新車試乗記

車内を自在にレイアウト

スズキ スペーシアベース

【スペック】

全長×全幅×全高=3395×1475×1800mm▽ホイールベース=2460mm▽車重=870kg▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHC、38kW(52馬力)/6500回転、60Nm(6.1kg)/4000回転▽トランスミッション=CVT(自動無段変速機)▽燃料消費率=21.2km(WLTCモード)▽車両本体価格=154万7700円

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2023年3月16日 UP]

 スズキのスペーシアベースは、ハイトワゴンタイプの軽自動車「スペーシア・シリーズ」の新顔。荷室空間を自在にレイアウトできるマルチボードを備えているのが特長。アウトドアレジャーやワーケーションなどの利用を提案している。

4ナンバーの商用車


 スペーシア・シリーズは、優しい外観の標準タイプをはじめ、押し出しの強い「カスタム」、SUV(スポーツ用多目的車)の雰囲気をまとった「ギア」がある。これらはいずれも5ナンバーの「乗用車」だが、「ベース」は4ナンバーの商用車であるのが大きな違い。
 後部座席を最小限のスペースにして荷室を拡大。そこにレイアウト自在のマルチボードをはめ込むことでさまざまな積載スタイルやレジャーユースに対応している。
 顔つきはカスタムと同じデザインで、大きなフロントグリルが迫力満点。後部ドアは左右ともスライド方式になっているが、上級グレードでは運転席側が電動、助手席側が手動になっているのが乗用車タイプとの違い。後部のドアは同乗者の乗り降りのためではなく、荷物の積載や運転者が利用するためにある、という発想なのだろう。
 その電動スライドドアを開けると、小さな後部座席が付いている。試しに乗り込もうとしたが狭くて、正面を向いて座るのは無理だった。横向きになってかろうじて体を滑り込ませた。小学校低学年ぐらいの子どもなら何とか座れそうだが、基本的に2人乗りの車と考えた方がよさそうだ。
 座るのには適さないシートだが、レイアウトは自在。折りたたんで収納すると床面はフラットに。この状態で運転席と助手席の背もたれを後ろに倒すと、車中泊が可能なスペースが生まれる。
 マルチボードは上段、中段、下段の3段階に設定可能。上段にすると、テーブルや事務机としても利用できる。
 このボードはかなりしっかりしていて、手で持つとずっしりした重みがある。荷物を2段に分けて積み込む際には、ある程度重い物も載せられそうだ。

運転はゆったり


 パワーユニットは最高出力52馬力の自然吸気エンジン。モーターで発進を補助するマイルドハイブリッドや、動力性能に優れたターボは設定されていない。
 それでも発進加速はなかなか軽快で、870kgという車重を感じさせなかった。燃費も、WLTCモードで21.2kmと優秀。日常の走行で不自由することはなさそうだ。
 足回りはソフトで、乗り心地はいい。座席は目線の位置が高いので視界が良く、ゆったりした気分で運転できる。車内の騒音は、路面が滑らかな場所では比較的静かだが、荒れた場所ではタイヤから発生する音がやや大きめに入り込んでくる。走行音が静かなタイヤに替えると改善するかもしれない。

豊富なアクセサリー


 運転席の内装はシンプルで落ち着いた雰囲気。華美にデザインされたものよりも好感が持てる。
 ライフスタイル提案型の車なので、アクセサリーは豊富だ。例えば、野外のオフィスとして使うための外部電源ユニットやカーテン&タープキット、虫の侵入を防ぐバックドアネット、車中泊用のクッションやプライバシーシェードなどが用意されている。
 安全装備も充実している。夜間の歩行者も検知する衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能のほか、上級グレードには全車速追従のクルーズコントロールを標準装備。運転席からの死角をなくす全方位モニターもオプション設定されている。
 スペーシアベースは、商用車ならではの広い荷室スペースを生かして、多彩な使い方を提案した車。ライフスタイルにぴったりはまれば無二の相棒になる。家族を乗せる機会が多いなど汎用性を求めるのなら5ナンバーのスペーシアを薦めたい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴48年。紀伊民報制作部長