個性がぶつかる激戦区に
スペーシア・ギアは2018年にSUVの雰囲気を持った新しいタイプの軽乗用車として登場。使い勝手のいい広い室内や個性的なデザインで人気車種になった。今回登場したのは2代目。このジャンルにはダイハツがタント・ファンクロスを投入。ホンダもNボックスシリーズにこのほど、「ジョイ」を追加した。三菱自動車も個性的なデザインのデリカミニを販売している。
新型のスペーシア・ギアは23年11月にフルモデルチェンジしたスペーシア、スペーシア・カスタムをベースに専用の装備やデザインを採用した。
フロントマスクには、ハスラーやジムニーと共通の丸目のヘッドランプを採用。フロントグリルにはメッキのブロックをあしらい、SUVらしい力強さを演出している。
車体側面はコンテナをモチーフにしたという3本のキャラクターラインの下に、傷が付くのを防止するサイドアンダーガーニッシュを装着。オレンジ色の「GEAR」というロゴが目を引く。車体色は、2トーンルーフ仕様が6色、モノトーンが3色用意されている。
パワーユニットは、排気量660ccの自然吸気エンジン(49馬力)とターボエンジン(64馬力)。いずれも小型のモーター(2・6馬力/3・1馬力)でエンジンを補助するマイルドハイブリッドとしている。グレードはXZのみで、二輪駆動(FF)と四輪駆動(4WD)を設定している。
ソフトな乗り心地
試乗車は自然吸気エンジンのFF車。発進は、アクセルの最初の一踏みでモーターのアシストを感じ、タイヤがスムーズに転がり出す。ゆったりと加速するとそのまま滑らかさが続くが、アクセルを強く踏んだときや上り坂ではエンジン回転が高まり、いささか苦しそうになる。
坂道を走る機会が多い場合には、パワーに余裕があるターボモデルをお薦めしたい。価格差は8万4700円。手動でギアの選択ができるパドルシフトやパワーモードへの切り替え、本革巻きシフトノブが付く。燃費は、自然吸気モデルが23.9km(WLTCモード)であるのに対して、ターボモデルが21.9kmとやや落ちるが、許容範囲内と思う。
乗り心地はソフト。足回りが柔らかめで、路面の凹凸やざらつきをよく吸収してくれる。その代わり、急なカーブでステアリングを大きく切り込むような場面では、車体が外側に傾くような重心の高さを感じる。
電動パーキングブレーキと、信号待ちなどでブレーキから足を離すことができるブレーキホールドは運転していて便利だ。この二つの機能が付いていることにより、ACC(オートクルーズコントロール)も全速度対応になっている。
また、フロントガラスの手前に走行速度などを映し出すヘッドアップディスプレーも標準装備している。
シートに工夫さまざま
撥水加工を施したシートは、飲み物をこぼしたりぬれたりしても拭き取りやすい。荷室の床には樹脂を採用しているので、自転車や汚れたものを載せても掃除がしやすい。
リアシートには、ふくらはぎを支えてくれるマルチユースフラップを採用。角度を調節することで、足を投げ出したような姿勢で座ることができる。先端を座席側に持ち上げると荷物のずり落ち防止にも使える。
運転席と助手席の背面にはメッシュのポケットと、折り畳み式のテーブルが付いている。
快適装備では、運転席と助手席にシートヒーターを標準装備。さらに、ステアリングヒーターも装備している。寒い冬の朝にはうれしい機能だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴49年。紀伊民報制作部長