定評ある4WD
正面から見たデリカD:5は、とても力強く見える。横長のメッキグリルと、車体の下まで回り込んでいるフロントバンパーアンダーカバーなどが、ただ者ではない雰囲気を醸し出している。
D:5の前身は、1994年に発売されたデリカ・スペースギア。悪路走破性に優れたワンボックスカーで、背が高い独特のスタイルが目を引いた。D:5は、スペースギアに比べて、最低地上高を20mm高くしながら、全高を100mm下げている。車体の幅が広くなったことと合わせて、安定したプロポーションになった。
エンジンは、燃費に優れた可変バルブタイミング機構を採用した4気筒2.4L(リットル)エンジン。無段変速のCVTと組み合わせることで、車重が1800kgもあるヘビー級ながら、10・15モード燃費は1L当たり10.4kmと優秀だ。運転の仕方にもよるが、市街地で10km以上走らせるユーザーもいるという。
電子制御の4WDは、ダイヤル式のドライブモードセレクターで(1)燃費の良い2WD(2)路面条件や走行条件に合わせて前輪と後輪に駆動力を適切に配分する4WDオート(3)悪路や雪道などで強力な駆動力が得られる4WDロック-の3つが選択できる。走行中でも切り替えが可能だ。
三菱の4WDというと、ダカールラリーやWRCラリーのイメージが強い。D:5は今年のダカールラリーで、三菱チームのサポートカーとして7000kmを走破した実力の持ち主である。
車種構成を見ると、4WDが1月に発売され、5月に2WDが2シリーズ追加された。2WDは4WDより最低地上高が45mm低いが、車体の大きさやエンジンは共通だ。
オールラウンドの高級ワンボックス
試乗したのは、4WDの最上級車Gプレミアム(車両本体価格341万2500円)。ハードディスク・ナビや電動スライドドア、横滑り防止装置など、必要な快適装備や安全装備がほとんど標準になっている。
最低地上高が一般の乗用車に比べて50~60mm高いので、「よいしょ」と足を上げて運転席に乗り込む。身長174cmのリポーターだと、シートに座った時の目の高さと、地面に立った時の目の高さがほぼ同じになる。
シフトレバーをD(ドライブ)レンジに入れてスタート。幹線道路に出てアクセルを踏み込むと、CVTならではの滑らかな加速が味わえる。普段運転している乗用車に比べると目線の位置が高いので、見晴らしがいい。違和感を覚えるような高さではないので、車の運転に慣れている人ならすぐなじむだろう。
専用開発したという18インチの大径タイヤは、悪路や雪道も走れる全天候型にもかかわらず、舗装路での乗り心地が良く、静粛性も高い。言われなければ悪路用のタイヤとは気がつかないだろう。
最高出力170馬力の2.4LエンジンはCVTとマッチングがよく、重い車体を過不足なく走らせる。試乗車のCVTには、6速スポーツモード機能があり、ステアリングを握ったまま指を伸ばして操作する「パドルシフト」というレバーでギアをチェンジできる。左手側にあるレバーを手前に引くとシフトダウン、右手側のレバーを引くとシフトアップ、右手側のレバーを引き続けるとドライブモードに復帰する。
オフロードの走破性は試していないが、舗装路を走る限り「高級ワンボックス」として、ゆったりと運転することができる。
走行中に2WDと4WDを切り替えても、一般道の舗装路では違いは分からない。強い横風が吹く高速道路や雨にぬれた路面など、走行条件が悪くなればなるほど、4WDの安定性が実感できるという。
快適性、安全性を向上
D:5で特に重視されているのが快適性と安全性。シートは2列目はもちろん、3列目も十分な厚みと大きさがあり、座り心地がいい。3ナンバーサイズのボディーは室内が広く、3列目でも大人が余裕を持って座れる。シートの表面には汚れ防止加工がしてあるので、子どもがハンバーガーのケチャップをたらしてしまったといった場面でも、汚れを取りやすく、しみにもなりにくい。
試乗車は、左右のスライドドアやテールゲートが電動。また、たばこやペットの臭いを吸着、分解する消臭天井や、花粉を除去するエアフィルターを採用するなど、快適なドライブのためにきめ細かい配慮がされている。
安全性の面では、車体の構造を肋骨(ろっこつ)のようにして剛性を上げ、衝突時の安全性を確保するとともに、走行性能の向上も図っている。
4WDは全車種、車体が横滑りしそうになると自動的にブレーキやエンジン、4WDシステムを制御してスピンやコースアウトを防ぐASC(アクティブスタビリティコントロール)を採用している。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。