足を支えるオットマン採用
「丈夫で大容量のコンテナ」をモチーフにしたという車体は、側面にくっきりした線が3本入っている。スペーシアは優しい顔つき、カスタムは角張ったフロントグリルで精悍(せいかん)な外観に仕立てている。
スペーシアに搭載のパワーユニットは最高出力49馬力の自然吸気エンジンを2.6馬力のモーターで補助するマイルドハイブリッド。カスタムには64馬力のターボエンジンも設定されている。ターボは3.1馬力のモーターを組み合わせている。
マイルドハイブリッドの採用により、スーパーハイトワゴンでトップクラスの燃費性能を獲得。装備が簡素なモデルではガソリン1リットル当たり25.1km(WLTCモード)を実現している。試乗したスペーシア・ハイブリッドXは23.9km、カスタムXSターボは21.9kmとなっている。
後部座席に採用したマルチユースフラップは、座席の一部を引き出し、位置や角度を調節することでオットマンや荷物の落下防止に使うという仕組み。オットマンは高級ミニバンなどに採用されているが、軽自動車では初めての装備という。
後部座席にはセンターアームレストや独立したシートスライド機能、リクライニング機構なども備えている。冷暖房の空気を後部座席に循環させるサーキュレーターもスズキならではの装備。従来より音を静かにした。広い室内空間と合わせて、長時間の乗車を快適に過ごせそうだ。
安全装備が充実
安全装備の充実も今回のモデルチェンジのポイント。ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」は、右左折時の歩行者や自転車、右折時の自動二輪車を検知。衝突の恐れがある場合には衝突被害軽減ブレーキがかかる。前後のバンパーに内蔵した超音波センサーは、駐車時など低速で障害物に衝突する事故を防止したり、障害物のある場所での急発進を抑制したりする。
また、スペーシアのセーフティープラスパッケージ装着車とカスタムには、全車速追従のクルーズコントロールや電動パーキングブレーキ、ブレーキホールド機能を搭載している。
魅力的なターボ
自然吸気エンジンを搭載したスペーシア・ハイブリッドXとターボエンジンを搭載したカスタムXSターボに試乗した。
ハイブリッドXは、発進や低速走行時にアクセルを踏むとモーターで押し出される感覚があるが、加速はややゆったりしている。最高出力64馬力のカスタムXSターボはさすがに力強く、発進加速や上り坂で動力性能に不満を感じることはなかった。
車内の騒音は軽自動車としては標準的。最大のライバルであるホンダのN-BOXの方が静粛性は優れている。
足回りは割合にソフトだが、路面が荒れた場所では少しコツコツした感触が伝わってくる。総合的には乗り心地はいい。
後部座席は、シートを前後にスライドさせてスペースの調節が可能。一番後ろにすれば大人でも足が組めるほど広々とした空間が生まれる。最も前にスライドさせて荷室空間を最大にしても、身長172cmのリポーターが座って膝の前に握り拳1個分の余裕があった。
カスタムの同グレードで比較すると、自然吸気エンジンとターボの価格差は7万8100円。ターボには、手動でギアをアップ・ダウンできるパドルシフトやスポーツモードの切り替えがあるので、実質的な価格差はもっと小さい。そうなるとターボを選びたくなる。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴48年。紀伊民報制作部長