豪快なターボ 俊敏なハイブリッド
スバルのストロングHVは昨年12月、都市型SUV「クロストレック」でデビューした。トヨタのHV技術であるTHSIIとスバルの2.5リットル水平対向4気筒エンジンを組み合わせている。
エンジンの最高出力は160馬力、最大トルクは21.3kg。モーターは119.6馬力、27.5kgを発生する。エンジンとモーターを合わせたシステム総合出力は公表していない。燃費は、ガソリン1リットル当たり18.4~18.8km(WLTCモード)だ。
一方の1.8リットルターボは最高出力177馬力、最大トルク30.6kgという性能。出力は2~2.5リットルエンジン並みだが、30kgを超えるトルクは強力。豪快な走りが期待できる。燃費は13.6kmとなり、HVと比較すると25%ほど落ちる。
二つのパワーユニットは、実際に走らせてみるとどう違うのだろうか。先に試乗したのはターボ車。このエンジンは低回転から力があり、発進はスムーズ。アクセルをじわりと踏み込むと、排気量の大きなエンジンのように紳士的に速度を増していく。
ターボの面白さは、アクセルを深く踏み込んだときの加速だ。バイパスの本線に合流するため右足に力を込めたところ、ワンテンポ遅れてエンジン回転が急上昇し、押し出されるように速度を増した。その際のエンジン音もたくましかった。「ターボラグ」といわれる、アクセル操作に対するエンジン回転上昇の遅れは大きめだ。
これに対してHVは反応が素早い。アクセルを踏み込むと瞬時にモーターの力が車輪に伝わり、そこにエンジンが加わって一気に加速する。
わずかな試乗時間での感想になるが、公道での絶対的なパワーはいずれも十分過ぎるほど。反応の早さやスムーズさではHVが勝り、さまざまな走行条件で扱いやすい。一方で、ターボの急激なパワーの立ち上がりも車好きには捨てがたい。どちらを選ぶかは好みの問題だろう。
すっきりした顔に
フォレスターの大きさは全長4655mm、全幅1830mm、全高1730mm。先代と比べて全長は30mm、全幅と全高が15mm大きくなったが、SUVが大型化する中では控えめな「成長」かもしれない。
ライバルとして挙げられるのはトヨタのRAV4や日産のエクストレイル、ホンダのZR-V、マツダのCX-5などだが、水平対向エンジンと機械式AWDの組み合わせという個性は直接比較できないのかもしれない。
外観は、アウトドアのイメージが強かった先代から、都市型SUVを感じさせるデザインになった。すっきりしたフロントグリルはワイド感を強調し、上下分割型のフロントバンパーで厚みのある顔つきを表現している。
スバル車のデザインは、運転席から見て前後左右の死角が少ないのも特徴。窓の面積が大きいだけでなく、ドアミラーを小型化して左斜め前方の視界を確保するといった工夫をしている。
足回りが柔らかめなので、乗り心地は快適だ。ドアガラスを厚くしたり、吸音材を使用したりして車内に入り込む騒音を抑えており、静粛性も高い。試乗では、車内騒音の印象がターボとHVで違った。最初に乗ったターボの方が全般に静かに感じ、HVはタイヤや路面からの騒音(ロードノイズ)が大きく感じた。しかしこれは、HVのパワーユニットがターボエンジンより静かなため、相対的にロードノイズが気になったということのようだ。
操縦性は素直だ。水平対向エンジンのおかげで重心が低く、急なカーブを曲がる際でも車高が高いことを感じさせなかった。
安全装備も進化
スバルの安全運転支援機能である新世代のアイサイトは、広範囲を見渡すステレオカメラと低速時に歩行者を認識する超広角の単眼カメラ、さらに前側方レーダーを装備し、右左折時に同一方向に歩く歩行者を認識して衝突を回避するなど安全性が一段と向上した。世界初の機能として、自転車に乗った人と衝突した場合に被害者の頭部を守る歩行者保護エアバッグを採用した。
また、上級グレードには、自動車専用道での運転を支援するアイサイトXを標準装備。カーブに合わせて減速したり、渋滞時に手放しで先行車に追従走行したりする。
スバルが開発した2.5リットルストロングHVは、車体が小さめのクロストレックには過剰と思えたが、フォレスターとの相性は良く、ぴったりのパワーユニットと感じた。一般ユーザーの試乗も希望が相次いでいて、取材の前後にも予約が入っていた。「スバル車の燃費がもう少し良くなれば」と期待していたファンにとって待望の一台なのだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴50年。紀伊民報制作部長