シャープな顔つきに
先に発売した新型SUV(スポーツ用多目的車)「クロストレック」の兄弟車種。同社はインプレッサを「スバル車のスタンダードモデル」と位置付けており、日常の街乗りから長距離ドライブまで、そつなくこなす車に仕上がっている。
車体の大きさは全長4475mm、全幅1780mm、全高1515mmで、クロストレックより少しだけ小さい。最低地上高はクロストレックが200mmもあるのに対して、インプレッサは135mmと、ロードモデルの標準的な数値になっている。
フロントマスクは、先代が柔らかな曲線で構成されていたのに対して、新型はレヴォーグなどと共通する直線基調のシャープな顔つきになった。
パワーユニットは、最高出力145馬力の2リットル水平対向4気筒エンジンと13.6馬力のモーターを組み合わせたe-BOXERと、最高出力154馬力の2リットル水平対向4気筒エンジンの2種類。三つのグレードにそれぞれFF(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)が設定されている。
価格帯は、ガソリンエンジンを積んだFFモデルの「ST」(車両本体価格229万9千円)から、e-BOXERの「ST-H」AWDモデル(321万2千円)まで幅広い。「ST」はAWDモデルでも200万円台半ばの価格設定なので、このクラスとしてお買い得感がある。
追突事故が大幅減
運転支援システム「アイサイト」は、人間の両目に相当するステレオカメラで先行車や道路の白線、歩行者などを識別するが、新型インプレッサはこれにさらに視野が広い広角単眼カメラを追加。交差点での右左折時に、自車と同じ方向に進む歩行者を認識してブレーキをかけたり、横断する自転車との衝突を回避したりする。
スバルのまとめによると、2010~14年にアイサイトを装着していないスバル車1万台当たりの追突事故発生率は0.56%だったが、装着車は0.09%。14~18年のデータを見ると、進化したアイサイト装着車はさらに0.06%まで下がっている。
インパネ中央に設置された11.6インチのセンターディスプレーはクロストレックと同じデザイン。メーター周りはオーソドックスなデザインが採用され、室内は黒で統一されている。
後部座席はゆとりがあり、身長172cmのリポーターに運転席を合わせて座ると、膝前に握り拳縦二つ分の余裕があった。
静かでスムーズ
試乗車は上級グレードであるST-HのFF車。モーターのアシストを受けて、スタートはスムーズだ。走り出してまず伝わってくるのは、車内が静かなことと、車体がしっかりしていること、そして足回りがしなやかに動いていること。
路面がざらついている場所や、高速道路のインターチェンジに設置された減速帯を通過する際にも不快な振動がない。
もう一つの長所は、運転席からの視界がいいこと。どんなに運転支援機能が充実しても、目視での確認は安全運転の基本。最近はスタイルを重視して後方や斜め方向の見切りが悪い車があるが、スバル車は真面目に造り込んでいる。
モーターは出力が小さいのに、エンジンの負荷が小さいときには積極的に電気だけで走行する設定になっている。高速道路の走行中も、緩やかな下り坂ではかなりの距離をモーターだけで走っていた。
このパワーユニットは、燃費に配慮したインテリジェントモードで走っていると穏やかだが、スポーツモードを選ぶとがぜん活発になり、気持ちのいい走りを提供してくれた。
インプレッサは、静かで運転しやすく、安全性が高く、日常の買い物から長距離ドライブまでこなすバランスの取れた車。一方で、強い個性がないところが弱点になるかもしれない。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴48年。紀伊民報制作部長