新車試乗記

「日本一」の貫禄

ホンダ N-BOX

【スペック】

N-BOXファッションスタイル(かっこ内はカスタムターボ・コーディネートスタイル) 全長×全幅×全高=3395×1475×1790mm▽ホイールベース=2520mm▽車重=910kg(940kg)▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHC、最高出力43kW、58馬力(47kW、64馬力)/最大トルク65Nm、6.6kg(104Nm、10.6kg)▽燃料消費率(WLTCモード)=21.6km(20.3km)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=174万7900円(216万9200円)

【試乗車提供】

ホンダカーズ田辺・稲成店
(田辺市稲成町46、0739・24・4500)

[2023年11月9日 UP]




 ホンダの軽乗用車「N-BOX(エヌボックス)」がフルモデルチェンジを受け、10月に新型が発売された。広い室内、ミニバンを思わせるような乗り心地など、「日本で一番売れている車」はさらに進化した。

広い室内が魅力


 N-BOXは2011年12月に登場。12年度には軽自動車の販売で1位になり、その後、14年度に2位になったが、15年度以降8年連続でトップを走っている。また四輪の総合順位でも21、22年度に1位となり、23年度上期(4~9月)も、フルモデルチェンジを控えながら1位に輝いている。新モデルの発売が近づけば販売が落ち込むのが通例だが、N-BOXは売れ続けた。
 人気の理由は軽自動車離れした室内の広さと、乗り心地の良さ。そして、ボリューム感のあるデザイン。上級グレードはオプションや諸費用を含めると200万円超えの「高級車」だったが、それでもユーザーに受け入れられた。
 今回のモデルチェンジで、スタンダードのN-BOXはターボエンジンのモデルがなくなり、自然吸気エンジン(58馬力)のみの設定になった。力強い顔つきのカスタムは従来通り自然吸気とターボ(64馬力)が設定されている。

乗り心地はソフト


 最初に試乗したのはスタンダードタイプのN-BOX。ヒトの瞳をイメージしたというヘッドライトや、丸い小さな穴をあしらったフロントグリルなどでおとなしい顔つきになっている。
 室内はとにかく広い。特に後席は、ドアを開けたとたんに「広いなー」と思わずうなってしまったほど。後席のパワースライドドアには今回、ドアが閉まる前にロックを予約する機能が採用された。
 四角いスタイルでガラス面積が大きいことから、視界はとてもいい。さらに、メーターの位置を下げてダッシュボードを平らにしたことで開放感が一段と増した。
 内装は明るいグレーを基調に、トレーをコルク調にするなど、リビングをイメージした仕上がりにしたという。
 スタートでは、静粛性が高まっていることをまず感じる。58馬力のエンジンは重い車体に対して力不足という先入観があったが、先代のモデルに比べて加速が軽快になったように感じた。エンジンや自動変速機(CVT)の制御を見直した成果が出ているようだ。
 足回りは柔らかめで乗り心地がいい。バイパスや高速道路を一定速度で走っていると、普通車のミニバンに乗っているような気分になる。
 安全運転を支援する「ホンダセンシング」には近距離衝突軽減ブレーキと急アクセル制御機能が追加された。急アクセル制御機能は、ブレーキとアクセルを踏み間違えた際の急加速を抑制する機能で、別途5500円でスマートキーをセットアップする必要がある。

力強いカスタムターボ


 カスタムターボは、外観、内装ともがらりと雰囲気が変わる。立体感のあるフロントグリルや車幅いっぱいに広がる横一文字のライトなどにより、力強さを強調。内装は黒を基調にした高級感のある仕上がりになっている。
 最高出力64馬力のターボエンジンはスタートから力があり、ファーストカーとして使うのに十分な動力性能を発揮する。カスタムターボも足回りは柔軟で、スタンダードのN-BOXと共通した乗り味だった。
 今回2台を乗り比べて意外だったのは、自然吸気エンジン搭載車の加速がスムーズだったこと。市街地や郊外を中心に使うのなら十分な動力性能かもしれない。
 軽自動車のターボは価格的にお買い得な設定になっているが、オイル交換に気を使うなどターボならではの注意点もある。カスタムにはターボと自然吸気、両方の設定があるので、購入を検討するのなら乗り比べてみることをお勧めしたい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴48年。紀伊民報制作部長