彫りの深いフロントマスク
イストは、トヨタのベストセラーカー「ヴィッツ」の車台をベースに開発されたコンパクトカー。これまで1.3Lと1.5Lのエンジンを積んでいたが、新型イストは1.3Lがなくなり、代わりに1.8Lが追加された。
1.5Lエンジンは最高出力109馬力で、CVT(自動無段変速機)と組み合わされる。1.8Lは132馬力を発生。4速AT(自動変速機)との組み合わせだ。
モデルチェンジで、スタイルは一段と個性的になった。踏ん張るような台形の車体に大きく張り出した前後のフェンダー、彫りの深いフロントのデザインが力強さを演出している。
全長はホンダのフィットやマツダのデミオと同様に4mを切るが、車幅はイストだけが1725mmと、5ナンバー枠(1700mm)を超える。1525mmの車高はフィットとまったく同じである。
外観と同様、内装も斬新だ。運転席正面の大型メーターは、左3分の2が速度計、右3分の1が回転計。空調の操作スイッチも、円形を基本にした個性的なデザインである。
力強い1.8Lエンジン
試乗車は、1.8Lのエンジンを積んだ180G。1.8Lは1グレード、1.5Lは装備の違いによって150Gと150Xの2グレードと、車種構成はシンプルだ。
イストの1.8Lエンジンはオーリスと同形式の2ZR-FE。トヨタの中排気量エンジンでは過去に1.6Lの4A-GEUや2Lの3S-GEといった名エンジンがあるが、この1.8Lのエンジンもかなり良くできている。
アイドリングの状態では、エンジンが回っているのかどうか分からないほど振動が少ない。低速のトルクが大きいので市街地で走りやすく、追い越しなどいざという時には高回転までスムーズに吹き上がる。おまけに、燃費もいい。最高許容回転が6400回転と低めなのが弱点だが、一般道でレッドゾーンまで回すことはまずないだろう。
変速機は、オーリスのCVTに対してイストは4速AT。エンジンが同形式なのに、変速機の違いで加速感はずいぶん異なる。
CVTのオーリスは、低速トルクの大きさを生かせる2000~3000回転を保ちながら、押し出すような感じで加速していく。一方、4速ATのイストは、エンジン回転の上昇に合わせてスピードが上がっていくので、回転数でかせぐという感覚だ。
オーリスのCVTは無段変速なので変速ショックが少なくて当たり前だが、イストの4速ATもスムーズだ。静かに加速した時のシフトアップのタイミングは早めで、1速から2速への変速は、よほど意識していないと気がつかないほど滑らかだ。コンパクトな車体に130馬力を超えるエンジンを積んでいるので、アクセルを強く踏めば十分過ぎるほどの加速をする。
運転席の位置はやや高めで、SUVの感覚に近い。車幅は広いが全長が短いので、コンパクトカーとしての軽快感は損なわれていない。ただし、16インチという大きなタイヤをはくためにハンドルの切れ角が少なく、最小回転半径は5.5mと大きい。駐車場での切り返しなどで、小回りがきかないと感じることがあった。
安全装備を充実
新型イストは、車の横から衝突された場合に乗員の胸や頭への衝撃を緩和するSRSサイドエアバッグとカーテンシールドエアバッグを全車に標準装備。後方から衝突された際にヘッドレストが前方に移動して首への衝撃を緩和するアクティブヘッドレストを運転席と助手席に備えている。
滑りやすい路面で車両の横滑りをセンサーが感知し、ブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールしてスピンを防ぐVSCと、発進.加速時にタイヤの空転を防ぐTRCは、180Gにセットでオプション。1.5Lには設定がない。
室内は割合に広い。身長174cmのリポーターが運転席を調節して、そのまま後ろに座っても、膝の前に少し余裕ができる。後部座席はスライドやリクライニング、前倒しの機構を備えているので、乗車人数や荷室の使い方に合わせてアレンジできる。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。