全長4.2mで3列シート
フリードは、いかにもミニバンらしい存在感のある外観をしている。全長は4215mmとコンパクト。フォルクスワーゲンの「ゴルフ」やトヨタの「オーリス」といった5ドアハッチバックとほぼ同じなのに、3列のシートに大人が快適に乗れる室内スペースを確保している。
バリエーションは、2列目に左右独立のキャプテンシートを採用した7人乗りと、2列目がベンチシートの8人乗り、それに大きな荷室スペースが売りものの5人乗り(2列シート)の3タイプ。
8人乗りは、3列目シートに乗り降りする時に6対4分割の2列目シートをはね上げる必要がある。これに対して7人乗りは、キャプテンシートの間を通り抜けられるので、左右どちらのドアから乗り込んでも、3列目シートに自由に乗り降りができる。小さい子どもが2人いるので、2列目シートにチャイルドシートを常時2つ取り付けたいといった場合には、7人乗りの方が使い勝手がいいだろう。
5人乗りタイプは、乗車定員が少ない見返りに、荷室スペースは広大。キャンプやマリンスポーツなど、荷物が多いレジャーで利用するには魅力的だ。
エンジンは、フィットRSにも積んでいる1.5Lのi-VTECエンジン。車重が重いミニバン用のチューニングが施してあり、最高出力は2馬力、最大トルクは0.1kg低く抑えている。燃費は、ガソリン1リットル当たり16.4km(10・15モード)と良好だ。
軽ワゴンのような取り回し
前回、トヨタの最上級ミニバン「ヴェルファイア」(2.4L)に試乗したので、どうしても両車を比較してしまう。といっても、クラスがまったく違うので、あくまでも、ミニバンをどのような場面で使うのかという視点での比較だ。
ヴェルファイアは例えて言うなら「動く応接室」。車体が大きいので室内は広いし、内装も豪華。走行中の車内も静かだ。家族やグループでの外出や旅行といった場面ではとても満足感が高いだろう。一方で、日常生活の足として使うには、大きな車体を持て余し気味になりそう。スーパーの駐車場に入れるにも、慣れるまでは苦労しそうだ。
フリードは、コンパクトで取り回しのいいサイズが持ち味。運転した時の感覚は、スズキのワゴンRやダイハツのムーヴといった軽ワゴンを思わせる。視界がいいので、軽自動車から乗り換えても、短時間で車幅の感覚がつかめそうだ。最小回転半径も5.2mと、ミニバンとしては小さいので、狭い場所での切り返しやUターンで小回りが利く。
普段は買い物や通勤に利用し、休日には家族や友だちと遊びに行くといった使い方に向いているだろう。
走行性能はどうだろうか。フィットRSで力強い走りを提供してくれた1.5Lエンジンは、車重が200kgも重いフリードをスムーズに加速させる。ただし、軽快感はフィットの方が数段上手だ。
乗り心地はソフトだが、車自体の重心を低くする設計なので、カーブでも不安感はない。室内に入ってくる騒音も1.5Lクラスとしては静かだ。
3列目にも大人が乗れる
フリードで最も興味があるのが、3列目のシートに大人がきちんと乗れるかどうかだ。試してみた。リポーターは身長174cm、体重81kgのメタボサイズ。フロントシートを運転しやすいポジションに合わせて、2列目シートに乗車。ひざ元に余裕を持たせるよう調節してさらに3列目に座ると、ひざが2列目シートの背に当たってしまう。そこで、2列目シートをやや前に出して3列目に座り直すと--。ひざがつかえずにきちんと座れた。長距離ドライブにはちょっと狭いが、ともすると子ども専用になりがちな3列目シートが大人でも実用になるのは立派だ。
後部座席に乗車して、前方が見えないのは結構なストレスになる。フリードのシートは、後ろに行くほど着座位置が高くなるレイアウトを採用しているので、2列目、3列目に座っても前が見えて安心だ。
低床設計で路面から床までの高さが低いので、子どもや高齢者も乗り降りしやすそうだ。また、床面がフラットなので、車内での移動もしやすい。薄型燃料タンクの配置や床下構造の工夫で低くフラットなフロアを実現したのだという。
3列目シートは、簡単な操作で左右に跳ね上げることができる。キャプテンシート採用の7人乗りなら、2列目シートのアレンジなしに27インチの自転車を積むことができる。「雨が降ってきたので、自転車で外出した子どもを迎えに行こう」といった時に便利だ。
5人乗り、7人乗り、8人乗りのどのタイプを選ぶかは悩むところ。車室の広さや使い勝手を含めて、展示車をチェックしたり試乗したりすることをお薦めする。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴33年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。