ヴィッツ似の外観
オーリスの外観は、トヨタの人気小型車「ヴィッツ」(1000~1500cc)に似ている。ヴィッツは日本国内だけでなく、「ヤリス」の名称でヨーロッパをはじめ、世界各国で生産・販売されている。海外の自動車メーカーは、小型車から高級車まで統一したイメージを持たせるデザイン手法を採用していることから、オーリスもヴィッツとイメージを統一したのだろう。
一方で、オーリスの兄弟車種として昨年12月に発売された「ブレイド」は日本国内専用車なので、マークXなど高級セダンを思わせる顔つきをしている。エンジンはオーリスよりも排気量の大きい2400ccで、内装や装備も豪華だ。オーリスはネッツ店、ブレイドはトヨタ店、トヨペット店の扱い。
スポーティーな味付け
ダイハツのムーヴもそうだったが、最近の上級装備の車には、エンジンキーがない。ディーラーで「どうぞ」と手渡されたのは黒いキーホルダー。車と電波でやりとりをしているので、服のポケットやバッグの中に入れておくだけでドアの施錠や解錠、エンジンの始動ができる。
試乗車は、ハンドルの付け根左側に「エンジンスタート・ストップ」と書いた丸いスイッチがあり、ブレーキを踏みながら押すとエンジンがかかる。便利な装備だが、初めて乗り込んだ時にはどうやってエンジンをかけたらいいのか分からず戸惑った。
試乗車は1800ccの最上級車種。販売店を出てすぐに、田辺バイパスに入った。最高出力136馬力を発生するエンジンは低回転から力があり、スムーズに加速する。ゆっくりとアクセルを踏み込むとすぐに法定速度の60kmに達する。この時のエンジン回転は1000回転ほど。一定の速度で走っていると、車内はとても静かだ。
ヨーロッパを基準にしたという足回りは、国産車としてはかなり堅め。特に試乗車は205/55R16という扁平(へんぺい)のスポーツタイヤを装着していたので、ごつごつした感触が伝わってくる。しかし、サスペンションは滑らかに動くので、不快な乗り心地ではない。
ハンドルの操作は重め。中立付近でも遊びが少ない敏感なタイプで、スポーティーな味付けだ。カーブでは、ハンドルを切った角度に応じて素直に曲がっていく。試乗はしていないが、1500ccの方がハンドルは軽く設定されているという。
手動の7段変速
トランスミッションは、自動無段変速のCVT。ドライブ(D)レンジに入れておけば変速ショックのないスムーズな加速が得られる。さらに、1速から7速まで手動でチェンジできる機能を備えている。
ゲート式のシフトレバーをDの位置から右に寄せると手動モードに切り替わる。レバーを手前に引くとシフトダウン、奥に押すとシフトアップする。カーブの入り口や急な下り坂でエンジンブレーキを利かせたい時や、追い越しで加速する時などに有効だ。
手動モードのまま停止すると、ギアは自動的に1速に落ちる。そこからアクセルを強めに踏み込むと、大きめのエンジン音を響かせながら力強く加速する。ギア比が接近しているので、高回転まで引っ張ってシフトアップしても、変速ショックは少ない。気持ち良く回るエンジンと手動ミッションの組み合わせは走り心を刺激するが、必要以上のスピードは厳禁だ。
意外に広い車幅
室内はダークグレーを基調にしている。運転席のシートは、横の支えがやや強いスポーツタイプ。運転席と助手席の間には橋を渡したような斬新なデザインの突起があり、好みが分かれるだろう。
着座位置はやや高めだが、身長174cmのドライバーでもボンネットはまったく見えない。先端がどこまであるのかをつかむには慣れが必要だ。全長が短いので、買い物で駐車場に止めたりするには使い勝手がいい。外観はコンパクトに見えるが、車体の幅は高級セダン「クラウン」と2cmしか違わなので、狭い道で他車とすれ違う時には気を使う。
後部座席は、床の中央に出っ張りがないので、広く感じる。わたしに運転席を合わせてから後ろの座席に座っても、ひざ元には余裕があった。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、11台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。