4タイプを公開
クラウンは、トヨタが国産技術で造り上げた初の量産型乗用車として1955年に誕生。その後、トヨタを代表する高級乗用車として歩んできた。昭和世代には憧れの車で、いまでも「いつかはクラウン」というキャッチコピーが記憶に残る。
しかし近年はセダンの人気に陰りが出て、クラウンを乗り継いできたオーナーも高齢化。社用車の地位もレクサスや高級ミニバンに譲り、販売が低迷していた。
クラウンの再生とも言える今回のフルモデルチェンジではクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートの4タイプが公開された。
先行して発売されたクロスオーバーは、セダンとSUV(スポーツ用多目的車)を融合させたモデル。これまでのクラウンとはかけ離れたスポーティーなスタイルに変身し、真横や後方から見るとクーペのように流麗。車高は先代のセダンより85mm高くなったが、それでも1540mmに抑えられているので、タワー型の駐車場に入庫することができる。
パワーユニットは2種類。2.4リットルターボハイブリッド(HV)は最高出力272馬力のターボエンジンに、フロント82.9馬力、リア80.2馬力のモーターを組み合わせている。使用燃料はハイオク。WLTCモードの燃費はガソリン1リットル当たり15.7kmとなっており、HVの機能を燃費の改善というよりも走行性能の向上に振り向けている。
2.5リットルHVは、186馬力の自然吸気エンジンをフロント119.6馬力、リア54.4馬力のモーターで補助する。こちらはレギュラーガソリン仕様で、燃費も22.4kmと優秀だ。
全グレード四輪駆動としており、車両本体価格は435万~640万円。
「乗ったらクラウン」
試乗車は2.4リットルターボHVのRSアドバンスド。内外装の各種オプションを装着しており、店頭渡し現金価格は約800万円となっていた。
全高が高くなったので乗り降りがしやすく、着座位置も高いので前方や左右の見切りがいい。
内装は直線基調のデザインを採用し、色は濃いブラウンとブラックのツートーン。センターコンソールには大きな肘掛けとドリンクホルダーがあり、革巻きステアリングの感触もいい。高級な仕上がりだが、最近は内装に力を入れた車が多いので、相対的な豪華さは薄れている。
後部座席はクーペスタイルにもかかわらず圧迫感は少なく、大切な人を安心して乗せることができる。シートそのものも座り心地がいい。身長172cmのリポーターが座ると、膝前の余裕は握り拳縦二つ分、頭上は少し狭く一つ分だが圧迫感は少ない。後部座席からの乗り降りもしやすい。
足回りが適度に引き締められていて、しかも21インチという大径タイヤをはきながら、乗り心地は「いかにもクラウン」という、ゆったりしたものだった。外観はがらりと変わったが、これまでクラウンを乗り継いできたオーナーが違和感なく乗れるクルマに仕上がっている。
湧き上がるパワー
試乗車のシステム最高出力は349馬力。アクセルを踏むとモーターが素早く反応して駆動力を4輪に伝え、続いてターボエンジンのパワーが湧き上がる。
その気になればとてつもない動力性能を発揮するのだろうが、パワーの余裕を運転のゆとりや安心感に振り向けていることが伝わってくる。気持ちに余裕をもって運転できる車と言えそうだ。
トヨタブランドの最上級オーナーカーなので、路面が荒れたような場所でも乗り心地や騒音の遮断は申し分ない。車体の剛性が高く、少々のギャップを乗り越えてもびくともしない。
かつてクラウンは、足回りがふわふわして小舟のような乗り心地だったが、2代前のモデルからだいぶ引き締まり、今回のフルモデルチェンジで見違えるほどしっかりしたものになった。
スタイルは大きく変わったが、歴史ある「クラウン」の本質は継承されていた。これから出てくるセダン、スポーツ、エステートはどのような仕上がりになっているのだろうか。楽しみだ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴47年。紀伊民報制作部長