誕生50年の節目
スカイラインは、自動車が好きな熟年にとって特別な車だ。レースで鍛えられた「GT」のイメージと、歴代モデルの愛称がいまだに語り継がれている。初代スカイラインが誕生したのは1957年。ちょうど、わたしと同じ50歳である。
いまでもたまに見かける四角いスカイラインは「箱スカ」と呼ばれ、68年の発売。日本の自動車史上に残る名車GT-Rがレースで大活躍した。72年にフルモデルチェンジした4代目スカイラインは「ケン・メリ」の愛称で親しまれたが、当時の厳しい公害対策で、エンジンはからきし元気がなかった。モデル半ばでGT-Rも廃止になり、その復活は89年まで待たなければならなかった。
ケン・メリと、その次の5代目スカイライン「ジャパン」は、わたしの愛車でもあった。それから四半世紀がたった。目の前にある12代目のスカイラインは驚くほど高性能である。
3.7LのV型6気筒エンジンは、最高出力333馬力。2400回転から7000回転までの広い回転域で最大トルクの90%を発揮する柔軟性と、最高7500回転まで滑らかに吹き上がる伸びの良さを両立させているという。吸気バルブの動きを制御する新しい技術の採用で、高出力を得ながら燃費も向上させている。
スタイルは伸びやかで力強い。4ドアセダンに比べて幅が5cm広く、高さが6cm低く、安定感がある。スカイラインのシンボルである丸形のテールランプもしっかりと輝いている。
10月24日にはいよいよ、東京モーターショーの会場で「GT-R」がベールを脱ぐ。歴代スカイラインの血統を受け継ぎながら、初めて「スカイライン」の名称を取り「NISSAN GT-R」としてデビューする。12月から国内販売を開始する。
鋭い加速と上質な乗り心地
試乗直前にナンバーを付けたばかりの、ばりばりの新車に試乗した。25年ぶりに運転するスカイラインに、思わず顔がほころぶ。
硬めのシートは、座面と背もたれの両端が盛り上がったバケットタイプで、体をしっかり支えてくれる。シートポジションは低く、スポーツカーの雰囲気だ。フロントフェンダーの上部が盛り上がっているデザインによりボンネットの左右両端が見え、車幅の感覚がつかみやすい。
アクセルを踏んで驚いたのは、エンジンの反応の早さ。アクセルを優しく操作しないと、思った以上に鋭くスタートしてしまう。333馬力のエンジンは、静かで力強く、そして軽快に吹き上がる。一般道で交通の流れに乗って走るのなら、アクセルの上に軽く足を乗せておくだけで十分だ。
大出力を受け止めるブレーキも強力だ。銀色に輝くアルミホイールの奥に、大きなディスクが見える。制動力が強いというだけでなく、右足の力加減に応じて自在に利きを調節できるダイレクト感に優れている。
タイヤは、フロントが225/50R18であるのに対して、大きな出力を受け止めるリアは245/45R18と一回り幅が広い。扁平タイヤと硬めの足回りの組み合わせだが、乗り心地は上質だ。荒れた路面や、小さな凹凸がある場所を走っていても、サスペンションが細かいショックをきれいに吸収してくれる。車内に入ってくる騒音(ロードノイズ)も小さい。
市街地を走っただけなので、山道のカーブを曲がる際の操縦性などは分からないが、大きな車体にもかかわらずハンドルを切った分だけ素直に向きを変えるのが印象的だった。
内装は、黒とシルバーがベースで、スポーティーな感覚。9000回転まで刻まれたタコメーターが頼もしい。ベースグレードの370GTでも、電動シートをはじめとした快適装備を満載している。
スポーツグレードのタイプSPやタイプSは、カーブを曲がる際にハンドルの切り方に合わせて後輪も動かして回頭性や安定性を高める4輪アクティブステアや、一段と強力なブレーキなど、より走りを楽しむ機能を装備している。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。