存在感を放つデザイン
新型ムーヴの外観は、シンプルながらも存在感を放つデザインが特徴。「端正でりりしいデザイン|日常から高速まで」をテーマに掲げ、どの場面でも映えるスタイルを目指した。
薄型のLEDヘッドライトと大型グリルが一体となったフロントフェースは、知的で力強い印象。下部バンパーは横方向に広がる台形で、低重心かつスポーティーな雰囲気を演出している。
外装にはつやのあるブラックを多用し、近年流行のメッキ装飾に頼らずに高級感を実現。サイドには、ヘッドライトからテールランプへ自然に流れるラインと弓形のプレスラインが走り、上質さを感じさせる。リアの小窓もデザイン性が高く、先代モデルよりもスタイリッシュな印象を受ける。
ボディーカラーは落ち着いたモノトーンから個性の光る2トーンまで13色を展開。年齢や性別を問わず、あらゆるライフスタイルに寄り添える。
スライドドア初採用
今回のモデルチェンジで最も大きな変更は、後部に電動スライドドアを採用した点だろう。
スライドドアの車は箱型のイメージが強いが、新型ムーヴは傾斜のあるフロントガラスや流線的な後部のデザインにより、全体が「箱」には見えない仕上がり。コンパクトな車体に、多彩な魅力を詰め込んだ。
ドアの開口部は広く、子どもや高齢者の乗り降りもスムーズ。狭い駐車場でも隣の車に気を使わずに使えるのは、日常の大きなメリットだ。
「ウエルカムオープン機能」を使えば、キーを持って車に近づくだけで自動で解錠・開扉する。さらに「タッチ&ゴーロック機能」により、ドアが閉まり切る前に施錠予約もでき、買い物帰りなど両手がふさがっている時でも安心だ。
快適性を徹底追求
新型ムーヴは「軽自動車は街乗り専用」というイメージを覆すほど乗り心地が良かった。足回りやシート構造に工夫を凝らし、長時間運転しても疲れにくい設計が随所に見られた。
グレードはL、X、G、RSの4種類。試乗車は唯一ターボを搭載したRSグレードだった。動画撮影のため大人4人で乗車したが、街中では快適だった。高速道路の合流や急坂ではパワー不足を感じる場面もあったが、1~2人乗車ならパワフルに走ってくれるだろう。
新設計のサスペンションは、段差や荒れた路面でも振動をうまく吸収。凹凸のある減速帯を通過しても不快な揺れはなく、車内の静粛性も高い。動画撮影や会話もストレスなく行えた。
前席・後席ともに十分な空間があり、長距離でもリラックスして過ごせる。傾斜の強いフロントガラスも、心配していた視界の悪さはなく、見晴らしは良好。小窓が大きく、右左折時の視認性も高い。
ステアリングは癖のない自然な操作感。シートはグレードによってカラーが異なり、GとRSはグレー、LとXはホワイト。座面はもちもちとした肌触りで心地よい。
パーキングブレーキは足踏み式から電動式に進化。ブレーキホールド機能も加わり、長距離走行の負担も軽減されている。
ちょうど良さを求める人へ
11年ぶりの全面改良を遂げた新型ムーヴは、軽自動車の実用性に加え、デザイン性や快適性も兼ね備えたバランスの良い一台となった。
ターボエンジンを搭載した最上級のRSで約190万円の車両本体価格は魅力。燃費も従来型より約1割向上した。
スライドドアや静粛性の高い室内、存在感のあるデザインは、日々の暮らしを丁寧に支えてくれる。
この車をお薦めしたいのは、子育てを卒業した世代の家族や運転初心者、高齢者など、使いやすさや視界の良さを重視する人たち。
さらに「軽だけどチープには見せたくない」といったニーズにも応える完成度の高さがあり、派手過ぎず、地味過ぎない「ちょうど良い」を大切にする人に、ぜひ注目してほしい一台だ。
リポータープロフィル
【伊藤大翔】 紀伊民報記者