専門家から高い評価
スイフトは、2004年11月に発売されたスズキの欧州戦略車。ヨーロッパ調のスタイルと優れた走行性能から、特に自動車雑誌の編集者や評論家など、車に詳しい人たちの評価が高い。国内では、若い男性を中心にじわじわと売れている。軽自動車のトップメーカーであるスズキが送り出した、普通車でのヒット商品である。
スイフトにはこれまで、1.3L、1.5L、1.6Lの3種類のエンジンが搭載されていた。追加された新開発の1.2Lエンジンは、最高出力90馬力、最大トルク12.0kg。排気量が100cc大きい1.3Lと比べて、出力は1馬力低いものの、トルクはまったく同じだ。
燃費性能はどうか。1.3Lエンジンと4速オートマチックトランスミッション(4AT)の組み合わせではガソリン1リットル当たり17.0km(10・15モード)だったが、新エンジンとCVTの組み合わせで20.5kmに向上した。今回のモデルチェンジではこのほかに、バンパー形状が立体的に変更されたが、好評のスタイルはそのままだ。
1.2Lエンジン搭載車は、1.3Lエンジン搭載車に比べて車重が20kg軽くなり、ちょうど1tに収まった。このため重量税が安くなり、新車購入時(3年分)には1万8900円の節約になる。燃費だけでなく、税金の面でも財布に優しい車になった。
きびきびした走り
試乗車は、1.2LのエンジンにCVTを組み合わせたFF(前輪駆動)の「XG」。リモコンを携帯していればキーを使わずにドアの施錠、解錠やエンジンスタートができるキーレスエントリーシステムやフルオートエアコンなど、必要な快適装備がほとんど付いている。
車体の色は、精悍(せいかん)な印象の黒。オプションで16インチのアルミホイールとエアロパーツが装着されていた。コンパクトな車体に乗り込む。車幅は1690mmと5ナンバー枠いっぱいなので、運転席に座っている限り狭い感じはしない。しかし、身長174cmのリポーターに合わせて運転席を調節すると、後部座席と背もたれとの間はだいぶ狭くなる。大人4人が乗っての長距離ドライブはつらいかもしれない。
パワーステアリングは軽く感じた。スイフトは「元気に走る小型車」として男性に人気があるが、今回の1.2Lモデルは、女性が街中で運転してもきびきびと走れそうだ。
新エンジンは軽快に吹き上がる。無段変速のCVTとの組み合わせで、段付きのない滑らかな加速が得られる。このCVTにはD(ドライブ)レンジのほかに、エンジン回転を高めに保つS(スポーツ)レンジが設けられている。時速60kmで走行中のエンジン回転は、Dレンジでは1400回転ぐらいだが、シフトノブを右側に倒してSレンジに入れると3000回転強に跳ね上がる。追い越しのさいなどには、十分な加速が得られる。
発進加速も、DレンジとSレンジではがらりと印象が変わる。燃費を重視したDレンジではややゆったりと感じるエンジンが、高回転を保つSレンジでは驚くほど生き生きとしてくる。小気味いい走行性能と合わせて、常にエンジン回転を上げたまま走りたくなるほどだ。
荷室も使いやすく
今回のモデルチェンジで、後部シートや荷室の使い勝手が改善された。スイフトの荷室は、奥行きはあまりない代わりに、深さがたっぷりある。新しく採用されたのは、リアバンパーの高さで荷室を仕切るラゲッジボードと、6対4の分割可倒シート。ラゲッジボードは半分たたんだり、床に下ろしたりといった、さまざまな使い方ができる。これにより、荷室を上下で分割して荷物を収納したり、リアシートを倒した時にほぼフラットな荷室空間を作ったりすることが可能になった。
走りを前面に打ち出した車種である1.6Lの「スポーツ」は、エンジンの最高許容回転数を引き上げたり、手動変速のギア比を見直したりして加速性能を向上した。さらに、横滑り防止装置を標準装備にして、滑りやすい道路状況での安全性を高めている。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。