新車試乗記

日産自動車 キューブ15X Vセレクション

【スペック】

全長×全幅×全高=3890×1695×1650mm▽ホイールベース=2530mm▽車重=1180kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1498cc水冷4気筒DOHC、80Kw(109PS)/6000回転、148Nm(15.1kg)/4400回転▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=170万1000円

【試乗車提供】

日産プリンス和歌山販売田辺店
(田辺市上の山1丁目8の16、0739・22・8132)

[2009年04月09日 UP]

 サングラスをかけたブルドックをイメージしたという個性的なデザインの日産キューブ。背が高くて四角い形をしているので、全長4mを切るコンパクトな車体にもかかわらず、室内はとても広い。

大きく見えるがコンパクト


 3代目になる新型キューブの発売は昨年11月。キューブはこれまで国内専用モデルだったが、フルモデルチェンジに合わせて今春から北米での販売が始まった。秋にはヨーロッパでも発売される予定だ。
 キューブの売り物は何と言っても、その個性的なデザイン。2代目で採用された左右非対称のバックドアは、3代目にも引き継がれた。
 正面から見た顔つきは、何とも愛嬌(あいきょう)がある。CMやカタログにサングラスをかけたブルドックが登場するが、車ができた後で決めたキャラクターではなく、デザイナーは最初からブルドックをイメージしていたらしい。テールライトの張り出しも何となく動物の尻のようであるし、窓ガラスの角も大きなアーチを描いていて愛らしい。
 室内のデザインも個性的だ。室内空間のデザインイメージはジェットバス(気泡風呂)。インストルメントパネルは大きく波を打つような曲線で構成されていて、リラックスできる雰囲気を演出している。
 外観は四角いので大きな車に見えるが、実はコンパクトだ。3890mmの全長は、ホンダのベストセラーカー「フィット」とほぼ同じ。幅も1695mmで、5ナンバーサイズ収まっている。
 エンジンは、ノートなどにも採用しているオールアルミの1.5リットルで、最高出力109馬力。無段変速のCVTが組み合わされる。10・15モード燃費は1リットル当たり19.2kmと優秀だ。

広い室内、ゆったりシート


 キューブに乗り込んでまず感じるのは、室内がとても広いこと。天井が高いので頭上がゆったりしているのに加えて、横幅もサイズ以上に広く感じる。旧型に比べてホイールベース(前輪と後輪の車軸間距離)が100mm延びたので、後席足元の空間も十分だ。また、後部座席の座面が前席より少し高いので、4人乗車で後席に座ることになっても、前方が見やすくて圧迫感がない。
 シートはたっぷりと厚みがあって、座り心地はソフト。最近では軽自動車でもダイハツのコンテのようにゆったりしたシートを採用する車が出てきている。シートとステアリングは常に体に触れている場所なので、試乗の際に感触をしっかりチェックしたい。
 乗り心地は、ユーモラスな外観やリラックスした雰囲気の内装とマッチしてソフトだ。荒れた路面からのいやな振動も上手にいなしてくれる。一般道を交通の流れに合わせて走っている限り室内に入ってくる騒音も少なく、このクラスの車としては静かである。
 キューブに採用されている1.5リットルエンジンは、リポーターのお気に入りエンジンの一つだ。低速から十分に力があるのはもちろん、意識的にアクセルを強めに踏んだ際の反応が素早く、吹き上がりもスムーズだ。これは、CVTのセッティングも関係しているが、活発に走りたいときや追い越しをかけるときには、エンジンが気持ち良く反応してくれる。

上級車から乗り換えも


 これだけ個性的なキューブを愛車にするのは、どのようなドライバーなのだろうか。試乗車を提供してくれた日産プリンス和歌山販売田辺店に聞いてみた。若い人向けの車かと思っていたが、どうもそうではないらしい。
 「若い方から年配の方までボーダーレスです。2リットルクラスの上級車から乗り換える方もいらっしゃいます」と同店。特に、デザインや室内の広さ、シートの座り心地などが評価されているという。車はかつて、買い替えるたびに上級車に移っていくのが当たり前だったが、最近では燃費性能や市街地での使い勝手も考えて、大きい車からコンパクトカーに乗り換えるドライバーも多いようだ。
 ボディーカラーは、クラフトダンボール(薄い茶色)やオーガニックオリーブ(緑)、アッシュブルー(淡い青)など個性的な色をはじめとした10色。内装は、オプションを含めて4種類が用意されている。試乗車は、フェザーグレーという明るい内装色。しっとりとした雰囲気が印象的だった。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴34年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。