HVとターボ
ZR-Vは全幅が1840mmある中型のSUV。同社のヴェゼル(1790mm)より一回り大きく、トヨタのRAV4や日産のエクストレイル、マツダCX-5などと同じクラスの大きさになる。
イギリスの高級スポーツカー「アストンマーティン」を思わせる楕円(だえん)形のフロントグリルには垂直のバーが入っていて個性的だ。
パワーユニットは、2リットル直列4気筒エンジンを発電機に利用するスポーツe:HEV(モーター出力184馬力)と、1.5リットルガソリンターボエンジン(178馬力)。
今回試乗したe:HEVは3リットルV型6気筒エンジン並みの底力があり、大柄な車体を軽快に走らせてくれた。それでいてカタログ燃費はガソリン1リットル当たり22.0km(WLTCモード)と優秀だ。
ガソリン車は、低回転から高回転までよどみなく回るターボエンジンならではの加速が魅力という。燃費はリッター14.5km。同じグレードで比較すると、車両本体価格はガソリン車の方が約35万円安い。
グレードは、基本モデルの「X」と、装備が充実した「Z」の2タイプ。それぞれe:HEVとガソリン車があり、全グレードにAWD(四輪駆動)が設定されている。
車両本体価格は、最も安いガソリン車のFF(前輪駆動)「X」が294万9100円、最も高いe:HEVのAWD「Z」が411万9500円となっている。
高級感ある内外装
「異彩解放」というコンセプトをもとに開発されたZR-Vのデザインは個性的で、駐車場に止まっていても存在感がある。
試乗したZグレードは、フェンダー周りがボディーと同じ色に塗装されていて質感が高い。リアはハイブリッド車でありながら、マフラーが左右に1本ずつあり、スポーティーな印象がある。
内装はセンターコンソールやドア周りなどにソフトバッドが使われていたり、エアコンの吹き出し口が横一文字のデザインになっていたりして高級感がある。
乗り込んでみると、特徴的な形をしたセンターコンソールが目を引く。橋のような形で、下部に収納スペースがある。シフトボタンや電動パーキングブレーキのスイッチなどがまとまって配置されていて扱いやすい。
静粛性と走りの良さを両立
運転姿勢は、シートの座面と床の高低差を小さくすることで、SUVというよりもセダンのように足を前方に伸ばしたものになる。
驚いたのは、静粛性と走りの良さを両立していること。街中はバッテリーに蓄えた電気で走っていることが多く、エンジンの存在をほとんど感じなかった。
一方で、シフトボタン下のレバーでドライブモードを「スポーツ」に切り替えると、シートに体を押しつけられるような加速を体感できる。
ハンドル裏にある減速セレクターを使うと、回生ブレーキの強さを4段階で調整でき、峠道でスポーティーな走りが楽しめた。レバーはハンドルを持った状態でも操作しやすく、金属製で質感も高い。
高速道路では、運転支援システム「ホンダセンシング」が、先行車との車間を保ちながら車線中央を維持してくれる。試乗車にはボーズ社のサウンドシステムが搭載されていて、長距離も音楽を聴きながら快適に移動できそうだ。
リポータープロフィル
【中嶋悠大】 紀伊民報記者