「快適な移動」がテーマ
「快適な移動」をテーマに開発された車だけあって、室内の広さや乗り心地は一級品だ。かつて企業や自治体の送迎車は高級セダンが中心だったが、今はミニバンが多く使われるようになった。長距離の移動にも適している。以前、アルファードのレンタカーで田辺市から岡山市まで約330kmを一気に走ったが、快適で運転も楽だった。
アルファードは2002年に初代が登場して、昨年のモデルチェンジで4代目に引き継がれた。ヴェルファイアは2代目アルファードの兄弟車種として登場。昨年のモデルチェンジではアルファードと差別化するために「運転する喜び」にこだわったサスペンションチューニングを施したり、ターボエンジンを設定したりした。
アルファードのパワーユニットは、2.5リットルのHV(システム最高出力250馬力)と、ベーシックな自然吸気の2.5リットルガソリンエンジン。これに対してヴェルファイアは2.5リットルHVと2.4リットルガソリンターボ(279馬力)を用意しており、自然吸気エンジンは設定していない。
車両本体価格は、アルファードが540万円(ガソリン仕様の二輪駆動)~872万円(HVの四輪駆動)と幅広いのに対して、ヴェルファイアは655万円(ターボの二輪駆動)~892万円(HVの四輪駆動)となっている。
動く応接室
試乗車のグレードはHVのZプレミア(690万円)。上級仕様のエクスクルーシブラウンジ(870万円)との違いはセカンドシートの機能。エクスクルーシブラウンジには肘や足元を温めるオットマン&アームレストヒーターやマッサージ機能など、移動中にくつろげる機能が盛り込まれている。
しかし、Zプレミアのセカンドシートでも「動く応接室」というほど豪華で、運転するよりもVIPになった気分でくつろいでいたい。
全長約5mの堂々とした車体だが、前方や左右の見切りがいいので、広い道路では思いのほか運転がしやすい。しかし、住宅街やスーパーの立体駐車場など狭い場所の走行では気を使う。区画の小さい駐車場では車体が収まり切らず、鼻先がはみ出すというようなこともある。
乗り心地は快適だ。モデルチェンジに当たって車の骨格となるプラットホーム(車台)を一新し、騒音や振動対策を徹底した。近年はコンパクトカーでも走行音が静かな車が増えたが、さすがにこのクラスになると静粛性の質が違う。メーカーの資料によると、風切り音や路面からの騒音を抑えるだけでなく、周波数のバランスを整えることで心地よい静けさを実現しているという。
システム最高出力250馬力のパワーユニットは2トンを超える車体を軽々と走らせてくれる。しかし、トヨタのHVとしては、加速時にエンジンが始動するタイミングは早い。モーターで走行する時間が短めなので、電動感はあまりない。
燃費は、ガソリン1リットル当たり17.7km(WLTCモード)。大きな車体を考えれば優秀な数値だ。これに対して2.4リットルガソリンターボ車は10.3kmとなり、市街地モードでは7.1kmまで低下する。しかも燃料はプレミアムガソリンが指定。最高出力279馬力、最大トルク43.8kgの力強い走りを得るためには相応のランニングコストが必要になる。車両本体価格はHVよりも35万円安い。
乗降助けるステップも
アルファード、ヴェルファイアともに乗車定員は7人。フロント2人、2列目2人、3列目3人というレイアウトだ。このうち2列目がいわゆるVIPシート。二つの席は独立しており、背の高い肘置きやふくらはぎを支えるオットマンにより、リラックスした姿勢で座ることができる。
アルファードのZグレードはシートの素材が合成皮革だが、ヴェルファイアは全グレード本革。左右独立ムーンルーフ(ガラス天井)もアルファードがメーカーオプションであるのに対してヴェルファイアは標準装備しているなど、ヴェルファイアの方が基本装備は充実している。
メーカーオプションで実用性が高いのが、スライドドアを開くとせり出してくるユニバーサルステップ。地面から220mmの高さに出てくる踏み台で、一歩目が低くなるので子どもや高齢者なども乗り降りが楽になる。
2列目シートの天井には、室内照明や空調、窓の開閉、日よけなどの操作を集約したオーバーヘッドコンソールを設置。頭上のスイッチで、座っている座席と反対側の窓も開け閉めできる。
アルファード、ヴェルファイアとも7月10日時点で受注を停止しており、メーカーのホームページでは「販売店にお問い合わせください」となっている。販売店によると、プラグインハイブリッド車の発売に合わせて近く台数割り当てがあるかもしれないので、まずは相談してほしいという。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴49年。紀伊民報制作部長