調和の取れた造型
直線的で力強いシルエットは、一目で「ランドクルーザー」とわかる存在感を放つ。三眼LEDヘッドライトと正方形の格子が特徴的な大型グリルが、迫力ある表情を作り出している。ZXグレードではこのグリルがメッキで縁取られ、上品な質感に。正面に立つと、これから長い旅に出発するような高揚感が胸に広がる。子どものころ、スーパー戦隊の巨大ロボットに憧れたあのワクワク感が、ふとよみがえった。
側面は、マット仕上げの20インチホイールが足元を引き締める。角が強調された力強いスポークが、頼もしさに加え、走りへの期待感を高める。水平基調のプレスラインは車体の堅固さを感じさせ、ドア下部のガーニッシュやサイドステップが存在感をさらに際立たせる。リアには現代的で端正な印象のLEDコンビランプを備え、全体のデザインを引き締めている。都会の洗練さとオフロードの力強さを併せ持つ、調和のとれた造形だ。
揺りかごの中にいるよう
走り出すと、重厚かつしなやかな乗り味に驚かされる。街中では路面の段差や継ぎ目を穏やかにいなし、まるで揺りかごに揺られているような安心感に包まれる。2.8リットル直4ディーゼルエンジンと8速ATの組み合わせは静かで滑らか。ディーゼル特有の力強いトルクが低回転から湧き上がり、発進や追い越しも余裕がある。
高速道路の合流では、エコモードでは加速が控えめだった。スポーツモードに切り替えると一転、力強く伸びやかに加速。重量級SUVとは思えない軽快さを見せた。変速ショックはほとんど感じられず、速度が自然に積み上がっていく感覚が心地よい。
車体が大きい分、死角も多いが、この車は大型で視認性の高いサイドミラーを備え、右左折や車線変更時も安心。後方はデジタルインナーミラーが補い、昼夜問わず鮮明な映像を映し出す。12.3インチのメーターとヘッドアップディスプレーは視線移動を最小限にし、運転中の情報取得をスムーズにする。静粛性も高く、車内での会話や音楽を邪魔しない。
多彩な場面で活躍
全長約4.9メートル、全幅約2メートルと堂々たるサイズながら、広い視界と全方位カメラの支援で街中でも取り回しやすい。大きめのAピラーやボンネット先端の感覚もつかみやすく、狭い路地でも安心感がある。
運転席と助手席はゆったりとしたスペースを確保。中央のアームレストは、ノートパソコンを置けそうなほど大きく、取材の合間に机代わりとして記事執筆もできそうだ。アームレスト下のコンソールボックスも容量があり、一眼レフカメラなら余裕で収まる。
シートは前後・高さ・角度・座面長・腰部サポートまで細かく電動調整でき、記憶機能も備える。前後席ともに冷暖房機能を装備し、真夏の炎天下や真冬の冷え込みにも対応。長距離移動でも疲れを感じにくい。
3列目は電動格納式で、普段は広大な荷室として使える。大人が長時間座るにはやや狭いが、子どもや短距離移動には十分な広さだ。ZXとVXグレードにはガラスハッチが標準装備され、狭い駐車場でもバックドアを全開にせず荷物を出し入れできる。キャンプや旅行など、多彩な場面で活躍できそうだ。
日常も頼れる相棒
この車は、ランドクルーザー伝統の存在感と現代の快適装備を高い次元で融合させた1台だった。街乗りでは、重量級の車体を意識させない静かで落ち着いた走りに感動した。信号待ちからの発進や市街地での速度調整もスムーズで、運転に余計な力を使わずに走ることができた。
高速道路では安定した直進性と力強い加速を感じた。追い越し時もエンジン回転が落ち着いており、余裕を持って車線変更できた。長時間のドライブでも疲労感が少なく、同乗者との会話や音楽鑑賞も快適に楽しめる。
今回は未舗装路を試す機会はなかったが、長年培われたランクルの走破性は世界中で評価されており、いざという時の頼もしさは折り紙付きだ。日常の足から週末の遠出まで、幅広いシーンで頼れる相棒になると感じた。
リポータープロフィル
【伊藤大翔】 紀伊民報記者