュ1.8S

【スペック】

全長×全幅×全高=4590×1720×1590mm▽ホイールベース=2750mm▽車重=1360kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1797cc水冷4気筒DOHC、106Kw(144馬力)/6400回転、176Nm(17.9kg)/4400回転▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=209万円

【試乗車提供】

ネッツトヨタ和歌山・田辺店
(田辺市新庄町1895、0739・22・4979)

[2009年05月14日 UP]

 ウィッシュは、スポーティーでコンパクトな車体に7人が乗れるミニバン。
 2003年の発売以来、55万台が販売された人気車だ。今年4月のフルモデルチェンジで、出力が高い新エンジンが搭載され、安全装備の充実も図られた。

新エンジンを搭載


 ウィッシュの車体は、街中で使い勝手がいい5ナンバーサイズが基本。ベース車両は1.8リットル、2.0リットルとも全長4590mm、全幅1695mm、全高1590mmだ。上級グレードは車体の幅がやや広い設計となっている。今回のフルモデルチェンジでは、全長が30mm延長されたが、全高や全幅、ホイールベース(車軸間距離)などは前モデルと同じだ。
 ウィッシュの最大の特徴は、全高が低めでスポーティーな車体にもかかわらず3列シートを備え、大人7人の乗車を可能にしたこと。同様のコンセプトでライバルになるのはホンダのストリームだ。
 エンジンは、1.8リットル、2.0リットルとも一新され、出力の向上と燃費性能の改善が図られた。特に1.8リットルは、最高出力が132馬力から144馬力へと、12馬力もアップ。10・15モード燃費は、1リットル当たり14.4kmから16.0kmに向上した。
 トランスミッションは全車CVT(無段自動変速)を採用している。滑らかな加速が特徴で、さらにマニュアルミッション感覚のシフト操作ができるスポーツシーケンシャルシフトマチックも備えている。シフトレバーや、ステアリング奥のパドル(1.8S、2.0Z)を操作すると、7速マニュアルのようにシフトダウン、シフトアップができる。また1.8Sは、スイッチ操作一つでエンジン回転を高めに維持してスポーティーな走りが楽しめるCVTスポーツモード、2.0Zはトラクションコントロール(タイヤの空転防止装置)やステアリングの重さなども同時に制御するダイナミックスポーツモードを装備している。

大人7人が乗れる


 新型ウィッシュの外観は、先代のイメージを引き継ぎながら、一段と精悍(せいかん)になった。ネッツトヨタ和歌山・田辺店で試乗車を借り、すぐに国道42号田辺バイパスに向かった。
 田辺市新庄町の田鶴交差点から田辺バイパスへの合流は緩やかな上り坂。発進加速を確かめるにはちょうどいい場所だ。新しい1.8リットルエンジンは、予想以上に活発だった。オーリスなどに搭載する1.8リットルエンジン(136馬力)をさらに進化させ、吸気バルブの制御を行う機構を採用したもので、1360kgの重い車体を軽々と加速させていく。CVTの設定も、発進加速でエンジン回転を高めにする設定のようだ。定員乗車では出力に余裕がある2.0リットルの方がいいのかもしれないが、日常の使用ではこの1.8リットルの動力性能で十分という印象だ。
 ミニバンという性格上、乗り心地はソフトだ。ステアリングを切った時の反応もゆったりしている。しかし、決して動きが鈍いということではなく、急カーブでもイメージしたラインを素直に走ってくれる。
 試乗車が装備していたパドルシフトはとても便利だ。例えば、緩やかな下り坂を時速60kmで走っていて少し強めにエンジンブレーキを利かせたい時には、ミッションをD(ドライブモード)に入れたまま、ステアリングを握った左手の指先でパドルをちょっと引けばいい。瞬時にDからマニュアルモードに切り替わってシフトダウンし、スムーズにエンジンブレーキがかかる。
 こういった走行性能もさることながらミニバンで大切なことは、額面通りに大人6~7人が乗れるのかどうか。3列目シートのスペースや座り心地はどうなのだろうか。結論から先に言えば「譲り合いの気持ち」があれば、3列目にもそこそこの体格の男性が座れる。まずは運転席のポジションを決める。リポーターは身長174cm、体重82kg。運転ポジション(シート調節)は前気味である。運転席を合わせてから、後部座席に乗り移った。スライド式のシートを、運転席の背もたれにひざがつかえないぎりぎりのところに調節する。最後に3列目に乗り込む。足元に余裕はないが、ひざを横に向けるような不自然な姿勢を強いられることなく座ることができた。つま先を2列目シートの下に入れることができればもっと楽なのだが、ぜいたくは言えない。
 頭上の余裕は、運転席ではこぶし2個分、2列目では1個分、3列目では半個分だ。天井が高い箱形のミニバンに比べれば3列目はさすがに余裕がないが、スポーティーなミニバンとしては合格点だと思う。

車両制御システムを標準装備


 ウィッシュで感心したのは、安全装備として全車にS-VSC(ステアリング協調車両安定制御システム)を標準装備した点だ。このシステムは、ぬれた路面や雪道のカーブなどで車が横滑りした時に、車がブレーキやアクセルを自動制御してスピンを防いでくれる。雪道でもスタッドレスタイヤさえはいていれば、土の道を走るぐらいの感覚で運転することができる。
 また、万一駆動輪が片方脱輪したり、ぬかるみにはまったりした時も脱出が容易だ。脱輪した側のタイヤは普通、アクセルを踏むと空転してしまうが、S-VSC装着車は空転を防止し、何事もなかったようにすっと車を動かすことができる。これまで、一部の上級車種を除いてオプション設定だったが、安全性の面で標準装備する車が増えるのは朗報だ。
 ウィッシュは、3列目のシートを倒すと大きな荷室スペースを確保することができる。背もたれの後ろにあるフックを引くと、ワンタッチで座面が沈み込んでシートが前方に倒れ、完全に平らな荷室スペースが出現する。大型スーツケース4個を乗せることが可能というから、荷物をたっぷり積んで旅行するといった時にも便利だ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴34年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。