とにかく広い
ドアを開けてまず驚いた。とにかく広い。これが本当に軽自動車?
運転席に座って後ろを振り返ったら、広々とした空間が広がっていた。運転席のシートを運転しやすい位置に合わせてからその後部座席に座ったら、足を組めるほどの余裕があった。
ダイハツの軽自動車で、広々とした室内で人気車になったのはタント。新しいムーヴは、タントよりもさらに110mmも室内長が長い。リアシートは前後に255mmもスライドする。人を乗せる機会が多いのなら、シートを後ろにしておけば広い室内を確保できるし、大きな荷物を載せる時には前に出せば簡単に荷室を広げられる。
車体の幅が限られている軽自動車なのに、室内幅も広く感じる。それもそのはずで、1350mmの室内幅は軽自動車で最大級という。
低速から力強いエンジン
試乗車のエンジンはターボチャージャー付きで、64馬力を発生する。駐車場から大きな通りに出た時の第一印象は「これだったら普通車はいらないんじゃない」。ミッションは、無段変速のCVT。アクセルを踏むとオレンジ色のタコメーターがすぐに最大トルクを発生する3000回転を示し、その回転を保ったまま車速が上がっていく。昔のターボ車は低回転で力がなく、ある回転域から突然元気になったが、このターボは排気量が大きな車のように低速から力強く加速する。
上り坂でもターボは快適だ。よほど急な坂でない限り、少し余分にアクセルを踏むだけで楽々と上っていく。バイパス道路で追い越しをかける時でも、4000回転まで踏み込めば十分な加速が得られる。そのさいに、変速ショックがまったくないのもCVTの大きな利点だ。
ターボ車というと燃費が気になるが、効率のいいCVTとの組み合わせで、ターボなしエンジンに4速オートマを組み合わせたモデルを上回る燃費を実現している。10・15モードで、1リットル当たり21.5km。走り方にもよるが、町中で1リットル当たり17km前後走らせるユーザーもいるというから、実用燃費もかなり優れているのだろう。
スポーティータイプのRSは、足回りがかなり引き締められている。16インチのホイールに扁平率50%のタイヤをはくので、荒れた路面ではゴツゴツした感触が伝わってくる。
走り終えて
RSの車両本体価格は155万4000円。1300ccクラスの普通車が買える価格だが、ムーヴカスタムのシリーズでは一番の売れ筋という。
燃費が良くて維持費が安いという軽自動車のメリットに加えて、運転した時の満足感が得られる一台だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴32年。これまで、11台の愛車を乗り継いできた。紀伊民報制作部長。