個性的な外観
クロスロードの車体は、全長4285mm、全幅1755mm。トヨタの5ドアハッチバック「オーリス」と同じような寸法だ。全高は1670mmで、オーリスより155mm高い。曲線デザインのオーリスがコンパクトに見えるのと対照的に、直線を基調にした四角いデザインのクロスロードは寸法以上に大きく立派に見える。
搭載するエンジンはSOHC・i-VTECの4気筒1800ccと2000ccの2種類。出力はそれぞれ140馬力と150馬力だ。いずれもFF(前輪駆動)と4WD(4輪駆動)があり、組み合わされるトランスミッションは5速ATである。
ホンダの4WDは、独自のリアルタイム4WD。通常はFFで走っているが、悪路や滑りやすい路面で前輪と後輪に回転差(スリップ)が発生した時には瞬時に後輪に動力を伝える。燃費に有利なFFと、走行条件が悪くなった時に頼りになる4WDを、運転者が意識することなしに切り替えてくれる。
わだちができた林道や、大きめの石がころがった河原などを走る時に車体下部をこすらないように、185mmの最低地上高を確保している。同社の本格的なSUV「CR-V」と同じ数値だ。
市街地でも扱いやすい
試乗車は2000ccのエンジンを積んだ20Xの4WD。ホンダ車用のパーツを製造、販売している「無限」のエアロパーツとアルミホイール(いずれもオプション)を装着しているので、黒い車体が一段と迫力を増して見える。室内も黒で統一されていて、スポーティーな雰囲気だ。
着座位置がミニバンのように高いので、運転していて見晴らしがいい。四角い車体は見切りが良く、さらにバンパーは角を切り落としたようなデザインになっているので、いかつい車体から想像するよりも小回りが利く。バックでの車庫入れも、全長が短いので楽だ。道幅が狭い市街地でも扱いやすかった。
試乗当日は路面の状態が良かったので、ほとんどFFで走っていたようだ。悪路を走っていないのでリアルタイム4WDの効果は分からないが、普通に走っている分には4WDを意識することはない。
エンジンは、ホンダならではの軽快な回転フィーリング。車重は1500kgと重めだが、十分な余力があるので、バイパス道路で交通の流れに乗る際にも、意識的にアクセルを強く踏む必要はなかった。
試乗車は、18インチのホイールに扁平(へんぺい)率55%のタイヤを履いていたため乗り心地はややゴツゴツしていたが、標準タイヤ(17インチ、60%)だともっと穏やかな乗り心地だという。
3列目は緊急用
クロスロードのベースは同社の小型ミニバン、ストリーム。ストリームは全長4550mm、全幅1695mmの5ナンバーサイズで7人乗りを実現したスペース効率に優れた車だが、クロスロードはストリームよりも全長が265mmも短い。
2列目のシートは大人がゆったりと座れるが、3列目のシートはさすがに最小限のスペース。床からシート座面までの距離も短いので、子どもや小柄な女性が座るのが精いっぱいだろう。しかし、長時間は無理にしても、緊急の時に7人乗れるのはありがたい。
3列目のシートを起こすと、荷室のスペースはかなり狭くなる。普段は3列目のシートを畳んでおいて荷室を広く使い、緊急時だけシートを起こすという使い方になりそうだ。
安全装備として4WDには、ブレーキ時の車輪ロック防止装置、加速時の車輪空転防止装置、旋回時の横滑り制御機能を標準装備しているので、雪道の滑りやすいカーブなどを安心して走ることができる。使い勝手の面では、運転席周りに小物入れがたくさんあるのがありがたい。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、12台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。