国内ユーザーに特化
新型クラウンは、乗り心地を重視した「ロイヤル」と、スポーティーな味付けの「アスリート」の2シリーズが設定されている。5月には、3.5L(リットル)ガソリンエンジンと高出力モーターを組み合わせたハイブリッドが発売される。
車体は12代目と比べて全長で30mm、全幅で15mm大きくなっている。それでも全幅は1800mm以内に収まっているので、最近の高級車としてはそう大きな方ではない。
トヨタはレクサスブランドの高級車を海外で積極的に販売しているが、クラウンはトヨタブランドの国内専用車。このため、国内ユーザーに照準を合わせてデザインや乗り心地、操縦性などを煮詰めている。
外観は、先代のゼロ・クラウンのイメージを引き継ぎながら、彫りの深い躍動感あふれたデザインになっている。内装は、メーター回りを横長、運転席と助手席を仕切るセンタークラスターを縦方向の流れを強調したデザインにすることで開放感を演出したという。このクラスになると「さすがに高級車」という仕上げである。
安全装備には、最先端の技術が注ぎ込まれている。衝突の危険をドライバーに知らせるとともに自動的にブレーキが作動して衝撃を和らげる機能(オプション)や、ナビゲーションシステムと連動して一時停止の場所に差し掛かると音声で案内したりする機能などが採用されている。エアバッグは、後席用も含めて合計10個も装備している。
エンジンは、ロイヤルがV型6気筒の3L(256馬力)と2.5L(215馬力)、アスリートは3.5L(315馬力)と2.5Lを搭載している。
ハイブリッドは、専用にチューニングした3.5Lエンジン(296馬力)と147KW(200馬力)を発生する高出力モーターを組み合わせる。システムとして発揮できる最高出力は345馬力。燃費性能は、アスリート3.5がガソリン1リットル当たり10.0km(10・15モード)であるのに対して、ハイブリッドは15.8kmと5割以上優れている。トヨタは「V型8気筒4.5Lエンジンに匹敵する動力性能と、2Lエンジン相当の低燃費を実現した」と説明している。
何もかもが滑らか
試乗車は黒いボディーカラーの3.5アスリートGパッケージ。ロイヤル、アスリート、両シリーズを通じて最上級グレードになる。高級車というよりもスポーツカーのような精かんなスタイルだ。シートは本革で、前後調節やリクライニング、高さ調節はすべて電動。運転ポジションの微調整がしやすい。
プッシュ式の始動ボタンを押してエンジンをかけ、ゆっくりとアクセルを踏んだ。走り出すと、乗り心地からステアリングの操作まで、何もかもがソフトで滑らかなことを実感する。遮音が徹底しているので、タイヤと路面が擦れて出るロードノイズがほとんど気にならないし、路面がざらついた場所でも快適な乗り心地は変わらない。室内に入ってくるエンジン音も小さく、ずっと遠くでエンジンが回っているような響き方だ。
アスリートは、きびきびとした俊敏な走りを追求したモデル、ロイヤルは快適性を追求したモデルというが、アスリートでも足回りの堅さが気になることはなかった。225/45R18という大径の超扁平(へんぺい)タイヤを履いているが、乗り心地は快適そのものだ。乗り心地がいいのに、操縦性は犠牲になっていない。急カーブでステアリングを大きく切り込むといった場面では、大きめの車体にもかかわらず素直に回り込んでいく。
試乗車は操縦安定性を高めるために(1)エンジン、ブレーキ、ステアリングを統合制御するVDIM(2)速度によってステアリングの切れ角が変化するギア可変ステアリング(3)ナビと連動して、カーブに差し掛かる前にサスペンションの堅さを調節する機能--などハイテク機能を装備しているが、それ以前に基本性能の高さを実感した。
3.5Lのエンジンは、ゆったり走っている時には紳士的だが、ひとたびアクセルを強く踏み込むと強力なパワーを発揮する。大排気量だけあって低い回転から力強く、2000回転を超えたところから弾き出されるような加速が得られる。カタログデータを見ると、2000回転から6500回転までの広い回転域で最大トルクの90%を発揮するようになっており、運転した実感と一致する。
加速中でも室内に入ってくるエンジン音は小さいので、スピードメーターをしっかり見ていないとすぐに法定速度を超えてしまうだろう。
世界初の居眠り検知
最近の車はハイテク技術の固まりだ。クラウンのような高級車には、コンピューターやマイコンと呼ばれるものが1台当たり70個も搭載されているという。
世界初というドライバーモニター付きプリクラッシュセーフティーシステムは、オプション設定で66万1500円。プリクラッシュセーフティーシステムは、前走車や路上障害物、対向車などをミリ波レーダーで検知し、衝突を予知した場合には警報を出し、それでもドライバーがブレーキを操作しない場合には、速度を落とすためのブレーキが自動的に作動する。
新たに加わったドライバーモニターは、ステアリングコラムに搭載したカメラが運転者の顔の向きや目の開き具合を測定。衝突の危険がある時に目を閉じている状態が一定時間以上続くと、通常より早いタイミングで警報音を鳴らし、それでもドライバーの状態が改善しない時には危険を知らせる警報ブレーキをかける。
試乗車は、カーナビゲーションと連動した運転支援システムも装備している。高速道路の合流・退出がスムーズにできるようギアチェンジを制御したり、東京23区や大阪市内などで交差点の一時停止情報を案内したりといった具合だ。ステアリング操作とソナーを連動させて、路地など狭い場所で障害物にぶつかることが予想される場合に警告音を出す機能もオプション設定されている。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴33年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。