1リットルで24kmの低燃費
新型フィットは、優れたパッケージングや低燃費、フロントピラーが前方に配置された独特のスタイルを継承している。車にあまり興味がない人でも、旧モデルを知っていれば一目でフィットだと分かるはずだ。
全長は初代より55mm長い3900mm(1.5リットルは3920mm)、全幅は20mm広い1695mmになった。ライバルのマツダ・デミオと比べると、全幅はまったく同じ、全長は15mmだけ長い。
エンジンは1.3L(リットル)と1.5Lの2種類。旧モデルの1.3Lエンジンは最高出力86馬力だったが、新エンジンは100馬力と、14馬力もパワーアップした。一方で、フィットの優れた点である燃費は、CVT(自動無段変速機)搭載モデルで1リットル当たり最高24km(10・15モード)を実現している。1.5Lは、110馬力から120馬力へと、10馬力の向上。高出力エンジンにもかかわらず、燃費は19.6kmと優秀だ。
開放感たっぷりの室内
フィットはわが社でも人気で、5人が愛車にしている。新型フィットの試乗を前に、そのうちの1台を運転させてもらい、新旧を比較した。旧型のフィットは1.3LのCVT搭載車で、今春の登録。オーナーは、年内のフルモデルチェンジを承知で購入した。フィットに決めた理由は、やはり燃費がいいためだという。何人かに聞いたところ、市街地で1リットル当たり14~18km、国道を交通の流れに乗って走ると20kmを超えることもあるという。実用燃費では軽自動車を上回るほどの数字だ。
新旧のフィットに共通するのは、視界の良さだ。運転席から見ると、前方や左右の死角が少ない。特に新型は、フロントピラーが旧型よりも前に出ているので開放感たっぷりだ。また、ピラーの幅が20mmも細くなったので、カーブや曲がり角で運転のじゃまにならない。
室内は広くなった。もともとフィットは、ガソリンタンクを運転席の下に配置するという斬新な設計で、小型車としてトップクラスの広い室内を実現していた。新型は、助手席に人を乗せても窮屈な感じがしないし、後部座席も広々としている。ホンダの広報資料によると、中型セダン並みの室内空間を確保しているという。
新旧の両モデルとも、ハンドリングにくせがなく、運転しやすい。運転経験が少ないドライバーでも、すぐになじむことができるだろう。エンジンは、旧型の1.3L(86馬力)でも十分な性能だったが、新型はさらに力強くなった。今回試乗したのは1.5LのRS(最高出力120馬力)だったのでなおさらだ。一般道を走っていて、力不足を感じることはなかった。バイパス道路への合流でも、余裕を持って加速することができた。
乗り心地も改善されている。旧型は荒れた路面を走るとざらついた感じが強く伝わってくるが、新型はずいぶんソフトになった。また、室内に入ってくる走行音も一回り静かになっている。
多彩な荷室アレンジ
荷室は、多彩なアレンジが可能だ。応急パンク修理キットを採用することでスペアタイヤをなくしたので、荷室の床下に大きな収納スペースができた。フレキシブルラゲッジボードという仕切り板を使うと、荷室を上下に分割したり、床を平らにしたりできる。上下に分割した時には上段がネット張りになるので、買い物袋など不安定荷物を積む時に便利だ。
リアシートは、背もたれ上部のレバーを引くだけで簡単に前方に倒れ、荷室と同じ高さで平らになる。さらに助手席を後ろに倒すと合計で2.4mの空間ができ、サーフボードなどの長尺物を載せることができる。
収納スペースは、大小合わせて13種類。ドリンクホルダーだけでも合計10個分もある。
新型フィットは、発売から2週間の受注台数が2万台を超えた。ことしは東京モーターショーが開催され、ニューモデルの発売が続いた。並み居るライバルを抑えてのカー・オブ・ザ・イヤー受賞は価値がある。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。