ダイエットの成果
エステに通って、ダイエットをして登場したー。新型デミオはそんな表現ができるほどスリムでおしゃれになった。モデルチェンジを重ねるたびにサイズが大きくなる車が多い中で、3代目のデミオは逆に小さくなった。車幅こそ2代目より15mm広い1695mmと5ナンバー枠いっぱいになったものの、全長は40mm短い3885mm、全高は55mmも低い1475mmである。
初代と2代目のデミオは実用性を重視していたので、室内が広い代わりに背が高く、決してスマートとは言えない外観をしていた。3代目は、低いフロントノーズから、リヤのハッチに向けて伸びていくくさび形のラインが印象的だ。
車体をスリムにしたのは、見栄えを良くするためだけでなく、軽量化も目的なのだという。素材の見直しやシートアレンジの簡素化などによる徹底したダイエットで、先代より100kgも軽くしたのである。
100kgと言えば、小柄な女性や子どものほぼ2人分。これだけ軽くなると、燃費も改善する。軽量化した新型デミオは、新しい1.3L(リットル)エンジンとCVT(自動無段変速機)の組み合わせで、ガソリン1リットル当たり23km(10・15モード)と、コンパクトカーでトップクラスの低燃費を実現した。
車重が1tを超えるかどうかで、自動車重量税も大きく変わってくる。100kgのダイエットを達成したデミオは、ほとんどのグレードで1tを切っており、重量税は年間6300円。これが、1tを超えたとたんに2倍の1万2600円に跳ね上がる。軽量化は、燃費と税金の両方で財布に優しいのである。
燃費に優れた新エンジン
今回のフルモデルチェンジで登場した1.3Lエンジンは、一般のエンジンよりも吸気バルブを閉じるタイミングを遅くした「ミラーサイクル」という機構を採用している。なぜ吸気バルブを閉じるタイミングが遅いと燃費が良くなるのかー。図解付きの説明書を何度も読み返したが、わたしの頭では理解できなかった。しかし、別に気にはしていない。「燃費のいいエンジンだ」ということだけ覚えておけばいいのだから。
燃費が良くなっても、エンジンそのものの性能が劣っていては元も子もない。ミラーサイクルエンジンは、デミオに載せられる通常の1.3Lエンジンに比べると、最高出力は1馬力、最大トルクで0.4kg落ちるが、実際に運転してもこの違いは分からないだろう。ちなみに、ミラーサイクルエンジンとCVTを組み合わせた車種は、ノーマルエンジンと4速ATを組み合わせた車種に比べて、1リットル当たりの燃費が2km優れている。
軽快な走り
試乗車は、新エンジンを搭載した1.3Lの13C-V。運転席に乗り込む。全高が55mm低くなったというが、身長174cmのリポーターでも、頭上の圧迫感はない。運転席の正面には、白い盤面の大きなスピードメーター。このグレードにはタコメーター(エンジン回転計)がないが、CVTがエンジン回転を最適に制御してくれるので、不便を感じることはなかった。
ミラーサイクルエンジンは、走り出しからまったく違和感はない。車体がコンパクトになったことも加わって、走りは軽快だ。特に街中での軽快感や扱いやすさは好印象である。一方で、スピードが出るバイパス道路では、しっかりした直進安定性があった。パワーステアリングも軽過ぎず、重過ぎず、扱いやすかった。
後部座席はやや狭い印象だが、ドアの窓枠が高い位置にあるので包まれたような安心感がある。試乗車のシートは座面と背もたれが白で、黒い内装とのコントラストがおしゃれだ。このシートは、液体が染み込みにくい表面処理がしてあるので、コーヒーをこぼしてしまったような時でもふき取りやすいという。
感心したのはトランクルームだ。深さがたっぷりあるので、コンパクトな車体にもかかわらず荷物がたくさん積める。リアゲートは電磁式オープナーの採用により、指で軽くボタンを押すだけで解錠できるので扱いやすい。
車室内の収納も豊富だ。アイデア賞ものは、グローブボックス前面のマガジンラック。A4サイズの雑誌や地図が入るので、ガイドブックを持ってドライブに出掛ける時などに便利だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。