直列6気筒ディーゼル
近年は、大きな車体を小さなエンジンで走らせる「ダウンサイジング」が主流だが、マツダは車格に見合った大きな排気量のエンジンを積むことで経済性を高めるという「逆張り」を選択した。
実際に、2.2Lディーゼルエンジンを積む弟分のCX-5や3列シートの上級車CX-8より、CX-60の方が燃費はいい。CX-5は軽油1L当たり17.4km(WLTCモード)、CX-8は15.8kmであるのに対して、3.3LのCX-60は19.8kmに達している。
エンジンの全長が長くなる直列6気筒エンジンは、近年珍しい存在。ボア(内径)×ストローク(行程)は直列4気筒の2.2Lエンジンと同一なので、シリンダーを二つ継ぎ足した形だ。
パワーユニットはこのほかに3.3Lディーゼルハイブリッド(254馬力+モーター16.3馬力)▽2.5Lガソリン(188馬力)▽2.5Lプラグインハイブリッド(エンジン188馬力+モーター175馬力)を設定している。
大柄な車体
試乗車は3.3Lディーゼルエンジンを積んだFR(後輪駆動)のXD(クロスディー)Sパッケージ。車体の色はプラチナクォーツメタリックという新色で、高級感がある。一番人気の車体色はロジウムホワイトプレミアムメタリック(白色)だそうだ。
ベースグレードだが、内装は黒で統一されていて高級感がある。シートは骨盤を立たせるサポート構造を採用。長時間の運転でも楽に座っていられる。アクセルペダルは、足の動きとペダルの動きが一致するオルガン式を採用。シートに座って右足を自然に伸ばした位置にアクセルペダルがあるので、ブレーキペダルとの踏み間違いもしにくくなっている。
車幅は5ナンバーサイズのコンパクトカーよりも約20cm広い1890mmもあるが、ボンネットが見えるので車幅の感覚はつかみやすい。前方と左右の視界はいいが、後方はガラスエリアが狭いので後退や車庫入れは接近物検知機能や360度ビューモニターといった電子機器が頼りだ。
荷室は大きくて、ゴルフバッグが四つ横向きに入る。さすがにこのサイズの車になると積載スペースに余裕がある。
後席は、身長172cmのリポーターが座って、膝の前にこぶし二つ分の余裕があった。シートは座り心地がいいので、ゆったりくつろぐことができる。センターコンソールの後ろにはスマートフォンを充電するためのUSB端子二つに加えて、100VのACコンセントも備えている。
軽快なコーナリング
最高出力231馬力、最大トルク51.0kgを発生するディーゼルエンジンはとにかく力強い。発進でアクセルペダルを深く踏み込もうものなら猛然とダッシュし、恐ろしいほどの加速をする。
ディーゼルの良さを実感するのは上り坂に差し掛かったとき。低回転で大きな力を出すので、アクセルをあまり踏み増すことなく、平坦な道と同じ感覚で走っていられる。
大きな車体にもかかわらず、コーナリングは軽快だ。カーブでステアリングを切り込むと、ほとんどロール(横傾き)を感じさせずに向きを変えていく。
これはKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)という新技術による効果。コーナリング中に後輪の内輪側にわずかにブレーキをかけることで車体の傾きを抑えて姿勢を安定させる。車体が大きく傾くような急カーブでとくに効果が大きいという。
足回りは硬めで、路面の小さな凹凸をよく拾う。また、路面の補修跡やマンホールなどを乗り越えたときのショックも大きめだ。これは、試乗車がナンバーを取ったばかりの新車ということもあるのだろう。走行距離が伸びてサスペンションが馴染んでくると感触が変わるかもしれない。
CX-60は、低回転から力強いディーゼルエンジンが魅力の一つ。余裕ある動力性能を生かして、大きな車体からは想像できない軽快でスポーティーな乗り味のSUVに仕上がっていた。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴48年。紀伊民報制作部長